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14 夢か現か

「あたし男の子きらい」


それはあの子が小さい頃の口癖。


「だっていつも追っかけてきてイジワルするんだよ。やめてっていってもかみのけひっぱったりするし」


まぁ、お約束だよね。理由は分かるけど。

好きな子の気を引きたいばっかりに、妙なちょっかいをかけて嫌われるとか残念な男子達。

5、6歳の幼児ならともかく、十代半ばになってもそういう手合いが多いのにはホトホト呆れた。


だからあの子はいつまで経っても男嫌いで、「将来は蘇芳ちゃんの嫁になる!」と公言して憚らなかった。


その頃になると2歳の歳の差を差し引いても、小柄なあの子と『私』は20センチ以上の身長差があり、加えて空手や古武術で鍛えまくった『私』は成人男子とほぼ変わらない体格に育ってて、二人で並ぶと何処からどう見ても彼氏彼女にしか見えなかったらしい。


でもまぁ、他人からそう言われるのも嫌じゃないくらいには『私』はあの子が好きだった。


『私』がなりたかった小さくて可愛らしい女の子。

ふわふわ頼りなくて泣き虫でいつも『私』の後を追いかけて来た。




大人になってもきっと、ずっと友達でいられると思ってた……………。







*******************




まだ朝霧が立ち込める早朝。


都市警備隊の詰所は交代制で常に人員が待機しているため、そこが無人になることは殆ど無い。


とはいえ、この時間帯は一日のうちで最も穏やかで、事故トラブルや面倒な案件が持ち込まれる事も少なく、当直の隊員も交代の時間が近いため、ほっと気を緩める瞬間だ。


詰所裏にある運動場にもまだ誰の人影も無い。


どちらかと言うとそれを狙って来たんだから、むしろ好都合。

気を調える為に身体を動かすなら一人の方がやり易い。


『ゆっくり深呼吸を繰り返して、深く腰を落とす。

足は地面から離さず滑らせて移動。

腕は―――――――――――』


わりと動けるもんだよね。

夢の中の記憶を頼りにしてるだけなんだけど。


細かい部分はボンヤリしてて思い出せないところもあるけど、もう何年も続けていれば、自己流の型が出来上がる。


『私』の生家いえがナントカいう武術の道場で、幼い頃から身体を動かす事に慣れ親しんでいたらしい。

そしてそれを『僕』が再現出来る程度には、何度も繰り返し夢に見てきた。


流れるような静かな動作から、薙ぎ払う、蹴りあげる、といった徐々に激しい動きが加わり、一通りの演武が終ると身体の隅々まで目覚めたような爽快感があって、朝のウォーミングアップには丁度良い。




ふっ、と息を吐き出して呼吸を整えたところで、少し離れた場所からパンパンと手を叩く音が聞こえて振り返った。


「おー、何度見てもスゲー動きだなぁ。何てゆーか…こう、水が流れるような感じ?」


「ノッティにしてはまともな感想有り難う。――――もう交代の時間かい?」


「まだ少し早いけどチラホラ日勤の連中が出勤してきてる。さっさと引き継ぎ済ませて休もうぜ~」


昨夜の夜勤は珍しく何事も無く、いつも通りの持ち場を巡回するだけに留まった。

毎回こうだと楽なんだけど。


「―――――――で、今日なんだろ?」


「……ああ、うん。昼間連れて来るよ。一応きちんと筋は通さないとね」



警備隊に保護してから約半月。

今日はシュシュが15番隊の面子と初の顔合わせをする。









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