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過去と未来を繋ぐ者達へ  作者: 卵飯好男
【獣王国ディアナ編】第3章 四人目

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第69話 メモリア

 大通りを歩く。


 夕暮れだった空は、少しずつ夜の色へ変わり始めていた。


 軒先に吊るされた提灯には一つ、また一つと火が入り始めている。


 赤。


 橙。


 白。


 昼間とは違う光が、木造の街並みを照らしていく。


 綺麗だ。


 たぶん普段なら、もっとゆっくり見ていた。


 でも今は。


「……眠い」


「さっきも言ってた」


「眠いもんは眠いんだよ」


 身体が重い。


 脚を前に出すたび、今すぐどこかに横になりたいという欲求が強くなっていく。


 徹夜。


 戦闘。


 そのまま王都まで歩いてきた。


 さすがに限界が近い。


 隣を歩くセレーネも、いつも以上に口数が少なかった。


 シウンだけは相変わらず元気そうで、明かり始めた提灯や通りの店を眺めている。


「朝陽。あれはなんだ?」


「ん……?」


 指差された方を見る。


 店先に大きな樽が並んでいた。


「酒屋じゃない?」


「寄ってみるか?」


「宿」


「見るだけだ」


「宿」


「……分かった」


 しょんぼりするな。


 龍族って徹夜くらいじゃ疲れないのか。


 案内書を開きながら歩く。


 この先にも何軒か宿があるらしい。


 祭り前で混み始めているなら、あまり選り好みはしない方がいい。


 風呂があって。


 飯が食えて。


 寝られる。


 今日はそれで十分だ。


「……ん?」


 そこで。


 俺は足を止めた。


「どうした?」


「いや……」


 振り返る。


 少し歩いてきた大通りの向こう。


 人混みに隠れかけているけど、まだ見える。


 さっき通り過ぎた大きな建物。


 冒険者ギルド。


「…………」


 明日でいい。


 そう決めた。


 パーティー登録も明日。


 名前も、それまでに考える。


 それで話は終わったはずだった。


 でも。


「……あ」


 もう一つある。


「なに?」


 セレーネが俺を見る。


「二人って、そもそも冒険者登録してないよな」


 セレーネが瞬きをした。


 シウンもこちらを見る。


「わたしは冒険者ではないぞ」


「だよな」


 シウンは龍族の里を出てきたばかり。


 冒険者であるはずがない。


 セレーネだって同じだ。


 今までは俺が依頼を受けて、二人が同行する形でもどうにかなった。


 でもこれから三人で旅を続ける。


 さっき話したパーティー登録だけじゃない。


 二人の冒険者登録もしておいた方がいい。


「……戻る?」


 セレーネが聞く。


「いや、明日でいいって言ったばっかなんだけどさ」


 もう一度ギルドを見る。


 それから案内書。


 宿。


 ギルド。


 宿。


「どうせ明日、二人の登録して、パーティー登録して……ってやるなら、今まとめて済ませた方が楽じゃない?」


「宿は?」


「ついでに受付で聞く」


 祭り前なら、その方が確実かもしれない。


 冒険者相手の宿ならギルドの方が詳しいだろう。


「登録だけ済ませて、宿聞いて、そのまま寝る。それならそんな時間かからないだろ」


「わたしは構わない」


 セレーネが言う。


 シウンも頷いた。


「わたしもよいぞ」


「じゃ、戻るか」


 数分前。


 今日はやめようと三人で通り過ぎたばかりの道を。


 俺たちは引き返した。


     ◇


 扉を開ける。


 途端。


「――だから先に俺が取ったっつってんだろ!」


「知るか! 受付通してねえなら早い者勝ちだ!」


「酒追加ぁ!」


「おい! 誰だ俺の串食った奴!」


「東の街道で護衛三人! 明朝出発だ!」


「それ昨日から残ってる依頼だぞ!」


 うるさ。


 一歩入ったところで思わず止まった。


 外まで声は聞こえていた。


 でも中は想像以上だった。


 広い。


 正面にはいくつもの受付。


 片側の壁には大量の依頼札。


 反対側には酒場が併設されている。


 その間を大勢の冒険者が行き交っていた。


 犬の耳。


 猫の耳。


 角。


 尻尾。


 大柄な熊みたいな男が酒を飲み、その横では小柄な兎系の女性が依頼札を眺めている。


 人間もちらほらいるけど、圧倒的に獣人が多い。


「……すげえな」


 ルイのギルドも人は多かった。


 でも雰囲気が違う。


 こっちはもっと雑多だ。


 酒場とギルドの境目が曖昧というか。


 依頼の話をしていたはずなのに、そのまま酒盛りになっている連中までいる。


