75 陥落その2
短くてスミマセン。
常日頃無駄に他者を威圧する巨体が縮こまり、翅も首もだらりと下げてプルプルプルプル―――――――。
己はチワワか?トイプードルか?
「………か……可愛くないっ…!」
思わず叫んだ僕はただの正直者だ。
一昨日のシュシュの「キライよ」発言はライディーンの鋼鉄の心臓をザックリ抉ったようで、それ以来中庭の片隅でずっと泣き崩れているような有り様らしい。
人間だったらシクシクとでも表現するところだろうけど、実際は不気味な唸り声を上げているようにしか聞こえない為、近くを通りかかった隊員達は恐怖に耐えきれずにノッティ経由でシュシュに泣きついたらしい。
僕はつい忘れがちだけど飛天は肉食で、普通の人の感覚としては虎や獅子を放し飼いにしてる檻に放り込まれているような気分なんだろう。
「―――――だからね、ライディーンが空中で僕を吹っ飛ばしたのも悪気があった訳じゃないんだよ」
丁寧に助けようなんて気が更々無かっただけで。
「乱暴でもあの時はあれしか方法が無かったのさ」
もう少しやりようがあったんじゃないかな、とも思わないでもないけど。
一応助けられたのは事実だから?大人の対応くらいしてあげるよ?
―――――只今シュシュを説得中。
「…仲直りしてあげれば?」
「……………」
ぷく、と頬を膨らませたシュシュが僕の背中にしがみついて顔を伏せてしまった。
まだお怒りは解けないご様子。
近くにいる連中がハラハラしながら成り行きを見守る中、当の獣はそれ以上に落ち着かない様子でウロウロとキョドり始めた。
「だって……怖かったんだもん…。スォード死んじゃうかと…思っ………うぇ」
「あー…ほら泣かないの。死んでない、死んでない」
………………ぐるるぅ……。
グスグスと鼻を鳴らしながら泣きべそをかくシュシュに、黒い暴君はいつになく神妙な雰囲気で喉の奥を鳴らし、語りかけてでもいるかのようだ。
るるるる…ぐる。くおぉん。
「…………ほんとに?」
ぐるぅ。
「約束できる?」
ぐぁう!
………………………あれ?マジに会話が成立してたりする?
「じゃあ……仲直りしてあげる」
「シュシュ……、ライディーンは何て…?」
「んと…あのね。『今度から何でも言うこときくし、乱暴なことはもう絶対しない』だって」
服従宣言―――――――!!!!
折れた!折れたよ!孤高の獣がポッキリと!!
小鳥は最強の守護者を手に入れた。




