46
「商団が来ましたね。」
外を気にしていたハルは、大地を駆ける馬車の音を聞き取る。
勿論、風音の魔法を発動していたから分かった事だ。
「何?」
「お待ちください、フラトン様。今はまだ待機の時です。」
腰を上げようとしたジャスティンの動きを、即座にジミーが制する。
「ジャスティンはせっかちさんね。ターゲットを待たないでどうするのよ。」
不満そうに腰を下ろしたジャスティンだったが、クラウディアは容赦なく打ちのめした。
「申し訳ございません、クラウディア様。」
「だから、様はいらないの。私もジャスティンも同じハンターでしょ?それに、ジミー…だったかしら。あなたも貴族だなんて事を意識しなくて良いわ。ジャスティンが調子に乗るじゃない。」
わざと大きな溜め息をついてみせ、クラウディアは二人へ呆れ顔を見せる。
先程からの互いを持ち上げるようなやり取りが、いい加減腹に据えかねたらしかった。
「くくっ…、クラウディアは豪胆だなぁ。本当に、君のような女性に初めて出会ったよ。大概の女性って自分を小綺麗に装って、真実では思ってもいないような、世の為人の為なんてのを訴えるのに。」
ハルにとっては希少な存在であるクラウディア。
これまで出会った女性は貴族であろうがそうでなかろうが関係なく、皆がハルの事を思い、大切にしてくれたのである。
そういう人物ばかりをハルが本能的に選んでいたのかもしれないが、実際に彼の周りにいた女性達は、常にハルの為を訴えてきた。そしてそれにハルが甘えていたのも事実。
「何よ、それ。私が自分中心みたいな言われようじゃない。」
ハルの言葉を受け、クラウディアは不満を表情に出す。
「あ、違うよ。俺はそれが良いって言ってるんだ。それに、自分中心は人間誰しもだよ。勿論、俺もね。誰だって人の為だなんて事を口にしながら、実際は自分が満たされる事だけを願っているんだからさ。表面上だけ取り繕ったって、本心からでないなら長続きしないよ。」
「そう…。ハルは随分ひねくれているのね。それでもあなたは、私を何の意図もなく助けてくれたもの。それがあなたの真実なのだと、私は信じるわ。」
真っ直ぐに思った事を口にするクラウディアは、ハルのその言葉すら受け入れると言った。
「…バカみたい。あなた達は幼さ過ぎるね。明らかにハルとの未来は見えないのが分からないのかい?王女であるあなたと、貴族ですらないハル。周りがどう思うかなんて、聞かなくても明らかだよ。」
ジミーが溜め息混じりに告げる。
「ディアは立場を弁えるべきだと私は思います。」
外の様子を気に掛けていたジャスティンは、ジミーの意見に同意してみせた。
どうであれジャスティンは、最終的に都合が悪くなれば強制的に城に帰してしまおう、と思っているようだが。




