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「…うぅ…っ、うっ…っ…。」
エディーはハルがハンターである事を知ると、ボロボロと大粒の涙を溢し始める。
「頑張ったね。」
柔らかい視線を外す事なく、ソッと頭を撫でてやった。
「エディー。…ここにいる理由を、聞いても良いかな?」
「…う、ん…。ボク…、逃げたの…。お姉ちゃんが
…、逃がしてくれ…うぅ…っ。」
涙を堪えながら、問い掛けた事に対して必死に答えてくれたエディーだったが、姉と呼んだ存在を思い出して再び大粒の涙を流す。
「そっか。その…お姉ちゃんと何処にいたか、分かる?」
泣いていて要領を得ないが、ハルは根気よく問い掛けた。
「…っ、ずっと向こう…っ。でも、良く…分からない…っ。」
エディーの指差す先は闇で、ハルが来た方向とはまさに逆である。
「ありがと、エディー。確かにこの暗さじゃ、何処をどうやって歩いてきたかなんて分からないよね。…さて、どうすっかな。」
立ち上がったハルの服の裾を掴み、エディーが不安げな表情を向けた。
ここで置いていかれるとでも思ったのだろう。
「大丈夫だよ、エディー。君を一人にはしないから。」
とにかく安心させる為に笑みを浮かべ、もう一度隣に座って背中を撫でた。
「でもさ、ずっとここいにる訳にはいかないだろ?」
少し落ち着いてきた頃を見計らい、ハルは静かに言葉を紡ぐ。
ハルの光魔法で少しだけ周囲が照らされているものの、闇の中である事には変わらず、何度も縦に首を振るエディー。
「よし。じゃあ、エディーに選択肢をあげよう。2択だよ?…一つ、このまま脱出して保護者の元へ俺が連れていく。一つ、君のお姉ちゃんを俺と捜す。…さぁ、どっち?」
ハルは真っ直ぐ視線を向けて、ゆっくりと問い掛けた。
10歳程とはいえ、男の子である。もう選択する事は出来る筈だ。
「…捜す。お姉ちゃんを、捜す。」
答えが出たのは案外早かった、とハルは思う。
自分の命の危険から逃れてきた筈の少年は、助けてくれた存在を見捨てる事が出来ないと決意したようだ。
「ん。男の子だな。」
ハルはエディーの肩に手を乗せ、ニッと笑う。
どちらを選んだとしても、ハルはエディーの選択に従うつもりだった。ただ心情的には、今のエディーの選択を嬉しく思う。
「じゃあ、とりあえずエディーの保護だな。…強化・火。」
そう告げたハルは、対象をエディーに設定し、強化魔法を唱えた。
これでもし不意を衝かれて攻撃を受けても、一撃で命の危険には陥らないだろう。
「さぁ、行こう。」
立ち上がったハルは、エディーに手を伸ばした。
すぐにエディーがその手をとる。
「お姉ちゃんを助けに。」
エディーの言葉は、もう震えていなかった。




