森の中で誰かに襲われました(物理的に)
私が、箒をもらってから一ヶ月程経ちました。まだ少し操縦に不慣れなこともあり、ふらついてしまいますがそこそこには乗れるようになってきました。
その日も日課の森で薬草を取るということをしています。
「ふぅ……今日もたくさん取れましたね。やっぱり、平和が一番ですね……」
私がそう言った瞬間、視界が反転しなにがなんだかわからないなにかに押し倒されていました。正体不明のなにかは二本の小さい牙で私にかみついて来ようとしてきます。
「えっ!?ちょっ、どいてください!」
私が必死で抵抗すると、割りと簡単に抜け出せた。意外と力はなかったのかな。
「はぁはぁ……ちょっと!いきなり何するの!びっくりしたじゃない!」
私が顔をあげると、そこには闇蝙蝠のような小さい翼の生えた六歳ぐらいの女の子が立っていました。着ている黒と白のモノクロ調のワンピースも、森の中では違和感でしかない。
「ふ、ふん!折角、お姉さんの血を吸ってあげようと思ったのに…いいもん!」
私の血を……?ってことはこの子吸血鬼なのかな?
「ちょ、ちょっと待って!あなた、こんなところで一人なの?あ、もしかして迷子?」
「そ、そんなのじゃないわ!てか、子供扱いするのやめてよ!これでも百年は生きてるんだから!」
吸血鬼ちゃんは私より年上のようです。
「で、お名前は?私はクエル、あなたは?」
「あ、アタシは……レイラ=ネプリス。高貴なるネプリス家の吸血鬼よ」
どうやら、この子は魔界でも有名な血筋らしい。魔界のことはさっぱりわからないけど、アスモデウスさんに聞いたら教えてくれるのだろうか。
「そっか、じゃあレイラちゃんはどうしてここで迷子になってたの?行くとこないなら、うちに来なよ」
「だから、子供扱いしないでってば!それに迷子じゃないもん……ただちょっと散歩してただけ!」
と、涙目でレイラちゃんは言っていた。魔族がこんなところにくるわけないし、十中八九迷子なのだろう。
そう判断した私は、一旦レイラちゃんを家に連れていくことにしました。