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優しい世界が見たいんだ  作者: 川崎殻覇
名取愛人は求めない
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夏が来る

めちゃ難産でした

調べるといったところで何をすればいいのか。

俺とあの家は既に無関係、安易に近づけば愛菜の不利になること必死だろう。


簡単な話だ。

再婚、もしくはそれに近しい関係の人間がいるという母親に前の夫との子が自分の感情のまま安易に近寄る。それは言いたくはないが行動としては悪だ。


それぞれにはそれぞれの幸せがあり、生活がある。幼い子供ならまだしも今の俺は分別がつく大人だ。そんなことは出来ない。


何か建前があればいいのだ。便利な建前が。

そう、例えば…妹からの救助要請、助けてという一言さえあればどんなことだって俺はする。


「………でも、あの子はそれを言わなかった。何も無かった…としか言ってくれなかった」


その時点で俺があの子の事情に介入する手段は無くなってしまった。…だって、それを無視して強引に救いにいくのは俺ではない。


俺はいつだって助けてと請われ、それに従った。そうでもしなければ俺は動けなかったから。だって、それが大人というものだろう?


助けたいと思ったとしても、その行為を相手が望んでいなければそれは独善となる。独善となった行為は単なる押し付けであり度し難い罪だ。

更に言えば自分でなんとかする、そう言った存在に態々力を貸すというのはその人の力を信じていないのと同義…そんなことを俺はされたくないししたくもない。


(そうか、これが大人が感じる閉塞感…というやつか)


いろんなことを諦めて、いろんなものに挑戦出来なくなる。…俺が望み、手に入れた地位がここにあった。


結局解決策なんてものは考えられず、勝手に時間は流れていく。結局次に期待するしかない。


でも、仕方ないだろ? これがお前の望んだものさ。ならそれを享受するといい。


心の中の俺がそう言う。

そうとも、それが俺の望んだものだ。今の俺がその言葉を肯定する。


なら話はそれで終わり。来ない筈の次の期待を俺は永遠に待ち続けるだけ。そしてこの件は思考の隅に追いやってしまった。




話は変わる。

夏休みの話だ。


もう学生由来の予定は全て済ませてある。なのでその他全ての時間をバイトに費やしてもよかったのだが…実は俺にはやることが残されていたのだった。


「約束…かぁ」


俺にとって夏休みの約束とはそれ一択。何せ他の人間関係の全てを抹消してしまったのだから。


「にしても…ねぇ?」


にしてもである。

そう約束はしたさ…にしてもさぁ。


「なーんで無人島(普通に有人島)で一週間過ごすことになるんだろうなぁ…」


本当に意味がわからん。誰か助けて…。



───


覚悟はとうに決まっている。

ずっと前から、そう、最初に君と出会ってから。


それは一目惚れなんかじゃ絶対ない。私はそんなものを絶対しないから。

…敢えて言葉にしてしまうのならば…恐怖と不思議を混ぜ合わせたような感情だった。


感謝はある。でもそれでも私は怖かった。怖かったけれどそれを感じさせるのは失礼だと思った。

でも、流石にその次の行動を予測することは出来なかった。…まさか、あんなことをするなんて想像すら出来なかった。


今でも偶にくすりと笑ってしまう。

徐に地面に捨てられた鞄を拾い、中身を捨て…それを被って甲高い声を出すなんて想像のしようもない。


嗚呼…でも、想像が出来なかったからだろうか。あの時、確かに私の中にずっと残り続けていた感情が打ち消された。

ずっとずっと、あれからも私の中に残り続けている感情…きっと私の中に永遠に残り、消えることは一生無いと断言出来るもの、そんな一生付き合わされる感情がほんの一瞬だけでも消え去った。


それは幸運だ。だってそうでしょう? あの時のことを思い返すだけで私はそれを忘れられる。そんな一瞬の断絶こそが私にとって何よりも得難い宝物なのだから。


「……ふぅ」


あの日、覚悟を問うてきた彼女に私は自分の答えを出した。

その答えは彼女にとっても予想外だったらしく、目を丸くして疑問系のは? を三回ほど突きつけられたけれど、その答えが私の隠しようもない本音だとわかるとその疑問系を取り下げてくれた。


『納得は出来ません。…出来ませんが止めることもしません。どんなものであれ、私はあなたが最初に言った言葉を信じます』


そう言って彼女は話を終わりにしてくれた。

なるほど、と確かに思う。彼が認める通り、彼女は高潔で美しかった。いっそのこと嫌いになりそうな程に。


「…覚悟、かぁ」


覚悟はとうに決まっている。けれども覚悟は出来ていない。


それを実行することは決めている。でも、それが出来るかはまた別の話…。


嫌われるかな? 受け止めてくれるかな? …やることは決まっているのにずっとそんなことばかり考えている。


嫌われるだろうな、受け止めてくれないだろうな。そんな諦めが私の背後に迫っている。

だったら、それでもよかったりする。


やることが決まっていて、伝えることが決まっていて、して欲しいことが決まっているのならその通りになる道筋を作ればいい。失敗なんてものは絶対しないのだから。


あぁ、悪辣。でも仕方ないよね。

君はきっと普通ではなくて…ううん、普通ではないように振る舞っている。そんな君に正統派な行動をしても無駄なんてことは分かりきっているのだから。


きっと驚くだろうな。軽蔑されちゃうかも? それならそれでやりようはあるし…でもまぁいっか。最終的に出してもらう結論は変わらないのだから。


だあれも、親にさえ、家族にさえ内緒の本当の気持ち。

君にだけ教えるよ。…なんて、傍迷惑な話だけど…自業自得だと諦めて欲しい。


「…ねぇ、お母さん」


「なぁに? どうしたの?」


前から決めていたこと、お願いしようと思っていたことを言う。


「あのね…ちょっとお願いがあるんだけど…」


関係を変えよう。もう二度と変えられないくらいに。

そして突きつけよう、君のその歪さを。どうしてそんな歪な存在になってしまったのかを聞き出そう。


およそ二つのことを聞いた。だけれどもまだ足りない、決定的な動機が見当たらない。

なら、その最後の言葉を受け入れるしかない。…そうしてやっと私達は次に進める。変わらないまま変われるから。


「ひいおばあちゃんの家に…名取君を呼んでもいいかな…?」

閲覧ありがとうございます

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