勇者と凡人
「流石に本物は違うね」
「勇者殿! これ食ってくれ!」
女の人を助けたジョニーさんは、すっかり有名人となり帝都の人々に歓迎されてる。
ジョニーさん? ジョニーさんは慣れた様子で彼らの声に答えてる。
決して愛想がいい訳でも謙虚な訳でもないが、何故かみんな嬉しそうにジョニーさんと話してるよ。
「次はアレックスの番よ!」
「クリスお嬢様。何が私の番なんですか?」
「困ってる人助けて、貴方の凄さを見せてやりなさい!」
「そんな無茶苦茶な」
「大丈夫。貴方もやれば出来るわ!ダブル勇者になって世界を救うのよ!」
「おお! それはいいのう! アレックスは城持ちなら勇者王かの?」
あかん。うちのお嬢様達、すっかりジョニーさんに感化されてる。
そんなポンポンと勇者を量産したらだめだよ。
第一あれはジョニーさんだから出来ることで、オレには無理です。
アンドロイド任せの引きこもりに何を期待してるのよ。
それにミリーお嬢様。宇宙要塞の件は秘密にお願いします。
洒落にならないんだから。
「勇者王(笑)」
「ケティ。勇者王も(笑)も要らない。ならないから」
「どちらかと言えば勇者司令でしょうか?」
「じゃあアタシ達は勇者軍かい?」
お嬢様達がおかしなこと言うもんだから、ケティばかりかエルやジュリアにまでネタにされたじゃないか!
「いや勇者村長じゃない?」
「おお! 俺達は勇者村の村人か!」
「ありがたや。ありがたや」
村のみんなまでネタを被せなくていいじゃないか。
誰もオレが勇者になれるなんて思ってないくせに。
「いや~、なかなか楽しい皆さんですね。そろそろ行きましょうか。お疲れでしょう」
帝都の人々に歓迎されてるジョニーさんと、身内のみんなにネタにされるオレを、爽やかな好青年のマルク君は微笑ましげにみていた。
だけどマルク君は頃合いを見計らったかのようにジョニーさんを人々の輪の中から連れ出すと、彼の家に案内し始める。
なかなか出来る男だね。マルク君。
嫌みじゃないのが逆に嫌みになりそうなのに、そんな気配全くないよ。
「みなさん。ようこそ! ここが家の商会です!」
「……大きなお店ね」
「うむ。大きな店じゃ」
そんなマルク君に案内されて到着したのは、大通りに面した地上三階建ての超高級そうな建物の商会だった。
周囲には同じような別世界のような超高級店が並んでいて、入り口の扉も貴族様の屋敷かと思う豪華さだ。
ジョニーさん。
貴方の会う人はみんな凄い人ばっかりなんですか?
お家帰って畑耕したいなぁ。