「朝陽」


「ん?」


「止まってる」


「ああ、ごめん」


 セレーネに促されて歩き出す。


 シウンは俺以上に忙しそうだった。


 右を見る。


 左を見る。


 依頼札を見る。


 酒場を見る。


「随分と賑やかな場所なのだな」


「冒険者ギルドってこんなもん……だと思う」


「思う?」


「俺もバルカンしか知らないから」


「なるほど」


 シウンが頷く。


 その直後。


「おお、あれは何をしている?」


「シウン」


「なんだ?」


「今日は見学じゃないぞ」


「分かっている」


 絶対分かってない。


 視線の先では、何人かの冒険者が大きな依頼札を囲んで話し込んでいた。


 気になるのは分かるけど。


 今日は駄目だ。


 本当に寝たい。


 空いている受付を探す。


「あそこ」


 セレーネが指差した。


「お、空いた」


 三人で向かう。


「いらっしゃいませ」


 受付にいた獣人の女性が俺たちを見る。


「本日はどうされました?」


「あー……二人の冒険者登録と」


 セレーネとシウンを見る。


「三人でパーティー登録したいんですけど」


「新規登録がお二人ですね。承知しました」


 俺の冒険者証も一緒に渡す。


 そこからしばらく。


 説明。


 記入。


 確認。


 また説明。


 思ったよりあるな。


 俺の時もこんなだったっけ。


 眠い頭でぼんやり待ちながら、二人の様子を見る。


 セレーネはいつも通りだった。


「こちらの規則について――」


「分かった」


「依頼を受注される際には――」


「うん」


「何かご質問はございますか?」


「ない」


 早い。


 受付の人が少しだけ困っている。


 一方。


「依頼には階級があるのだな?」


「はい。冒険者のランクに応じて受注できる依頼が――」


「魔物を討伐した場合、素材はどうなる?」


「基本的には冒険者の所有になります。ただし討伐証明として指定部位の提出が――」


「では――」


「シウン」


 呼ぶ。


「なんだ?」


「今日全部覚えなくていいから」


「だが、知らないままでは困るだろう」


「それはそうなんだけど」


 正しい。


 正しいんだけど。


 眠い。


「必要になったら俺も教えるから」


「朝陽」


 セレーネがこちらを見る。


「なに?」


「ちゃんと教えられる?」


「……たぶん」


「不安」


「俺、一応先輩だからな?」


 冒険者歴だけなら。


 シウンが少し考える。


「では、朝陽に聞くとしよう」


「任せろ」


「不安」


「セレーネうるさい」


 受付の人が笑っていた。


 恥ずかしい。


 それでも手続きは進み。


 やがて。


「はい。以上でお二人の冒険者登録は完了です」


 二人の前に、それぞれ冒険者証が置かれた。


 シウンが手に取る。


 表。


 裏。


 もう一度表。


「これが冒険者証か」


「なくすなよ」


「分かっている」


「セレーネも」


「なくさない」


「ならいいけど」


 二人ともこれで冒険者。


 そして。


「続いてパーティー登録ですね」


「お願いします」


 三人分の冒険者証が受付に並べられる。


 その瞬間。


 思い出した。


 あ。


 名前。


 考えるの俺だった。


「では、パーティー名をお願いします」


「……ちょっと待ってください」


 やっぱり来た。


 横を見る。


 セレーネ。


 シウン。


 二人とも俺を見ている。


「その顔やめろよ」


「考えた?」


「……今考えてる」


「さっきから時間はあったぞ?」


「シウンまで」


 考えてなかったわけじゃない。


 ギルドへ戻る途中も少し考えた。


 でも。


 難しい。


 三人の名前を適当に組み合わせるのも変だし。


 龍がどうとか。


 神がどうとか。


 そういう大仰なのも嫌だ。


 この先、人前で自分から名乗ることになるんだぞ。


 恥ずかしい名前だけは絶対に避けたい。


「……名前か」


 呟く。


 ここまで。


 色んなことがあった。


 日本。


 この世界。


 アルカ遺跡。


 バルカン。


 セレーネ。


 勇者のみんな。


 ユノハナ。


 シウン。


 旅を始めてから、まだそれほど長い時間が経ったわけじゃない。


 それでも。


 もう随分遠くまで来た気がする。


 俺の中には。


 ここまで見てきたものが、少しずつ積み重なっている。


「……メモリア」


 口に出した。


「メモリア?」


 シウンが聞き返す。


「ああ」


 響きだけなら悪くない。


「《メモリア》」


 もう一度。


 今度は少しはっきり言ってみる。


「どう?」


