空から師匠が落ちてきました
私は暗闇に包まれた空間の中をカンテラをつけながら歩いていた。
空間魔法は、出たい場所との距離を縮めるだけで瞬間移動できる訳では無い。だから、私はこうやって歩いているのだ。
「まったく……使いやすいんだか使いにくいのか分かったもんじゃないよ」
そう毒づきながら進んでいると、目の前にやっと出口が見えてきた。
「っと、とうちゃーく」
そう言って、私は飛び出した。
「はぁ……師匠、遅いですね。もう真夜中ですよ」
満月になりかけの月がてっぺんまで登ってきた頃、私は師匠の帰りを待っていた。
レイラちゃんは、とっくに寝ちゃいました。
ちなみに、前に師匠がレイラちゃんにお酒を勧めたら一杯目でダウンしてました。
「今日は、帰ってこないのかな……ふぁぁ、私もそろそろ寝ますかね」
私が家の中に戻ろうとした時、
「うきゃぁぁぁぁぁ!あ、クエルー。そこにいると危ないよー!」
「え?ししょ……」
私が言葉を発し終わる前に、頭に感じた鈍い痛みと衝撃で私の意識は飛んでいきました。
私は、不思議な感覚に襲われていた。
フワフワと浮いてるような感じで、気を抜いたらどこかへ行ってしまうような…そんな感じだった。
そして、私がいる場所も小高い丘の上ではなく街のような…いや、街であった場所にいた。
「なに……ここ……?」
そこは、家々が瓦礫となり、周りは火の海になり、地面には少し前まで人であっただろう部品が無数に散乱していた。
しかし、不思議と吐き気はしてこなかった。
まるで、その光景を知っているかのようだった。
そのとき、少し離れたところから戦闘音が聞こえてくる。
「あっちで……何が起きているの?」
私は、惹き付けられるかのように戦闘音のなる場所へ向かった。
しかし、そこの惨状は地獄のようだった。
地面は戦闘の余波により所々抉れていて、唯一残っているのは消し炭となった人々の灰だった。
そして、戦場の中心では二人の人たちが数万の大軍を相手に戦っていた。
一人は、藍色のローブを纏い氷の剣を使い戦う少女。
もう一人は、魔法を扱う背の高い女性だった。
彼女たちは、相手の命を容易く刈り取っていった。しかし、相手も彼女たちへ攻撃をしていった。背の高いの方は、軽々と避けていなしていたが、ローブの少女は一撃たりとも避けなかった。
それでも、彼女の体には傷一つついていなかった。
ローブの彼女はこちらを向いて、微笑んだような気がした。
そして、
「一切合切全部消えて!!!【アブソリュート・ゼロ】っ!」
彼女は魔力砲を魔法陣の中に撃ち込んだ。
すると、鎧をつけている兵士たちの上空に無数の魔法陣が出現し、先ほどの魔力砲が雨のように降りそそいだ。
当の本人は目を悲しげに伏せ……