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壁を背にして立つハルの足元でダンが伏せて待つ中、ジミー対オークとゴブリンの戦闘は激しさを増していく。
素早さが売りのジミーは細かく動きながら魔物の攻撃を躱し、確実にゴブリンを射っていった。
オークが指示を出すが、ジミーの動きについていけてない状態。ゴブリンが大振りで近くにあった角材を振り回し、体勢が崩れたところをジミーに射抜かれるという間抜けな戦闘である。
着実にジミーがゴブリンを減らしていく中、オークが振り回した丸太がセンシュアルの粉末を収納した袋を直撃した。
舞う白い粉末。
「ちょ…おい、そこのブタ!」
非戦闘区域であった壁側から飛び出し、オークに向けてハルが指をさす。
突然ハルが出てきた事に驚き、戦闘が一時中断してしまうくらいだった。
「お前、魔物の癖に俺の成果をぶち壊すなよっ。」
ムッとしながら大きな声を出すハルに、ジミーは我を忘れて停止している。
いつも笑顔を浮かべて丁寧語で穏やかに話すハルしか知らないので、怒りを顕にした彼を初めて見るのだ。
「聞いてんのっ?」
再度怒りをのせたまま問い掛け、漸くオークが再起動する。
「ウルザ、イ…人間ッ!」
そしてそのままハル目掛けて丸太を振り回してきた。
ハルは左手を軽くあげ、易々とその攻撃を受け止める。
全く勢いを感じてないかのように、落ちてきた羽根を受け取るかの如くだ。
「グガ…ッ!」
オークは慌て、受け止められた丸太をハルの手から抜こうと力を込めて動かすが、全くびくともしない。
「地、水、空気、火…どの四元素魔力を使っても出来る魔法だけど、俺は火を使った強化の方が得意なんだ。ほら、見える?俺の周りが赤く輝いてるの…。」
ハルは特別表情を浮かべる事なく、オークに問い掛けた。
だがオークはそれに応じる事が出来ず、丸太を引き抜こうと足を踏ん張っている。
「人の話は聞こうよ。そんなに放して欲しいなら…ほら、放してやる。」
返答が返ってこない事に軽く溜め息をついたハルは、掴んでいたオークの武器である丸太を放した。
勿論、それまで思い切り引く方向で力を込めていたオークである。急に手を放されれば、考えずとも後方へ物凄い勢いで飛んでいくのだった。
「…だから言ったじゃん、放してやるって。」
ハルは建物の反対の壁を破る勢いで転がっていったオークに対し、聞こえはしていないだろうが冷たく呟く。
それが聞こえたのは、唖然とただ見ているだけのジミーと、オークの手下であるゴブリン達だった。