「どういう意味だ?」


「記憶、とか……そういう意味だったと思う」


「記憶」


「うん。別に大した理由じゃないけど」


 なんとなく。


 今の俺たちには合っている気がした。


 旅をする。


 知らないものを見る。


 知らない人に会う。


 それが少しずつ残っていく。


 その程度。


「セレーネは?」


「いいと思う」


 即答だった。


「お」


「なに?」


「いや。もっと『なんでもいい』とか言うかと思った」


「じゃあなんでもいい」


「今のなし!」


 シウンが小さく笑う。


「わたしも気に入った」


「ほんと?」


「ああ。悪くない名だ」


 なら。


 決まりだ。


 受付へ向き直る。


「《メモリア》でお願いします」


「承知しました」


 受付の女性が書類へ記入していく。


 たったそれだけ。


 何かが起きるわけでもない。


 光るわけでも。


 音が鳴るわけでもない。


 しばらくして。


「お待たせしました」


 書類が閉じられる。


「パーティー《メモリア》。登録完了です」


「ありがとうございます」


 終わった。


「……メモリア」


 シウンがまた口にする。


「気に入ってるじゃん」


「よい名だと言っただろう」


「そうだけど」


 少しだけ。


 嬉しい。


 三人で旅をしている。


 それは今までも同じだった。


 でも今日。


 そこに名前がついた。


 《メモリア》。


「さて」


 満足した。


 あとは。


「宿」


 セレーネ。


「分かってるよ」


 むしろ今はそれしか考えてない。


 受付の女性へ尋ねる。


「すみません。もう一個いいですか?」


「はい」


「この辺で三人で泊まれる宿ってあります? できれば安めで」


「大祭をご覧になる予定ですか?」


「はい。そのつもりです」


「でしたら、少しお急ぎになった方がいいですね」


「やっぱり?」


「毎年この時期は混みますから」


 何軒か候補を教えてもらう。


 場所。


 値段。


 食事。


 風呂。


 案内書に載っていたところもあれば、知らないところもあった。


「ありがとうございます」


 これで本当に終わり。


 ようやく寝られる。


「じゃあ行こ――」


「朝陽」


 セレーネが呼ぶ。


「ん?」


「飲み物」


「……今?」


「喉渇いた」


 見る。


 酒場。


「宿まで我慢できない?」


「できる」


「じゃあ――」


「飲みたい」


「できるんじゃないの?」


「できるけど飲みたい」


 そういうことか。


「わたしも少し興味がある」


 シウンまで酒場を見る。


「酒?」


「ああ」


「駄目」


「なぜだ?」


「お前絶対長くなるだろ」


「一杯だけだ」


「その言葉信用できないんだよ」


「失礼だな」


 でも。


 二人が何か飲んでいる間に、もう少し宿の場所を聞いておくのもありか。


「分かった。俺もうちょい宿の場所聞いとくから、二人でなんか飲んできて」


「朝陽は?」


「いい。眠い」


「そうか」


「先に行ってる」


 セレーネとシウンが酒場へ向かう。


 俺は一人、受付近くへ残った。


 教えてもらった宿を案内書と見比べる。


 近いのは。


 こっち。


 安いのは――。


「へへっ」


「……ん?」


 声。


 顔を上げる。


 誰もいない。


「こっちですわ、旦那」


「え?」


 下。


 視線を落とす。


「…………」


 いた。


 小さい。


 俺の腰よりは高い。


 でも、かなり小柄だ。


 丸い耳。


 細い尻尾。


 獣人。


 年齢は分からない。


 薄汚れた服。


 大きめの鞄。


 そして。


 笑顔。


 ものすごく。


 胡散臭い笑顔。


「……俺?」


「へへっ。他に誰がいるんです?」


 男が両手を擦り合わせる。


「旦那、カグラは初めてで?」


「……そうだけど」


「やっぱり!」


「何が?」


「分かるんですわ。オイラくらい長くここで商売してますとね」


 商売。


 その言葉で警戒する。


「何売ってんの?」


「情報」


 即答。


「……怪しい」


「ひでぇ!」


 男が胸を押さえた。


「まだ何もしてませんぜ!」


「初対面で情報売ってるって言われたら警戒するだろ」


「そりゃまあ、そうですけど」


 認めるのかよ。


「で」


 男の目が俺の手元へ向く。


 案内書。


 それから受付。


「宿をお探しで?」


「……なんで分かった?」


「そりゃ旦那」


 にやり。


「大祭前のこの時間。旅装の若い兄ちゃんが宿の案内見ながら受付うろうろしてりゃ、嫌でも分かりますわ」


「ああ……」


 確かに。


