20 嵐の前の
「俺と打ち合いをして勝てたら休みをくれてやる」
「はぁ………」
朝っぱらからナニ面倒臭い事を言い出してんだ。
しかも早々得物を持参してるあたり、ヤル気満々じゃないか。
「嫌ですよ。それになんだってイチイチ副長が部下の休みに口出ししてんですか。自分は常日頃花街に入り浸りで任務フケまくってるくせに」
「俺のあれは世情調査だ」
何の調査だ。
「…………とにかく、毎回どっちかが死にかける手合わせなんて御免です。死んだら休めないじゃないですか」
永久に休めるとも言うが。
この副長以前は名の知れた闘剣士だとかで、勝負事や力の上下関係に自分なりの拘りがあるらしい。
僕が警備隊に入隊した当初から幾度となく仕掛けてきて、毎回それなりに互角に渡り合ってるせいか目をつけられ、度々しつこく勝負を挑まれ続けるという憂き目に合わされている。
「―――――――そうだなぁ、今回俺に勝てたら今後一切お前に絡まんと約束してやってもいい」
……この男のこんな口約束がアテにならない事は百も承知だけど、乗せられた振りで話を進めてみる。
「―――――私闘は禁止事項ですよ。ただし副長が“稽古”をつけてくれると言うのなら受けましょう」
獰猛な獣がニヤリと笑った。
そんな成り行きで裏庭の運動場に移動すると、何処から聞き付けたのかチラホラと物好きなギャラリーが集まってきて、朝の爽やかな空気は一変して最早闘技場の趣を醸し出しつつあった。
「久々じゃね?お前どっちに賭けるよ」
「俺はやっぱ副長かな」
「んじゃ、オレはスォードに銀1枚」
数歩の距離を開けて運動場の中央で向かい合う。
「誰か模擬刀二振り用意してくれないか」
「いらん。俺はいつものヤツでいく。手前ぇもソレを抜け」
言うと思った。
この戦闘狂が刃を潰した模擬刀なんかで満足するはずがない。
でもだからって僕は諸事情により簡単に自分の剣を抜くわけにもいかないんだよね。
「じゃあ、僕の分だけ模擬刀で」
「駄目だ」
「…………周囲に被害が出ても知りませんよ?最近ガス抜きしてないから、押さえきれない場合が困るんですけど」
「手前ぇはいっつもどっか余力を残して俺の相手をしてやがる。―――――面白くねえ。たまには全開で来てみやがれ!」
あー、なんかかなり頭に血が昇り始めてるぞ。
どんだけ欲求不満なんだ。
大人しく闘剣士やってりゃ好き勝手暴れられてよかっただろうに。
何で警備隊に来たんだ?
――――――――まぁ、それはともかく。
「……ギャラリーは各々自分の身は自分で守るように。後から苦情は受け付けないよ」
ノッティが僕の本気を感じ取ったのか、いち早く後ろの壁際まで下がる。
だてに3年も組んでるわけじゃないか。
余程この剣の癖の悪さには懲りてるんだろう。
「――――――じゃあ、遠慮無く行くけど」
さあ、踊れ。




