16 密やかな願い
『――――――お前のせいなんじゃないか?』
『お前がそうやって真珠に近付く男を全部追い払ってるから、あの子が異性に目を向ける機会を奪ってるんだ』
『将来あいつが嫁に行き遅れたら手前ぇのせいだ』
五月蝿い兄貴共。
真珠に関してはお前らも同罪だ。
お互い家を行き来する幼馴染みだけに、兄貴達が『私』以上にあの子を可愛がってるのなんか、お見通しだ。
実の妹には向けた事も無いような甘ったるい顔で、 猫可愛がりしてやがるくせに。
あの子の為、みたいな口調で説教してきたって本音はバレバレだテメーら!
自分等が真珠に見向きもされないからって『私』に八つ当たりすんな!!
………………でも、我ながらこの執着はどうかと思う。
あの子の見た目の可愛さだけに引かれてフラフラと寄ってくる男を見るたび、言い様の無い嫌悪感に襲われてつい撃退してしまう。
あいつらのなめ回すような無遠慮な視線が、例えようもなく不快で耐えられない。
真珠の事は好きだけど、だからってこれが恋愛感情だとも思わない。
一応『私』にだって淡い初恋らしき体験くらいはある。
ただ、真珠にはいつも笑ってて欲しかったんだ。
辛さも苦しさも無縁なところで。
いっそ『私』が本当に男だったら、ちゃんとした恋愛をして一生真珠を守ってあげられたのに。
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…………思い出したらなんだかしょっぱい気分になってきた。
本当にただの夢かアレ。
色々設定細かすぎなんじゃないか?
ふぅ、と溜め息をついたら、大人しく腕に抱かれていたシュシュが僕の顔を心配そうにジッと覗き込んで、何を思ったのか小さな手で僕の頭を撫で始めた。
「はは…、もしかして慰めてくれてる?」
そんなに分かりやすく気分を顔に出しちゃってたかな?
「ありがとシュシュ。なんでもないよ」
出来ることなら、君が幸せになる姿をきちんと見届けられますように。
今度こそ。




