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俺、異世界で旅スロします  作者: PP
第一章
22/34

22:魔弾バースト

 俺は目を覚ますと、ホール魔法を展開してアイと共に移動をする。


「んー、やっぱりここの空気はいいなぁ」

「はい、私も落ち着きます」


 自分の魔力空間なので居心地が良いのは間違いないのだが、こうしてアイにも気に入ってもらえる空間づくりが出来ているようで少し喜んでしまう俺である。


「さぁ、設定変更はこの通りに。後はドリンクコーナーの補充と……」


 俺はアイに今日の業務を伝えるが、慣れた物で次々に仕事をこなしていく。そして開店時間になると、酒好きさん、魔王様と入場してくる。そして珍しくビタ押しさんも来る。


「おっ、久々じゃん」

「メーダこそ、元気してる?」

「ふふふ、今俺は王都に来てるんだ!」


 そう言いながら、碧結晶をドドンと見せびらかしてみる。


「うぇ、あんたソレ本物? 何、ついに盗み稼業でも始めたの?」

「何だよ、王様から貰ったんだよ。雑誌の技術提供のお礼だって」

「雑誌? 何ソレ、それよりもまた新台が出たのね」


 そうなのである、今日から魚伝説の解禁日なのだ。既に二人は必死に雑誌片手に打ち出しているのである。その光景をみて、ビタ押しさんも察してみせる。


「さてはあれが雑誌ね? うぇ、何これ……」

「良く出来てるだろ? あそこに居るネクロマンサーさんが書いた記事なんだぜ」

「うぇ、ね、ネクロマンサー!?」


 さっと俺の後ろに隠れてみせるビタ押しさん、やはりネクロマンサーは畏怖の存在なのか。


「本当に、あんたの人脈ってどうなってんのよまったく」

「ん、皆スロット大好きなだけだぜ」

「はいはい、そういう奴だったわねあんたは……」


 そう言いながら、ちゃっかりと新台の魚伝説に着席して打ち始めるビタ押しさん。仲良しな酒好きさんと一緒に雑誌と出目や演出確認しながら打つ姿は微笑ましい。


「それじゃ、ちょっと今日も王都の見学してくるわ」

「ああ、行っちゃうのね。残念」

「ん、何で残念なんだ?」

「何でもないわよ、ってアイちゃんも一緒に行っちゃうわけ?」

「はい、フロイスさんとお昼に会う約束してるので」

「フロイス? 誰それ? まぁ良いわ、メーダに襲われないようにね?」

「はいっ」

「こらこら、俺はそんな事しないぞ?」

「フロイス、何処かで聞いたことある名前ねぇ……」


 そんなビタ押しさんの声を背中に聞きながら俺とアイは再び王都へ舞い降りる。




「さて、それじゃ行こっか」

「はい。行きましょう」


 俺達は宿をチェックアウトすると、待ってましたとばかりに青年が姿を現す。


「よう、おはようさん」

「おはようメーダ。アイちゃん。雑誌の技術はすぐに広がりそうだよ、ありがとうメーダ。これで王都は更に発展するよ」

「そんなよせよ、俺はスロット文化が広がればいいと思ってるんだからさ」

「ははは、確かに魔メダルを集めるために魔物狩りが盛んになれば人類は安泰かもな」

「あの、それで今日は何をするんでしょうか?」


 どうやら、雑誌にそれ程興味がないのかアイが今日の予定を確認する。


「そうだ、今日は魔法ギルドでアポイントとっといたんだよ」

「えっ?」

「王様よりも忙しい事で有名なあの大魔法使い、ザリィと面会の時間を作っといたんだ。メーダの雑誌にザリィも興味が湧いたようで、あのザリィが今すぐにも会いたいと言った程だよ。で、どうかな?」

「あー、まぁ、はい」


 てっきり王都の観光案内をしてくれるものだと思っていたのだが、あてが外れてしまった。アイも田舎育ちで魔法ギルドのザリィと会えると聞いたところではぁ、としか言いようが無かったようである。


「貴様等がザリィ様との面会に割り込んで来た奴か」


 唐突に俺達の会話に割り込んでくる一つの声が聞こえて来る。その声の方へ顔を向けると、そこには一人の中年の男性が経っていた。ローブを羽織っており、前が開けているが学生服のようなものを着ているようである。


