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「随分と嫌われたものね、ハル。」
早速背を向けて先行したジミーとジャスティンを見送りながら、他人事のように告げるクラウディア。
「どうでも良いよ。俺は敵か味方かを判断するだけさ。それこそ、口だけ人間はたくさんいるからね。あんなのにいちいち対応なんてしてられない。ほらクラウディア、行くよ?」
ハルは手際よくテントを片付けると、首を軽く振ってクラウディアを促す。
クラウディアは残された商団の人達を気にしながら口を開いた。
「ねえ、ハル。あの人達はこのままで良いの?馬車も取られちゃったみたいだし…。」
「うん。君は優しいね。…大丈夫だよ、彼等は。既に 自警団を呼んである。今日ここを通る申請が出ていたのはあの商団だけだったし、俺がここでターゲットを待つ事はマスターに伝えておいたからね。」
答えながら先へ進むハルに、クラウディアは慌てて後を追う。
「そうなの?何だか手際が良すぎるわね。」
少しだけ目を細めるクラウディア。
金色の瞳が細められると、ハルは猫のようだとほくそ笑んだ。
「何。フラトンさんみたいに勘繰る?」
「そんな訳ないじゃない。ハルは人から好かれにくいかもしれないけど、貴方自身が人が嫌いな訳じゃなさそうだし。だから無闇に人を傷付ける事はしないと思うのよね。」
顎に指先を当て、クラウディアは空を仰ぎ見ながら告げる。
彼女は思った事を口にするだけで、それを聞いた相手の反応まで考えていないようだ。
「…王女様からそう言われると嬉しいね。」
自身の照れを見せないように、ハルは茶化してクラウディアに返す。
「何よ、それ。」
「ん。俺って、信頼されてるみたいだなと思って。」
足は先を目指すように進むが、ハルはこうしてクラウディアと話す事が心地よく感じていた。
父親とアンディ以外に心を開いた記憶はないハル。
それは黒髪黒眼を指され、蔑まれるから。
希に母性本能故か、酷く甘えさせてくれる女性が現れると、ハルはここぞとばかりに甘えた。
成長と共に身体を求められるようになっても、ハルは女性にその場限りの甘えを見せる。勿論、心は開かないが。
「変なハル。だから気になったのかも知れないけど。」
「ん?」
クラウディアの意味深な言葉に、ハルは視線を向けて問い返した。
「私は王女だからね。何もしなくても…何も出来なくても、皆が壊れ物のように扱ってくれるわ。」
「あ~…そりゃ、ね。」
ハルは苦笑いを浮かべる。
現国王の娘。それが意味する事は大きいのだ。本人ではなく、背後を見られる。
逆らうなんて、もっての他。誰しもが少しでも取り入ろうとしてくるだろう事は、王城に上がった事のないハルにだって想像が出来た。




