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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
昆虫人
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■□■


随分(ずいぶん)と嫌われたものね、ハル。」


 早速(さっそく)背を向けて先行したジミーとジャスティンを見送りながら、他人(ひと)事のように告げるクラウディア。


「どうでも良いよ。俺は敵か味方かを判断するだけさ。それこそ、口だけ人間はたくさんいるからね。あんなのにいちいち対応なんてしてられない。ほらクラウディア、行くよ?」


 ハルは手際(てぎわ)よくテントを片付けると、首を軽く振ってクラウディアを(うなが)す。


 クラウディアは残された商団の人達を気にしながら口を開いた。


「ねえ、ハル。あの人達はこのままで良いの?馬車も取られちゃったみたいだし…。」


「うん。君は優しいね。…大丈夫だよ、彼等は。既に 自警団を呼んである。今日ここを通る申請が出ていたのはあの商団だけだったし、俺がここでターゲットを待つ事はマスターに伝えておいたからね。」


 答えながら先へ進むハルに、クラウディアは慌てて後を追う。


「そうなの?何だか手際(てぎわ)が良すぎるわね。」


 少しだけ目を細めるクラウディア。


 金色の瞳が細められると、ハルは猫のようだとほくそ笑んだ。


「何。フラトンさんみたいに勘繰(かんぐ)る?」


「そんな訳ないじゃない。ハルは人から好かれにくいかもしれないけど、貴方自身が人が嫌いな訳じゃなさそうだし。だから無闇に人を傷付ける事はしないと思うのよね。」


 (あご)に指先を当て、クラウディアは空を(あお)ぎ見ながら告げる。


 彼女は思った事を口にするだけで、それを聞いた相手の反応まで考えていないようだ。


「…王女様からそう言われると嬉しいね。」


 自身の照れを見せないように、ハルは茶化してクラウディアに返す。


「何よ、それ。」


「ん。俺って、信頼されてるみたいだなと思って。」


 足は先を目指すように進むが、ハルはこうしてクラウディアと話す事が心地よく感じていた。


 父親とアンディ以外に心を開いた記憶はないハル。


 それは黒髪黒眼を()され、(さげす)まれるから。


 (まれ)に母性本能(ゆえ)か、酷く甘えさせてくれる女性が現れると、ハルはここぞとばかりに甘えた。


 成長と共に身体を求められるようになっても、ハルは女性にその場限りの甘えを見せる。勿論、心は開かないが。


「変なハル。だから気になったのかも知れないけど。」


「ん?」


 クラウディアの意味深な言葉に、ハルは視線を向けて問い返した。


「私は王女だからね。何もしなくても…何も出来なくても、皆が壊れ物のように扱ってくれるわ。」


「あ~…そりゃ、ね。」


 ハルは苦笑いを浮かべる。


 現国王の娘。それが意味する事は大きいのだ。本人ではなく、背後(バック)を見られる。


 逆らうなんて、もっての他。誰しもが少しでも取り入ろうとしてくるだろう事は、王城に上がった事のないハルにだって想像が出来た。


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