「ああ、ザリィ様に許可を貰ったわけだから構わんだろう?」


 青年が煽る様に答えてみせる、すると顔を真っ赤にして怒り出す男。


「貴様みたいなガキ達に俺との面会がキャンセルされるなんてあり得ぬ、決闘じゃ決闘!」


 そんな事を言い、いきなり火の球を飛ばしてくる。いきなりの事で俺とアイは反応出来なかったが、青年は剣を抜くとその火を両断してみせる。


「くっ、これならどうだ!」


 今度は両手で一つずつ火の球を飛ばすが、これもほぼ同時に両断して霧散させてしまう。青年、強いじゃないか。流石、魔王様と言い争いをよくするだけはある。


「くうぅ、何だよ貴様!」


 めんどくさい男だな、と俺は思いふと懐に閉まっていたリボルバーを取り出す。魔力の弾を込めると、アイに渡して見せる。


「ここを握って、そうそう。そして指をトリガーにかけて、うんうん上手い上手い。後は狙いを定めて、ああこの先端の上部にある窪みが着弾点になるよ。そそ、後はトリガー引くだけで魔弾は飛んでいくから、引いてみ」


 俺は魔王様が開発したリボルバーをアイちゃんに持たせると、安全装置も何もない銃とは呼び難いソレを手に、トリガーを引いて見せる。瞬間、バババッと音が立て続けになり三発入る魔弾が全て一直線に男の体へと襲い掛かる。


「おお、魔弾バースト<フルオート>でしたか」


 込めていた魔力は少なめだったため、着弾する度に男の体は徐々に宙に浮かび上がり、三発目が着弾した瞬間完全に男の体は吹き飛んでいきましたとさ。


「わっ、わっ」

「ははは、良い腕してるじゃないかアイ。そうだな、いくらでも弾は込めてやるからアイが持ってていいよコレは」

「わっ、わわっ!?」

「何やってんだよメーダ、まぁいいっちゃいいけども」


 俺達は完全に伸びてる男を放置して、魔法ギルドへと足を運ぶのであった。




「おお、貴方がメーダか。歓迎するよ、そういえばメーダスロッテンという男が入学予定だったのだが、まさか、な?」

「ハハハ、はい、メーダスロッテンと申します。初めましてザリィ様」

「おお、そうか。メーダと呼ばせてもらうよ? それに、既に学生の範囲では収まらない素質を持っているようだしね、堅い事は抜きにしよう」

「ありがとうございます」

「お、メーダって魔法ギルドに所属予定だったのか」

「凄いです、メーダさん」

「ハハハ」


 まぁスロットへの愛情を全力で費やす為に逃げたんですがねぇ。


「この雑誌という技術も凄いが、魔力文字という発想が素晴らしい。パターン化してしまえば同じ物が複製できるというのが特に良い。紙質がよくわからないのだが、これはどうなってるのだね?」

「ああ、これはですね……」


 と、雑誌の作り方を説明すると、次は俺からの質問をぶつけてみた。


「あの、この雑誌を読まれたならばスロットというのがどんな物か少しは理解していただけてますかね?」

「ああ、不思議な物だね。確率を何度も試行するものなのだろう?」

「はい、これをちょっとみてください」


 そういうと、ユアジャグを一台放出してみせる。ホール魔法の中ではないので、かなりの魔力がもっていかれたのがわかる。


「おお、何じゃこれは?」

「これがユーアージャグラーというスロット台です。情報誌はそのうち作らせるとして、これを貴方達魔法ギルドで複製できませんか?」

「ふむ、検討しよう」


 こうして、この世界に最初にスロット文化が生まれようとしていた。


「今日はありがとうございました」

「いや、私こそ充実した魔法技術をみせてもらったよ。いつでも会いに来るが良い、私はいつでも歓迎するよ」


 話の途中、アイはあまりに暇だったのか寝てしまっていた。青年は何だかんだで、話の内容を理解していたのかところどころ突っ込みをいれたりしていた。


「ん、あれ、メーダさん? あれ、わた、わたしっ」

「ああ、暇させてごめんな」


 俺におんぶされ、起きたアイがあたふたしている。


「重かったら俺が変わるぜ?」

「えっ、そんなやだっ、私重くなんか」

「重くなんかないよ? むしろ軽すぎるくらいだ、もっとアイはご飯食べないとな?」

「あっ、はい……」


 青年よ、女の子に重いなんていっちゃダメだからね? 凄い人みたいだったが、一気にただの青年に逆戻りだよ。


「あの、メーダさん」

「ん、どうした?」

「良ければ、ホールでエークラ打ってみたいです」


 俺は思わず感動してしまうが、アイにこのだらしない表情をみせる訳にはいかずそのまま落ち着いた口調で応えてみせる。


「おう、魔メダルはいくらでも使って良いよ」

「おいメーダ、俺にも魔メダルくれよ!」

「だーめ、ちゃんと代価交換だからな」

「けちんぼめ」

「はははっ」


 青年は最近負けが続いて密かに貯魔メダルが少なくなっていたのだが、すぐに何か持ってくるだろうから、笑い飛ばしておいた。


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