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「疲れました……」
詰所を出てから数分、ネルがポツリと呟いた。対人相手にここまで疲れているネルを見るのは初めてだ。
「シオンさんは個性的な人だったからな」
「あんな風に来られる方は初めてです。どんな風に接すればいいんでしょうか」
「いつも通りでいいと思うけど…」
普段からネルは相手と衝突しないように丁寧な言葉を使いゆっくりとフェードアウトしていくのだ。それで今まで誰かと喧嘩をすることもなかったんだしそのままでいいと思うけど。
「ライドはリークさんと盛り上がってたね」
「おう!あの人めっちゃいい人だな。初めて聞く喋り方だったけどいい剣持ってるしいい人だ!!」
あの短時間でよくまぁ仲良くなったもんだ。でもライドは社交的だからね。クアールの街でも昔から住んでるのもあって友達も多かったし。それに俺たちとチームを作ったのが広まったてからは、鍛冶ギルドが手を引いたせいか鍛冶仲間たちもライドと話すようになったもんな。
クリスさんも謎といえば謎なんだよな。飄々としていてあの場を仕切っていたけど、俺を見る目が一瞬だけ冷たく感じた。すぐになくなったから気のせいかと思ったけど違う気がする。
「まぁ明日になればわかるか」
「何か言ったか?」
「なにも。それより早く宿舎に行こう」
教えてもらった宿舎は俺たちの家の数倍大きかった。こんな屋敷が敷地内にあるなんて恐るべし領主!!中は男性、女性と別れていてネルとは玄関で別れる。俺とライドは同じ部屋なので安心だ。
夕方待機が終わったリークさんが部屋に来て食堂や風呂を案内してくれた。昼間いなかった人達にも挨拶をしていると疲れきった顔をしたネルがシオンさんと一緒に食堂に入ってくる。ちょっと不憫だ。
歓迎会をしてくれたが、日付が変わる前に俺だけ部屋に戻る。明日が初仕事で緊張しているのもあるが、あまり夜更かしをしたくないのだ。寝る子は育つって言うし、夜更かしすると身長伸びないかもしれないからな。
「ソラ」
「あ、クリスさん。こんばんは」
後ろから声をかけられ、振り向くとクリスさんが立っていた。クリスさんは歓迎会には参加していなかったので見るのは半日ぶりだ。クリスさんの目は昼間感じたような冷たい印象はない。やっぱり勘違いだったのかもしれない。
「明日の初仕事は期待してるっすよ。ロイさんの褒めるその手腕存分に発揮して欲しいっす」
それだけ言うとクリスさんは来た道を戻って行った。わざわざそれを言うために俺を探してたのかな?まぁわざわざ言われなくても頑張るけどな。食堂からはまだ賑やかな声がする。
俺はその声を聞きながら部屋に戻るのだった。
「気持ち悪い…」
「私もです…」
「いい加減自分たちの呑める量を把握しろよ」
7の鐘で起きた俺は一応ライドに声をかけ準備をした。8の鐘がなる頃に玄関に集合と伝えていたため先に来ていたが、あとからゾンビのような顔をした2人がゆっくりと玄関に向かってくる。昨日も飲みすぎたようで完全なる二日酔いだ。
いつもならこのまま放っておくのだけど、今日は仕事なので二日酔いを治しておく。
「“キュア”」
「助かったー。サンキューなソラ」
「ソラさんすみません」
「いいよ。それより行くよ」
初日だし早めに行った方がいいだろう。二日酔いも治った2人を連れて昨日の休憩室へと向かう。
「そういえば知ってるか?この街にも綺麗な景色が見られる場所があるってよ」
「ほんと?」
「あぁ。昨日リークに聞いた。なんでもこの屋敷の裏にある山のてっぺんから見る景色が凄いらしい。休みの日に行ってみるか?」
「うん!!」
どんな景色だろうか。この街は港があるから 海の景色なんだろうか。すごく楽しみだ。
綺麗な景色を見れるんならカメラ創りたいな。今まで行ったところを写真にしてアルバム作って…でもこの世界にカメラなんてあるんだろうか。今度ライドに聞いてみよ。
数分ほどで休憩室につく。ノックをして中から返事があると中に入った。休憩室の中にはロイさんとクリスさん達、それと昨日食堂であった人達がいた。
「おはようございます。早いですね」
「そうですか?これでもゆっくり来たんですが…」
地球では2時間前行動が当たり前だったからな。ネルとライドにおかしいと言われたのでやめたけど。
「ではこれに着替えてください」
「これは?」
「護衛の制服です」
ロイさんに渡されたのは白い服だ。所々に青い色も入っていてカッコイイ。よく見ればみんな同じ服を着ている。
「鎧は違うんですか?」
「あれは外にいく時だけです。屋敷では動きやすさも考慮してこの格好なんです」
「わかりました」
更衣室に案内されてそれぞれ着替える。よく俺サイズの制服があったなと思ったけど、もしかしたら女性用かもしれない。深く考えるのはやめておこう。
ライドは身長が高いため、護衛の服を着ていると貫禄がある。昔から働いてましたと言われても違和感がない。
「着替え終わりました」
「うぉぉ、綺麗だ…」
「天使様だ…」
「可愛すぎるにゃーーー!!」
ネルが更衣室から出てくると小さな声でネルをじっとみている男性の中で、シオンさんだけが大きな声を出してネルに飛びつく。
ネルは少し恥ずかしそうだ。
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