19話 回想 ー人影ー
先程から口調が崩れているが、すべて恐怖を安らげる為の行動だ。自分を強く保つには、必要だった。
意を決してその重厚なドアを開ける。鍵は開いていた。開けた途端に五感が異常を伝えてくる。赤黒いナニカの滴る音。錆びた鉄と腐敗した生モノの臭い。酷く冷たい空気。パイプ渦巻く空間の中心、少し開いた場所に人の首。吐き気を催すには十二分の光景が眼前に広がっている。
「ハァ…ハァ…ウッグッ、オヴェ…ッ゙」
我慢出来ずに吐き出す。中はもう見ないようにして警察にこの異常事態を連絡しようとする…ところで、この異常空間から声が聞こえてくる。
「こんなところに人は来ないと思ったんだけどなぁ…まぁ良いか。お友達の事が心配になってしまったかな?」
もう見るまいと思っていた後ろを再度覗く。そこには言葉通り人影があった。人影が言った気になることを確認する。
「今、何と、言った?」
「ん?お友達の事で来たんじゃ無いのか?」
お友達?と聞く前に人影は首を指差す。
そこには、かつての我が友がいた。
「お前…なんで…?」
少し前まで、【僕】なぞに付き合ってくれていた親友が、今では死をこの空間が演出している。これは悪い夢だろうか。多くの書物に綴られていた想像であると、現実逃避をして止まない。
「あぁいや、ちょっとヘマして此処を見られてしまったからな、口封じ…って奴だ。でもオマエにもバレちまったな。やっぱ此処は辞めるべきか」
吐き気と同時に込み上がってくる怒りを抑え、【僕】を見下ろす人影を睨み、疑問を吐き出す。
「…こんな所で、お前は何をしているんだ?」
「知った所で何になると言うんだい?オマエは今から死ぬって言うのに」
刹那、親友の顔を想う。いずれかき消えて、意識が落ちる。落ち逝く中で、人影が云う。
「オレに死の彩りを魅せてくれた礼に少し教えてやる。オレはヒトの形損ない、名は…そうだな、ディックだ。最期に。このヒトデナシのクソ野郎の事を思い浮かべながら、死ね」
このあと、気が付いたら既に霊となっていた。そこから僕の知識と、非常識な手段を用いてアイツを追い続けた。だが、知り得たのは、知りたくもない事だった。…ということしか憶えていない。
半月近くが経ってしまいました…中々重い腰が上がりませんでした。ようやくです。なんと回想に3話使うという贅沢ぶり。主人公より優遇されてるかもしれないこの幽霊。珍しく(?)少しグロめの描写が入っています。次回はまた柴ちゃん視点に戻るかなと思います。また気長にお待ちいただければ幸いです。




