痴話喧嘩の後には
「ほら、まずは謝れ」
「生意気なこと言って、ごめんなさい」
ジョニーさんと死神さんが落ち着いたのは、一時間半ほどした頃だった。
応接間で痴話喧嘩をする二人を、あとは若い人達でということで、オレ達はマルク君の家の庭でお茶にしながら待ってたよ。
イケイケで攻撃的な見た目の死神さんは、すっかりしおらしくなって来たけどさ。
ちょっと疲れたようなジョニーさんが珍しい。
一体どうやって説得したんだろう。
聞きませんよ? お互い大人なんですから。
「船は何処に沈んだんです?」
「それが……よく分からないの」
「はい?」
「推定でしたら分かりますよ。家の船が彼女を拾った場所と、流されていた時間と海流からの推測ですけど」
何かと地雷がありそうな死神さんをあまり突っ込むのも怖いから、さっさと本題に入るけどまさか本人が知らないとは。
マルク君の家で放り出したら、どうなっていたか分からないね。
本当危なっかしいから、保護していたという感覚なのかもしれない。
「でも大丈夫なんですか? この辺りは海竜の巣ですよ」
「うわぁ。それはまた……」
死神さんの船は、地元の人は近づかない海竜の巣の辺りに沈んだらしい。
流石にジョニーさんの彼女だね。トラブルメーカーの匂いがする。
「もしかして無理?」
「多分大丈夫じゃないかな。最悪ジョニーさんが海竜を生身で退治すれば済む話だし」
「それじゃ、ジョニーが危ないじゃないの!」
「いや冗談ですよ。海中で海竜と戦う訳ないじゃないですか。空中から牽引ビームでサルベージします。どんな船なんです?」
「なんだ。良かった。ガレオン船型宇宙航行船三型よ。一応緊急措置は取ったから船体は無事だと思うんだけど」
マルク君におおよその位置を海図で教えてもらうけど、あまりに危険だから死神さんには教えなかったんだろう。
冗談でジョニーさんに海竜を退治って言ったら、本気にしそうになるし。
海竜と海の中の戦いは、少し分が悪い気がしないでもない。
元々は宇宙空間で故障した艦船を、サルベージと曳航する特殊な船があるんだよね。
護衛のシューティングスターと、戦闘艦を何隻か宇宙から降ろせば十分だろう。
「引き揚げるのは構わないですけど、その船個人用じゃないですよ。どうするんです?」
「うーん。直してから考えるわ。修理は出来るの?」
「修理も出来ますよ。サルベージと修理費は、ジョニーさんの資産から差っ引いておきます」
「おう、何から何まですまねえな」
「ジョニー、そんなお金あるの?」
「ああ。竜とか退治したし、お宝堀当てたりしたからな」
「えー! お金持ちじゃん!」
「邪魔だからアレックスにやっちまったよ」
「もう! なんでいつもそうなの! リアルでもそうだったじゃない!」
「いいじゃねえか。あっても使わねえんだし」
「でも!」
「あー、痴話喧嘩は夜にでも二人でしてください」
「痴話喧嘩じゃねえ!」
「痴話喧嘩じゃないもん!」
ジョニーさんって、リアルでも破天荒な生き方してたのかね?
お金の話になると死神さん目の色変えたけど、すでにジョニーさんの手元にないと知るとまた痴話喧嘩始めたよ。
まあ彼女の反応が普通だよね。
ジョニーさんになら返してもいいけど、彼女にお金あげるとろくな使い方しなさそう。
全く。宮殿を調べなきゃならないのに、余計な仕事を増やしてくれちゃって。




