うちの中が一段と賑やかになりました
「なんで、レイラちゃんは男の人の魔力が苦手なの?」
レイラちゃんは、はぁと溜息をこぼすと観念したのか、とつとつと語り出した。
「……アタシが小さい頃に、一度だけ男の人の血を吸ったの。それが、すっごい不味くて……それから、トラウマになって男の人の血は吸えなくなったわ」
へぇー、血に美味しさなんてあるんだ…と、私は少し感心してしまった。私の血ってどんな味なんだろうか。
「それで、なんで男の人の血が吸えないとお家を追い出されちゃうの?」
「……魔族の中にも色々あるのよ。特に、貴族の家計だとね。体面とかも気にしなきゃいけないから……それに、私には私よりも出来のいい妹がいるわ。お父様もお母様も私アタシなんかより、妹を後継にしたいのよ。要は、アタシは要らない子ってことよ」
彼女は、自嘲気味にそう言った。
要らない子だなんておかしい。そう分かっていても、どう伝えればいいか分からない。そんなモヤモヤが、私につきまとう。
「そ、そんな……要らない子だなんて。おかしいよ!」
「おかしいって分かっていても、どうにもならない事が世の中にはあるのよ」
感情的になる私を止めて、師匠は穏やかな調子でレイラちゃんに話しかけた。
「……詳しいことは分からないし知らないけど、少なくとも私は君が要らないとは思わない。むしろ、あなたを必要としている人の方が多いと思うよ」
「あなたに何がわかるのよ!吸血鬼としての価値がないアタシには、生きる必要なんて……生きる価値なんて……ないのよ!」
「あなたが自分の価値に気づいてないなら、私が気づかせてあげる。あなたが生きる理由が分からないなら、私が生きる理由をあげる。だから……死ぬなんてことを、死にたいなんてことを軽々しく口にしないで。それが、守れるのならレイラちゃん、あなたを私の弟子としてうちで拾うよ」
いつものだらけた師匠とは違う、なにか思うところでもあるかのような言い方に驚いてしまう。
(それでも、困っている人を見ると放っておけないところは、いいと思いますよ)
「そんな……べ、別に頼んでないし……それでも、あなたがどうしてもって言うなら……弟子になってあげるわ」
強がってはいたが、その目には涙が浮かんでいた。
「うん、レイラ。君にはどうしても弟子になって欲しいんだ。だから、お願い」
「ふ、ふん!どーしてもって言われたら仕方ないわね……別に、なりたくてなる訳じゃないんだからねっ!」
その目元には、まだ涙が光っていたが彼女の顔には、先程まではなかった自分への自信で少しだけ輝いていてみえた。
こうして、吸血鬼の女の子であるレイラちゃんが加わったことにより、家の中が一段と賑やかになりました。