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19 思い立ったが凶日

「困ったわねぇ……。あ、ちょっとスォード!」


僕が老医師の診療所を訪ねた翌日、警備隊の建物内の廊下でハナを含む数名の女性隊員に呼び止められた。


「おはよう。皆どうしたんだい?妙に深刻な顔してるけど」


「それがねぇ…」


「あたし達これから任務が立て込んでて、皆暫く寮へ帰れそうにないの。シュシュがいるのに寮を無人にはしたくないし……どうしようかと」


「全員?13・14番隊のニコやヘザーも?」


「他所の支部の応援に呼ばれてるのよ」


たまにこういう事がある。

女性柄みの事故や事件で男が使えない場合、彼女達の出番になるわけだけど、警備隊全体で見ても女性隊員の数は一割そこそこ。

お互い必要に迫られれば他所の支部の要請にも答えなければならない。


「悪いんだけどスォード、こまめにシュシュの様子を見てくれる?大分落ち着いて過ごせるようになったけど……心配だし」


「――――――――…わかった」


「…じゃあ、お願い…?」


「いい機会だから普段休日返上で働かされてる分、休み取る。そっちは何日位で戻れる?」


「えっ…少なくとも3日は女子寮を空ける事になると思うわ。ただ、仕事とは別に家の事情で休みを取ってる子がいるの。その子さえ戻れば問題ないから…」


「――――了解」


即断即決。


今まで彼女達に頼りきりだったしね。


いつも顔を合わせて別れる時に、泣くのを我慢して上目遣いで見上げてくるシュシュに、ものっっっ凄い後ろ髪を引かれてたんだ。


だから、そのうちに休みが取れたら思う存分甘やかして、一日中傍にいてあげようって決めてた。

今休まずして、いつ休む!







「というわけで、休み下さい隊長」


「…………む」


「日頃血も涙もない副長にコキ使われてる可哀想な部下を、たまにねぎらったってバチは当たりませんよ。3日ほど休みます」


「……………むぅ……」


こういう事は勢いが肝心だ。

相手に反論するヒマを与えてはいけない。隊長は顔は恐ろしいけどあんまり饒舌な方でもないから、責めの一択で!


「じゃあ、休暇届けは出しておくので。明日からでお願いします」


「……んむ…」


よーし、押し切った!


と、内心皆済を叫んだ瞬間。


「待ちやがれ小僧!」


隊長執務室の扉がバンと乱暴に蹴り開けられたと思ったら、そこにはニヤニヤと獰猛な笑みを浮かべたヴォルグ副長が愛用の大剣を手に、何故か仁王立ちで此方をねめつけている。


「手前ぇのその要求は却下だ。だがどうしてもと言うならこの俺を倒してから行くんだな!」


「……………………………………………」


またおかしな事を言い出したぞこの中年。




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