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番外編 私の男にちょっかい出すな

あれから二人はシャワーを浴びてパノラマビューを見ながら朝食を食べていたのだが、ラインハルトがルーナにあられもない姿を見してしまったのがヴィクトリアの癇に触ったらしく王女殿下はご機嫌斜めだ。


「ねぇ、ヴィッキー。いい加減に機嫌を直してよ」


ラインハルトがヴィクトリアの顔色を伺いながら言ったが、逆にお説教が始まってしまう。


「だいたいお前が無用心過ぎるんだぞ。お前にその気が無くても、あんな姿を見たら相手だって間違いを犯してしまう」

「あはは……気をつけるよ、ごめん」


こうなったヴィクトリアは何を言っても逆効果の為、ラインハルトはひたすら謝って彼女の気が落ち着くのを待つしかない。

本気では怒ってないのは分かっているが、怒ってるヴィクトリアは幽霊より怖いからだ。


「ただでさえお前は救国の英雄でヒルデガルド御婆様の……皇帝陛下の命を救ったんだ。今じゃ帝国中の姫やら貴族の娘から求愛の手紙が来ているとか。だがまぁ、シュヴァルーヴェはお前一人なんだから世継ぎ問題が解決してよかったじゃないか。その気になれば後宮も作れるぞ」


