58 想い
真珠視点です。
「あたしの将来の夢は蘇芳ちゃんの嫁!」
そう言うと彼女はいつも困ったように笑い、「私が男だったらね」と口にした。
でもあたしはそんなのどっちだってかまいやしなかった。
蘇芳ちゃんが男性だったら速攻で恋人に立候補しただろうし、同性にしたって一生ものの親友の位置は他の人には絶対譲れない。
あたしが、蘇芳ちゃんの一番でいたかったんだ。
物凄い我儘だって分かってる。
いつだって世話を焼せてばっかりで、蘇芳ちゃんが周りの大人に叱られるのは大抵あたしのせい。
彼女が甘やかしてくれるのを良いことにベッタリまとわりついていたら、女子の嫉妬が混じった嫌がらせが激増したのは内緒。
蘇芳ちゃん激鈍だから。
自分がどれだけ女子に人気があったかなんて気付いてなかったと思う。
あたしの事「可愛い、可愛い」って猫可愛がりして、特別扱いしてくれるのは彼女くらい。
喜怒哀楽が乏しい上に素直じゃないからいつも不機嫌そうな顔で、おまけに焼きもちやき。
蘇芳ちゃんに近付く人は皆キライ。
あたしには蘇芳ちゃんしかいないのに!
こんな醜い独占欲の塊みたいな自分が一番キライ。
もっと素直で可愛い自分になりたい…。
――――蘇芳ちゃんの『一番』になれるくらい。
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トテトテ、トテトテ。
黒鉄の翼に挟まれた背中の上は思いの外居心地が良い。
自分を背に乗せた獣が極力身体を揺らさぬように気を付けてくれているのがよく分かる。
外見の獰猛さからはかけ離れた細やかな気配りに、ちょっと気分がほっこりする。
昨夜久し振りに見た夢を思い返しながら、色んな事を考える。
『彼』に保護されるまでの記憶が曖昧なのに比べて、夢の内容が妙に鮮明なのはどうしてなのか。
しかも独りよがりの願望の顕れだと思っていたそれに、『彼』と共有する部分があると判った時の驚き。
“言葉”
それまで周りの人間が話す言葉は殆ど理解出来ていなかった。
自分に向けられる態度や表情から何となく意味を察していただけ。
それがあの日。
『シュシュ………君は誰………?』
あたしはその答えを持っていなかった。
夢の中のあたしは『あたし』じゃない。
だけど。
夢の中の『彼女』と同じ顔、同じ姿の『彼』があたしを混乱させる。
記憶よりもやや低いその声がその名を呼ぶ度に、あたしは惑う。
――――真珠――――
同じ音色で紡がれる名前。
………どうして貴方がその名前をあたしにくれるの?
どうして。
でも、もうそんな事どうでも良いくらいあたしは、いつの間にか『彼』が好きになってた。
離れたくないよ。
お願いだから『彼女』みたいに突然いなくならないで。
スォード。




