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7 刷り込み効果?

暫くの間少女と一対一で接して、気が付いた。


微妙に言葉が通じていない。


さっきは声を挙げて泣いていたから、喋れないわけじゃないと思う。

だけど、問いかけに対して返る反応がいまいちだし、何より少女が自分から言葉を口にしようとしていない。


………てことは。


「言葉が解らない……大陸公用語の使われてない地域からさらわれて来た…とか?」





子供部屋から少女を抱いて出ると、女性隊員達が目を丸くしてわらわらと何人も近寄って来た。


「まぁ、良かった!やっと顔が見れたわね。体調はどう?お腹空いてない?」


「んま!物凄い美人ちゃんよ」


「流石ね~スォード。女の子の扱い方で貴方の右に出る者はいないわぁ」


「………人のこと遊び人みたいに言わないでくれるニキータ。単に妹二人で女の子の相手に慣れてるだけだし」


職業柄たとえ女性でも荒事に従事する機会が多い彼女達は、皆気っ風の良い姉御肌――――つまりかなり明け透けな性格の女性ひとが多い。

僕は嫌いじゃないけど。


ただしやっと緊張が溶け始めたばかりの少女にはちょっとばかし迫力が有りすぎるのも確かで。


再びプルプルと震えて僕の首にしがみつく少女の姿に一同は慌てて後退り、


「15番隊の詰所には連絡入れとくから、もう暫くその子に着いててあげて!」


と言い捨てて、他の仕事に逃げて行った。

この手強い少女は彼女達をかなり苦労させたらしい。


可愛いのに。もしかして物凄い強者ツワモノ


「まぁ、心配されてたとはいえ、大勢で解んない言葉をまくし立てられても困るよね。でも皆いい人だから……って言っても通じないか」


安心させるつもりでなるべくゆっくりとした口調で話しかけてみる。

首にかじりついたままで密着した身体からはバクバクと激しい鼓動が伝わって、未だに強い緊張を強いられている少女の恐れが手に取るように分かる。


まずはリラックス、かな。






朝食の時間からかなり遅れたため食堂は既にほぼ無人で、年配の賄い婦が二人厨房の奥で片付けものをしているだけの状態だった。


それも人目を気にせずにいられるぶんかえって都合が良い。


「はい、どうぞ」


目の前にコトリと置かれた湯気の立つ深皿に少女は不思議そうな表情を浮かべる。

深皿の中身はミルク味のパン粥。

わりと一般的ポピュラーな栄養食で消化の良さを考慮したメニューなんだけど。


「あー…、もしかして食べた事無かった?」


キョトンとした表情で器をじっと見てはいるけどなかなか手を出そうとはしない。

そのうちお腹の方がきゅるる、と鳴って催促を始めると、なんだかもじもじと上目遣いにこちらの様子を気にしている。


「…………………」


「どうぞ?」


「…………………」


…………………駄目か。じゃあこれなら?


粥を掬った匙を少女の口許まで差し出してみると、少し躊躇ためらってから小さな口をそっと開いてパクリと口に含む。

細い喉元がコクリと動いて嚥下した後、分かりやすく目が輝いた。

美味しかったんだ。


「気に入った?蜂蜜が入ってるから甘いしね。沢山食べて元気になりな」


……………あれ?何やら期待の眼差し。


よしよし、ならば応えてあげよう。


昔妹達が小さかった頃、風邪を引いて寝込むたびよくこうして食事を摂らせたっけ。

あー、なんか和む。









《女性隊員は見た!》


***多数視点でお送りします***


「アタシはやっぱり顔だと思うの!たとえちっちゃくても女の子なら綺麗な顔の男は嫌いじゃないと思う!」


「あたしは声が効果有りだと思う~。だってホラ、あたしたちがいくら粘っても毛布から出て来なかったのにねー」


「……スォードって女の子の扱い方上手いのよねぇ」


「男には容赦ないけどねー」


「でもホラ、なんてゆうか女好きな男に特有の媚びがないからつい皆気を許しちゃうっていうかー」


「あー、分かる分かるぅ」


「首から上を見てたら同性なかまよね!」


「……ちょっ…そこの新人達、彼の容姿のことで騒ぎ過ぎるのは禁物だからね!」


「そーなんですかー?」


「ああ見えてスォードは武闘派なのよ。警備隊に入隊したての頃、彼の見た目で舐めてかかった男共全員素手でフルボッコにして仕上げとばかりに鞭でシメてたわ」


「………あのクールビューティーのお顔で……鞭…」


「に……似合い過ぎるっ」

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