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「今度はハルなのっ?いったい、どうしたよのっ?!」
クラウディアが驚きながら駆け寄ってくる。
ハルとジミーの背後ではインセクトレイドの巣穴から黒煙が立ち上っており、完全なる討伐終了の様子を見せていた。
「あ~…、ちょっと?」
曖昧に誤魔化したハルに、明らかにムッとするクラウディア。
「何よ…。私には言えない事なの?だいたい、私だけ中に入っていないじゃないっ。」
堪えていた不満が爆発したようで、顔を怒りで赤くしている。
だが、その金色の金色の瞳には涙が浮かんでいた。
「ディア、落ち着いてください。」
「何よっ、ジャスティンもっ!あなただって中に入った一人でしょっ?!」
取り乱すクラウディアに、声を掛けたジャスティンまでもが怒りの矛先を向けられる。
ジャスティンは口に出しはしないが、僅かに顔を歪めた。
「…今のはクラウディアが悪いね。八つ当たりは良くないな?」
そこへ口を出したのはハルである。
他の誰もが押し黙ってしまい、何とも言えない微妙な空気が辺りを覆っていた為だ。
「俺の怪我の理由なんてどうでも良いよ。だけど、一時の感情を他にぶつけるのは良い事だと思えない。違う?」
「…そう…だけど…、でもっ。」
「でもなんかいらない。今、フラトンさんは何も悪い事をしていない。」
クラウディアが言い募ろうとしてもハルはそれを許さず、ただ真っ直ぐ視線と言葉を向ける。
とうとうそれに堪えられなくなり、クラウディアは瞳に涙を溜めたまま小さく頭を下げた。
「…ごめんなさい、ジャスティン。」
「あ…、いいえ。私ごときにその様なお言葉は不要にございます。」
ジャスティンの方は、逆に謝罪をされた事で戸惑っている。
「俺達は、皆でパーティーを組んでいますからね。ここでは主従関係はなしだって、クラウディア本人が言ったのだし。間違った事をしたら、謝るのが普通でしょ?ちなみに、俺はクラウディアに謝らない。悪い事をしてないもん。ただ、黙ってるだけ。」
ニッコリと笑みを浮かべ、僅かに良くなったパーティーの空気を再び悪くするハル。
「バカハルっ。少しは空気を読みなさいよねっ?!」
後ろからジミーがハルの背中を叩こうと手を振るったが、気配を察したハルに見事に避けられた。
それでも口だけは止まらない。クラウディアが本当に泣きそうになっているのを見るに見かねたからだった。
「だから、俺にそんなモノを求める方が無理って話です。基本、俺って単独行動なんで。」
聞く耳を持たないとばかりに、ハルはジミーに笑みを向ける。
ハルに言わせれば、今回はハンターランクアップの為、仕方なくパーティーを組んだだけなのだ。