ヴィクトリアの集中放火がラインハルトの装甲を簡単に貫通していく。

あの事件以降、確かにラインハルトの元には何処かの王女やら貴族の娘からの求愛の手紙が届く。おまけに士官学校の女子達からも一目置かれ、目下人気上昇中なのだ。

復活した皇族、シュヴァルーヴェ。一族は一人しかいない。おまけに皇帝の恩人で将来有望ときたら帝国中の女性から妻になりたいと言われるのは無理がない。

ヴィクトリアはそれが面白くないのだ、自分の想い人が同性から良く思われるのは嬉しいが、それとこれとは話が違う。

ヴィクトリアはラインハルトを独占したいのだ。

その気持ちをラインハルトはよく分かっているからか、横に座るヴィクトリアの手を握る。


「僕の想い人はヴィッキーだけで、君以外の愛は要らないよ。それに後宮なんて頼らなくてもシュヴァルーヴェの世継ぎ問題は君が解決してくれるからね。愛しのヴィクトリア」

「なっ!?」


ラインハルトの真っ直ぐな愛の言葉にヴィクトリアの顔が真っ赤になる。


「うん……私が世継ぎ問題を解決させるからな。愛しのラインハルト」

「嬉しい事を言ってくれるね、未来のお嫁さん。だけど世継ぎ問題は二人の問題だからね。君一人が背負わなくて大丈夫だよ。二人で一緒に頑張ろう」

「……うん……」


互いに手を握り、自然と口づけを交わす。

そのまま頬を紅潮させたヴィクトリアの瞳が瑠璃色の瞳を見つめ――。


「ラインハルト、もし良かったら……その………膝枕をしてもらえないか?」

「え?」

「あ、いや……ダメなら大丈夫だから気にするな……」


しゅんとした表情を浮かべるヴィクトリア。

そんな表情をさせると願いを聞きたくなってしまう。

それにルーナに見してしまった手前、断われないし断わる気もない。


「いいよ。あんまり寝心地は良くないけどね」

「本当か!?」


ラインハルトの言葉を聞いて、ヴィクトリアの顔が一気に明るくなり、そのままラインハルトの膝に笑みを浮かべながら頭を預けた。


「ヴィッキー!? 今からなの?」

「当たり前だ。列車が着くまで堪能するから起こすなよ」

「わかったよ……まだ朝食を食べてる最中なのに……ヴィッキーは甘えん坊だな」


ラインハルトの言葉に焔の瞳が瑠璃色の瞳を睨む。


「何か言ったか?」

「な、なんでもないよ! 好きなだけ堪能して!」

「うん、素直で宜しい」


危うく若獅子に噛み殺される処であったが何とか噛み殺されずに済んだ。

そしてラインハルトはヴィクトリアの頭を優しく撫でると、彼女は幸せそうな顔をして眠りについた。



ヴィクトリアがラインハルトの膝枕を堪能して数時間。

遂にナイトジェットは目的のミュンヘンの駅に入行して行く。

車窓から覗くと、駅のホームには沢山の観光客らしき人々が行き交っている。

そしてラインハルトには重要な任務を完遂しなければならなかった。

それはラインハルトの膝枕を堪能しているヴィクトリアを起こすこと。

何故重要なのかはヴィクトリアは寝起きが悪いから起こすのが大変なのだ。


「ねぇ、ヴィッキー。着いたから起きてよ」


ラインハルトが肩を揺すって起こそうとするが案の定ヴィクトリアは起きないし、しかも細やかな抵抗をしてきた。


「うるさいなぁ……私はまだ堪能したいんだ。だから膝枕をまだ堪能する」


ラインハルトの膝に顔を埋めて抵抗するヴィクトリア。


「ダメだよ、ヴィッキー。宿に着いたら好きなだけ膝枕でも何でもするから起きて。それに顔を埋められると僕の理性が無条件降伏しちゃうからやめてくれると助かる……」


その言葉にヴィクトリアは恥ずかしそうに頬を赤らめながら顔を起き上がらせた。


「本当だな?」

「本当だよ。僕が嘘ついた事ある?」

「ない。お前は私を裏切らないと信じてるから信じる」


そしてヴィクトリアは体を起き上がらせるとラインハルトに背中を向けて言った。


「それに……たまには無条件降伏してもいいんだぞ」

「ヴィッキー……」


その言葉の意味する事に気がつくと、ラインハルトは後ろから優しくヴィクトリアを抱きしめた。

そして口づけを交わそうとした瞬間、誰かが部屋をノックする。

どうやらルーナが呼びに来たらしい。

ラインハルトが扉を開ける前にヴィクトリアの耳元で囁いた。


「続きは今夜だね、愛しのヴィクトリア」

「うん……愛しのラインハルト」


愛の密約を交わし、ラインハルトが扉を開けるとルーナが待っていた。

だが何故だかルーナは目を手で隠しながら待っている。


「あの、ルーナさん?」


ラインハルトが訊ねるとルーナは慌てふためいて喋りだした。


「す、すみません! わ、私あんな殿方の姿はあまり見たことないので、服はちゃんと着てますか!?」


あんな殿方の姿とはラインハルトのあられもない姿の事だ。


「あ、大丈夫です! ちゃんと着てますから! 今度はちゃんと結わいてますよ」


ラインハルトが慌てて説明すると、ルーナは恐る恐る指の隙間から確認してホッとした表情を浮かべる。


「もうすぐ降車時刻になりますので、お支度の程宜しくお願いします」

「わかりました。何から何までありがとうございます。良い列車の旅でしてた」

「いえいえ。お客様にご満足頂けて良かったです。では時間になりましたお迎えに……伺い……っ!?」

「?」


瞬く間にルーナの顔が赤くなっていく。

ラインハルトはまたやらかしたかと思い、自身のバスローブを確認するが腰紐はちゃんと結わかれている。


「ラインハルト、私からも礼を言わして欲しい」


後ろから声がしてラインハルトの振り向くとヴィクトリアが近づいて来た。

しかもわざとバスローブの腰紐を結わかず羽織った状態で、まるでルーナに自分の肉体美を包み隠さず見せつける様にラインハルトに近づき、抱きしめながら唇に熱い口づけをする。


「良い列車の旅だったぞ、ルーナ。()()()()()()()()も凄く気に入って、帰りもこの列車がいいと駄々を捏ねられてな。悪いが帰りも同じ部屋でお願い出来るか? 出来れば同じ部屋で()()()()()()()()と愛し合いたいからな」

「は、はい! 直ぐに手配します!!」


赤面した顔を隠す様に顔を両手で隠しながらルーナは急いで立ち去った。

そして泥棒猫?を追い払ってヴィクトリアは満足気な表情をしている。


「ヴィッキー……ルーナさんが可哀想だよ」

「私の男にちょっかい出すからだ。誰の男かわからせてやらないとな」

「彼女の場合は仕事だと思うけどなぁ……」


ヴィクトリアに『私の男』と言われてラインハルトも悪い気はしない。むしろ可愛いヴィクトリアに言われて嬉しくなるが、流石にルーナが可哀想に思えてきた。


「僕としては嬉しいけど、出来ればヴィッキーのこんな姿は僕だけに見せて欲しいな。ヴィッキーは僕の女なんだから」


ラインハルトがヴィクトリアのバスローブを結わきながら言う。


「……怒ってるか?」

「別に怒ってないよ。でも他の男にヴィッキーのこの姿を見られるのは凄く嫌だ。特に今見たいな扉口だと廊下に面してるから他の男に見られるかも知れないし」

「すまない、ラインハルト」


ヴィクトリアのバスローブを直すと首にはラインハルトがプレゼントしたネックレスが見えた。


「寝る時も着けてたけど、そんなに気に入ってるの? そんなに高い物じゃないよ」

「当たり前だ。お前からのプレゼントなんだから気に入って当然だ。それにプレゼントは値段じゃない。相手を想う愛情が大切なんだ」


ヴィクトリアからそんな事を聞かされるとラインハルトは嬉しくなってしまう。


「ありがとう、ヴィッキー。思わず抱きしめたくなっちゃうよ」

「なっ!?」


その言葉にヴィクトリアの顔は真っ赤になり、両手を広げて待ち構える。


「……だったら今抱きしめてもいいんだぞ?」

「ヴィッキー……」


二人が抱きしめ合っているとおもむろにラインハルトがヴィクトリアを引き離した。


「ごめん……今度こそ僕の理性が無条件降伏しゃうからね。ルーナさんが呼びに来るから支度しないと」

「わ、わかった! 流石にシャワーを浴びてる時間は無いからな! ルーナを待たせる訳にはいかないし」


顔を赤らめながら二人はじゃれ合っては荷物をまとめてルーナが迎えに来るのを待つことにした。

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