花と羽
ちょっぴり短いです。
─────酔っ払った騒ぎから、一週間が経ちましたよっ!!
あれからわたしは、ニコラスお兄様の宣言通り花の精気しか食べさせてもらえませんでした………。
えぇ、諦めましたとも。
そしてまた、ヴァンパイアの器官への疑問が増えました。
花の精気を食べるときって、花びらにキスするだけでいいんですよ。不思議です。
精気とは、ざっくりいえば命の源みたいなものです。それを吸うだけなので、キスでいいそうです!
やっぱり、ヴァンパイアの消化器官などには不思議が一杯です。
「お腹一杯になった、イリー?」
甘い蜂蜜のようなトロリとした紅薔薇の精気を吸い、十数本枯らしたあと満足してお腹を撫でていれば、メリッサお姉様が艶やかな笑みを振り撒きながら、頭を撫でてくれます。
その柔らかな手の感触を堪能しながら、メリッサお姉様の反対の手の中にある、漆黒の薔薇を見ました。
「お腹は一杯になりましたけど…………お姉様まで付き合わせてしまってごめんなさい。成体の魔族もお花の精気だけで足りるのですか?」
「心配しないで、イリー。魔界産の黒薔薇の精気は、良質だし、量も多いのよ。イリーには少し多いかもしれないけれど、わたしにはぴったりよ」
そう、メリッサお姉様はわたしに食事をあわせてくれているのです。
カサカサになって枯れた薔薇を弄びつつ、お姉様の優しさにジーンときました。
「ありがとうございます、メリッサお姉様!」
思わず隣にいたお姉様に、抱きつきます。
食事中に、ちょっぴりお行儀悪いですけれどねッ!
「ふふふ、イリーったらとっても可愛いわ!!」
「えへへ~」
「うふふ~………ってあら?イリー、背中に何か………──────!?」
「どうかしましたか?」
「羽が生えてきているわ!大変、お父様に知らせなきゃ」
抱き止めてくれたお姉様の腕が急に強張り、お姉様は慌て出します。
─────羽?羽が生えてきたのですか?
「何か問題でもあるのですか?」
「ちょっぴりね。たいしたことではないけれど、お父様をよんだほうが都合がいいの」
そっと背中を撫でられ、くすぐったさに身をよじります。
「よんでくるから、ここで待っていてね」
そう言って席を立ったお姉様は、すでに朝食を終え仕事に向かったであろうお父様をよびに、部屋を出ていきました。
─────さて、どうなるのでしょうか?