こうして、私たちの日常がやってきた
目的地につくと、そこには黒いローブを纏ったひと目で見て露骨に悪い奴だと分かる人が、ドス黒い魔力を放出している魔法陣の前に立っていた。
「君がこんなことをしたのか?」
内心では怒っていたが、私はつとめて穏やかな調子で聞いた。
「そうだ、と言ったらどうするんだ?」
「消す。肉片も残らないぐらいに消し飛ばしてあげる」
と、私はにこやかな笑みを作って穏やかに告げた。内心はとっくに怒りが爆発していて、いますぐにでもこいつを消し飛ばしたかった。
「そうか、ならこうするまでだ!」
そう言うと、彼は魔法陣に手をかざし呟いた。
「現世の魂よ、其の力を呼び覚まし、すべてを闇へと染めるがいい!」
その途端、森全体が黒く染まり彼の周りに大量の影の異形が現れた。
「ふはははは!これでここはもう我が領地……」
私は冷めた声色で呟いた。
「……そうか、やってしまったか……じゃあ私の前から居なくなれ。今すぐに」
「……悪いな、消えてくれ。【アイシクル・ストリーム】!」
あいつらの足元に魔法陣が形成され、氷柱の生み出す。そこからその余波だけであたり一面を白く凍らせるぐらい強い魔力の氷柱は怪物と黒いローブの青年を一瞬で凍らせ、屠った。
哀れな彼は、自分の目的を達成することも無く死に際の言葉も残さぬまま、塵も残さずこの世から消え去った。
「はぁはぁ……思ったよりも面倒だったね」
「え?なにが……起こったの……?」
クエルはいまいち状況が飲み込めていないようだった。
「さぁ、ここから離れよう。あの魔法陣の主さえ消えればすぐに元の森に戻るからね」
そう言って、私たちは箒に乗って森から抜け出した。
そして、森の入り口で、
「さて、この後君はどうするの?行くあてとかはあるのかな?」
「あ、あのっ!えっと……弟子にしてくれませんか!」
私は少しビックリして、考えてから答えを告げた。
「魔女なんてそんなにいいものじゃない。それでも、君がなりたいというのならついてきなよ」
「もちろん、ついて行きますよ。どこまでも、どこまでも」
と、彼女は屈託のない笑顔で言った。
「そうか、じゃあうちに帰ろうか。クエル」
「はいっ!師匠!」
そして私たちは、夕日の中を歩いて帰った。
「師匠、聞いてますか?」
私が物思いにふけっていると、クエルが呆れたように声をかけてきた。
「ん?あぁ、ごめんね。ぼーっとしてた」
「もう、また遅くまで起きてるからですよ!」
「あはは、ごめんごめん」
まぁ、こんな感じで私たちの日常は始まったばかりです。
(こんなふうに平和な日常も、悪くはないかな…ね、きみもそう思ってくれるよね)
一章完結!