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本当の世界と言うのは俺が生まれるはずだった世界のことなんだろうか。
(もう一度やり直せるのかな……)
もう一度人生をやり直せるのならばやり直したい気持ちはある。けれど前世と同じように誰からも愛されなかったら?必要とされなかったら?
今度こそ俺は耐えられなくなってしまう。
俺の考えを読んだのか神様が口を開く。
『大丈夫。前世のようなことはならないよ。僕が保証する』
「ではお願いします」
神様が言うんだったら間違いないだろう。俺はすぐさまお願いした。
これは所謂異世界転生ってやつかな。でもこの場合地球に生まれたのが異世界なのか?いや、でも転生ではないもんな。なんか頭がこんがらがってきた。
『あとこれは決まりなんだけど、生まれ変わる子には僕達の加護をあげる』
「加護?」
加護ってなんだ?地球では聞いたことはあるものの意味をあまり知らない言葉に首を傾げてしまう。
「君を守るための力みたいなものだよ。君が望むものを何でも授けてあげる。
君の今から行く世界は魔法とかがあって地球とは全然違うんだ。地球風で言うと“剣と魔法のファンタジー”って感じかな。
伝わる?」
神様の説明に興奮気味に何度も頷く。藤田明彦30歳。趣味に時間を割くことは出来なかったけど、通勤途中にラノベを読むことで一息ついていたこともある。その中でもファンタジーが1番好きだった。
魔法があるならたくさんの魔法を使ってみたいな。剣も良い。聖騎士になってたくさんの人を助けたり、あ、ファンタジーってことは見たことない生き物もいるんだろうか。
『コホン。明彦君。今君の考えてことを全て与えることができるよ。どうする?』
「俺は……」
俺があれこれと考えていると神様の咳払いが聞こえた。慌てて思考を切り替える。冷静になれ俺。
全てを与えてくれるということは魔法も剣も扱えるということだろうか。どちらも魅力的だ。けれど俺が本当に望むのは……
「皆から愛されたい。もう必要とされない人生なんて嫌なんです」
『そっか…それが君の望むものなんだね。なら僕が君にその望みに必要だと思ったものを与えることにするよ。その力をどう使うかは君次第。
あとはそうだな…僕からのちょっとしたプレゼントもあるよ。それは生まれてからのお楽しみ』
プレゼントとはなんだろうか。前世ではプレゼントなんて貰ったことがないから楽しみだ。
そう思っていると頭上から金色の光が降り注ぐ。綺麗だと見ていると俺の体がどんどんと薄くなっていった。
『じゃあお別れだ。明彦君。前世の事に怯えないで。自由に生きていいんだからね。この世界は綺麗なんだ。時間があれば見て回ることをオススメするよ』
「ありがとうございます」
『僕に会いたくなったら強く願ってごらん。何時でも会いに行くから』
神様の言葉にまた涙が出そうになる。泣くのを我慢して深々と頭を下げる。体が消える直前に見た神様の顔は見えないはずなのに笑っているような気がした。