表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界バトロワ ー天上の大罪ー  作者: 96tuki
鳳凰の翼
63/91

「……ごめんなさい」

「ぐわっ……」

「あれ、あんま効いてないな」

 美月の拳が直撃した兵士は、大きく吹き飛びはしたもののすぐに立ち上がり剣を構えた。逆に、鎧に当たった美月の拳のほうがダメージを受けている。どうやら、拳が当たる寸前で神力が離散したようだ。やはり、難易度が高い。ラクトールがいた時の感覚を思い出そうにも、細かいコントロールを意識した覚えがない。何より、神力の動きがどうやら違う。今までは体の中に集まってくる感覚で、操作が容易だったが今は体中を一通り回った後、体の外側に放出されている。外に出ないよう抑えるので精いっぱいで、一か所に集めるなんて夢のような感覚だ。

 やはり、志倉を殴った時の、何かをつかんだ感覚が正解なのだろう。流れに沿うように、押さえつけるのではなく、導くように。これで会っている気はする。ただ、少しでも集中が乱れると合わせた力の方向がバラバラになる。これは、練度の問題だ。幸運なことに、目の前の兵士たちはだいぶ頑丈なようだ。変な手加減を考えずに済むようでよかった。

 二方向から挟み込むように迫る剣撃。これを軽く受け止め、そのまま宙に投げ捨てる。隊長のような騎士に向けていた視線を一瞬だけ切り、一歩遅れて飛び込んでくる、先ほど吹き飛ばした兵士にもう一撃。手ごたえを感じる快音に、小さくなった手の痛み。少しずつ、求めているものに近づいている実感を得る。あとはこの感覚を忘れないうちに何度も、体に覚えさせるだけだ。

 瞬間、背後から強烈な殺気を感じる。本能的に、避けなくてはいけないと感じるほどのものだ。出所を探るように目を泳がせたとき、体の奥から避けろ! という声が響いた。

雄牛の一撃(アン・タウラス)!」

 美月はすんでのところで回避に成功する。その後、目に飛び込んできたのは、虹色の軌跡。それは、剣からも、本人からも湯気のように立ち上っている。初めて見るものだが、それが神力であると瞬時に理解した。ただ、自分のものとは明らかに違うことも、同時に。

「まるで神力のバーゲンセールだな」

 練習感覚で挑んでいた気が引き締まる。そうだ、こっちはそんなつもりがなくても、相手は命を懸けて殺しにきている。油断としか考えられない思考を今すぐに捨てて、真剣な心持ちで騎士を見据える。

 神力の感じが変わる。死を意識した瞬間、神力の存在が今まで以上にはっきりと見える。美月は思い出だす。そうだ、あの時は今とはくらべものにならないほどの覚悟を背負っていた。だが、今は練習感覚で人を死に追い込もうとしている。そして、自分が奪うこと以上に命を軽視していたことに気づいた。あの状態までたどり着かずとも、近づいたおかげで練度以上に大切なことが分かった。

 ただ心からの言葉が、自然と口からこぼれた。

「……ごめんなさい」

 その言葉に、騎士は難色を示す。

「なんだ、急に。悪いが、今更謝ったと君の罪は変わらない。償いたいのであれば、おとなしく首を差し出すことだ」

「今から覚悟を決めてやるから。それで、許してくれ」

 あの時は、絶対に殺すと言う覚悟。ならば今は、絶対に殺さない覚悟を。

「……効かん坊め。ならば食らえ! 雄牛の一撃(アン・タウラス)!」

 向かってくる虹色の光を、眩く感じる拳が迎え撃つ。その一撃は、何よりも重いものだった。

 そして美月の五感は、この場所に向かってくる気配を確かに感じ取っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