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43 僕の機嫌が悪い理由 ②

この世で何が嫌いと訊かれれば、『私』は迷わず『下半身が最優先のオス』と答えるだろう。


真珠が中学校に上がる頃になると、あの子の周りに群がる男の数が目に見えて増えた。

同年代の少年こどもだけでなく、いい年齢をした大人までがセーラー服姿の真珠にチラチラと熱のこもった視線を向けるのは、見ていて気持ちの良いものじゃなかった。


しかも女子の妬みからくる苛めや嫌がらせも年々エスカレートしていて、正面切って太刀打ちすることの出来ない陰口や中傷という形で真珠を苦しめた。


中でも真珠が片親である事を邪推して、『妾の子』『親の不倫で生まれた子供』などと捏造した噂を流され、あの子は酷く傷付いてすっかり内向的になり、人前で滅多に笑わなくなった。


ある日の学校帰り。


その日は偶々『私』の部活動の時間が伸びたせいで、あの子は一人で先に校舎を出た。

着替える手間も惜しんでジャージ姿のまま急いで後を追えば、あろうことか人気の無い路地で真珠が男に車に引きずり込まれかけている。


『私』が全力で阻止したのは無論の事、男に問答無用で鉄拳制裁を加えたのは言うまでも無い。

取り敢えず顔の形が変わるまで殴って、急所を蹴り上げてから110に通報した。

駆け付けた警察官には「坊主やり過ぎ」と注意されたけど、知ったこっちゃ無い。


私が間に合わなかった場合の事を考えると、身震いが走る。


当然その後事情聴取として警察に連れて行かれ、やけにデカイ男子中学生だと思っていた『私』が女子だと知った担当の警察官は、カパッと顎を落とした。



後々真珠を拐おうとした男が痴漢行為の常習犯だったと教えられた時、『私』は何故あのときツブしておかなかったのかと激しく後悔した。





*********************





僕は今猛烈に気分が悪い。


昨晩は通常の見廻りに加えて何度も緊急の通報があり、詰所と市街地を何往復も駆けずり回る羽目になった。

それはまだいい。

どれ程忙しかろうと、それが警備隊員の仕事だ。


不愉快なのは例のあの男―――――。


朝方牢の中で目を覚ますなり、自分の名や身分を声高に告げて家人を呼べと叫び、「お前ら俺にこんな扱いをしてタダで済むと思ってるのか」とお決まりの台詞を投下。

自分の行いをこれっぽちも反省している様子が見られない。


一応貴族の身分であるらしいから、キッチリ取り調べを済ませた上で騎士に引き渡され、最終的な処分は南領公直轄の機関が下す事になる。

貴族を裁くのは貴族、ということだ。


だけどあの絵に描いたようなドラ息子の余裕ぶった態度から察するに、恐らくこれまでにもトラブルを起こす度、賄賂や保釈金で処分を免れ続けてきたに違いない。


無茶苦茶、腹立つ。









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