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74 新婚さん?

ヒクイドリの襲撃で直に被害を被った住民や観光客が一人も出なかったのは幸いだったと思う。


真っ昼間の市街地が襲われた例が過去に一度も無かったとはいえ、「何も備えをしていなかった」なんて今更口が裂けても言えないし。

結果的に飛天の存在が助けになったのは間違いない。

その飛天のがわに「人間」を助けたつもりがこれっぽっちも無いとしても。





大した怪我も負わなかったとはいえ、前人未到の高さから命綱無しの大バンジージャンプを行った僕は、救護室に運び込まれてから丸2日間、老医師に絶対安静を言い渡された。


「何かの弾みでポックリ逝かんとも限らんからの!」


そりゃ、あんたの方だろ。年齢的に。

ただあちこち痛んで動くのも結構辛かったから、休暇代わりにありがたく休ませて貰う事にした。


「スォードどこか痛い?お薬飲む?」


背伸びをして寝台に身を乗り出すようにしながら僕の顔を覗き込むシュシュ。

まだ言葉を喋り慣れてなくてどうしても幼げな口調になるのが、殺人的に可愛い。


「僕は大丈夫。シュシュの方こそ疲れてる筈だよ?ちゃんと部屋に戻って休まないと…」


シュシュは一昨日保護されてからずっと僕の傍から離れたがらず、救護室の隣の寝台ベッドで寝起きしている。

無理に引き離して泣かせると凶悪生物に襲われる可能性が高いため、強く言い聞かせる度胸のある人間はいない。

僕はと言えば。


「……スォード……あたし…邪魔?」


思いっきり涙目で!小動物みたいにプルプルと震えながら悲しそうに!!

―――――――のおおおおおおぉっ!!


「っ…、そうじゃなくて!…………心配なんだ。無理をさせてるんじゃないかと…」


「…そんなことないもん!」


あー…。そういや真珠も言い出したら聞かないところがあったような…。


「ねぇ喉渇いてない?それにもうじきお昼だよ、ごはん食べる?それとも……」


「『アナタぁ、ゴハンにするぅ?お風呂にするぅ?それとも~ア・タ・シぃ?』」


気色の悪い裏声がして救護室の入り口に相棒が姿を見せた。手には二人分の食事が乗ったトレイを持っている。


「いいねぇ、幼な妻!」


「おさなづま…ってなに?」


「小鳥ちゃんみたいな小さな奥さんの事だよ~」


「ノッティ……ろくでもない知識を植え付けるんじゃないよ」


この子に『日本』での知識がどれだけ残っているかは知らないけど、『此方側』の言葉はまだ未知のものが多いはず。


「おくさん……。あたしスォードのおくさん?」


「そうそう」


「――――ノッティ~」


「いいじゃないか、どうせ他の男にやる気なんか無いんだろ?」


それは勿論。

くれという奴がいるならまず僕の屍を越えて行って貰おう。

――――と、そう返したら相棒が妙に呆れた目で「この街にゃもう誰もお前に挑む勇気のある男はいねーよ」と呟いた。


なんでも一昨日の大立ち回りがかなり目立ってしまったらしい。


何しろ明るい陽の下で空を飛んだり墜ちたりと忙しく、おまけに雷の大盤振る舞い。

あの状況でコッソリというのは無理だからしょうがないんだけど。

突然湧いて出たヒクイドリ以上の凶悪生物に目撃者は腰を抜かし、平然とそれに跨がっていた自分は同類認定を受けたもよう。




「その凶悪生物なんだけどさー、そろそろなんとかしてくれないかなぁ。流石に鬱陶し……ゴホゴホ!…哀れになってきたから」


言い直した!

相棒よ……あいつを見る視線が日に日に生暖かくなってないか?


気持ちは解るけども。




































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