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73 最強なのは

「あの高さから落ちて全身打撲で済むとか、スゲーなおい!お前どんだけ超人?」


「………ソウデスネ」


気が付いたら夜で、見慣れた救護室の寝台の上だった。

どうやらあの後、誰かがちゃんと見付けてくれたらしい。

というか真っ昼間にあれだけ派手に暴れれば、嫌でも目に入っただろう。


今回は流石に自分でも一生分の運を使いきった気がする。

あちこち打ち身や木の枝に引っ掻けてこしらえた切り傷が幾つもあるけど、どれも大した怪我じゃない。


「……っ、イタタ…」


身体を起こそうと身動きした際に掛布に重みを感じて横を見ると、すぐ隣に天翅の少女が丸くなって眠っている。


「シュシュ?……なんでこんなとこで寝てるの」


「寝かしといてやりなよー。大丈夫だって、疲れてるだけで小鳥ちゃんは怪我とかしてないからさ。お前にくっついてると安心するみたいだぜ?」


………まぁ、いっか。


「それよか、声!出せるようになったんだな。良かったじゃないか」


「――――会話したのか?」


「やー…、それがさぁ……ププッ」


何故、笑う?

そして笑ってないで、とっとと事の次第を話せ!







~~~~暫くの間 ノッティ視点でお送りします~~~~






エライ事になった。


ヒクイドリが真っ昼間から団体さんで襲撃して来た事もそうだけど、スォードの奴があの馬モドキと手を組んで盛大に大立ち回り始めた事も!


どーすんだ、あれ!!


とか、言ってる間にあの最凶コンビは半数の敵をアッサリ落として、残りの首を狙いに飛んで行く。


そして最悪な事態が。


女性隊員の一人が屋内に『あの子』の姿が無いと言って、真っ青な顔でそこらじゅうを駆けずり回っていた。

もしやと思って空の上を見上げれば、遥か上空で二体の獣が絡みあっている。


…………遠すぎて自分には何がどうなっているのかさっぱり分からない。

とにかくハラハラしながら上を見守っていると。


巨鳥が、墜ちた。


そしてその後を追って飛天も。


―――――――はあああああ?どんな事態だ!!

何がどうなってやがる―――――――っ!!




昼間だったのが幸いして落下地点を予測するのはそう難しくなかった。

おまけに住民の目撃証言も多く、第13区にある緑地付近に墜ちたらしいと通報を受けて、地上待機組はすぐさま飛び出した。


「――――通報にあったのはこの辺りの筈だ。手分けして探すぞ!」


「…………なぁ、何か聞こえないか?」


「ああ…子供の泣き声みたいな……」


「何―――…」



万に一つも生きてるとは思えなかった。

あの高さから墜ちれば下手をしたら原形を留めていないかもしれない、そんな最悪の想像をその声が打ち消した。


「うわぁ――――ん…死んじゃやだよぅ、スォード」


「―――――小鳥ちゃん!?二人とも無事なのか!?」


泣き声を頼りに探して辿り着いた光景に、全員安堵の溜め息を漏らしたのは言うまでもない。

………なんか生きてるっぽい。

本人気絶(?)してるけど。

ヒクイドリの身体を丁度下敷きにして横たわるその姿に、深刻な怪我や出血の跡は見えない。


死んでないよな?


救護班の人間が様子をたところ特に頭部を強打した痕跡も無く単なる脳震盪では、という見立てに自分は心底ほっとした。


一方の小鳥ちゃんはどうやら言葉が話せるようになったようなんどけど……えっと……この状況は何かな……?








「うわぁぁん、ライのばか!スォード助けてって言ったのに―――!なんでお空で投げ飛ばすのぉぉっ。ばかばかキライよ!」


見るからに非力で小さな少女が凶悪生物を相手に泣きながらポカポカと拳を振るっている。

普通に考えれば蚊に刺された程のダメージも与えられないはずなんだけど。


その柔かくて華奢な手でペシペシと叩かれている猛獣は―――――この世の終わりのような表情で、生まれたての子ヤギのようにプルプルと大きな身体を震わせていた……………。

























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