「ギルドで紹介された宿ですかい?」


「そうだけど」


「悪くはありませんぜ」


「ならいいじゃん」


「ただし」


 男が指を立てる。


「高い」


「……」


「大祭前ですからねぇ。客が来ると分かってる宿は強気ですわ」


 それは。


 ちょっと気になる。


「もっと安いとこあるの?」


「ありますとも」


「汚くない?」


「綺麗」


「遠くない?」


「近い」


「飯は?」


「うまい」


「風呂」


「あります」


「……怪しい」


「なんでです!?」


「条件良すぎるだろ」


「へへっ」


 笑った。


 やっぱり怪しい。


「もちろんタダで教えるとは言いませんぜ」


「ほら」


「商売ですから!」


 そこだけ妙に堂々としている。


「オイラに案内料を払っても、ギルドで紹介された宿より安く済む。しかも場所もいい」


「ほんとかよ」


「見てから決めりゃいいんです」


 男はあっさり言った。


「気に入らなきゃ泊まらなくていい。オイラは案内料だけ頂く。それで終わり」


「案内料は取るんだな」


「オイラも飯食わなきゃ死んじまいますからね」


 まあ。


 それはそうだ。


「宿だけじゃありませんぜ?」


 男がさらに近づいてくる。


「飯屋。酒場。市場。芝居。賭場。祭りの穴場。表通りじゃ分からねえ店まで、カグラのことなら大抵知ってます」


「へえ」


「それから――」


 一度。


 俺の顔を見る。


「花街」


「いらない」


「即答!?」


「いらない」


「旦那ぁ。若い男がカグラまで来て花街見ねえなんて――」


「見ない」


「見るだけでも!」


「見ないって」


「堅いですなぁ」


 なんなんだこいつ。


 でも。


 話を聞いている限り。


 少なくともカグラには詳しそうだ。


「朝陽」


 後ろから声。


「あ」


 振り返る。


 セレーネ。


 その隣にシウン。


 二人とも戻ってきていた。


「誰?」


「なんか案内人らしい」


「なんかとは酷いですな旦那。オイラはれっきとした――」


 男が振り返る。


 止まった。


「……へ?」


 セレーネを見る。


 シウンを見る。


 俺を見る。


 もう一度。


 セレーネ。


 シウン。


「旦那」


「何?」


「一人旅じゃなかったんで?」


「一言も言ってないけど」


「…………」


 数秒。


 男の口元が。


 ゆっくり上がった。


「へへっ」


「なんだよ」


「いやいや」


 肩を揺らす。


「なるほどなるほど」


「だから何が」


 嫌な予感しかしない。


「ハーレムですか旦那。へへっ」


「違うわ!」


 思ったより大きな声が出た。


 近くにいた冒険者がこっちを見る。


「朝陽」


「違うからな!?」


「何も言ってない」


「その顔やめろ!」


 セレーネは無表情だった。


 それが余計に怖い。


「はーれむ?」


 シウンが首を傾げる。


「ああ、お姉さん。ハーレムってのは――」


「教えなくていい!」


「なぜだ?」


「知らなくていいから!」


「へへっ。旦那も大変ですなぁ」


「お前が原因だよ!」


 男は楽しそうに笑っている。


 腹立つ。


「で?」


 セレーネが男を見る。


「何の話?」


「ああ……宿」


「宿?」


「こいつが安いところ知ってるって」


「こいつとは酷いですな旦那」


「名前知らないんだから仕方ないだろ」


「あ」


 男も今気づいたらしい。


「そういや名乗ってませんでしたな」


 軽く服を整える。


 意味があるのか分からない。


 それから。


 胸へ手を当てた。


「ミニムス」


 にやりと笑う。


「王都カグラで案内人やってます、ミニムスっていいます」


「ミニムス……」


「へへっ。どうぞお見知りおきを」


 そのまま三人を見る。


「三人なら、なおさらちょうどいい宿がありますぜ」


「本当に安いんだろうな?」


「もちろん」


「綺麗?」


 セレーネ。


「そりゃもう」


「酒はあるのか?」


 シウン。


「お姉さん分かってますなぁ! いいのがありますぜ!」


「おい。余計な情報与えるな」


「旦那」


「なんだよ」


「苦労してます?」


「会って五分のお前に言われたくない」


「へへっ」


 また笑う。


 怪しい。


 どう見ても怪しい。


 でも。


 少しだけ。


 面白い。


「見るだけだからな」


「もちろん!」


「気に入らなかったら別の宿行くぞ」


「構いませんとも!」


「案内料も先払いしない」


「旦那、警戒心強いですなぁ」


「お前相手なら普通だろ」


「へへっ。それくらいの方が旅人は長生きしますぜ」


 ミニムスが踵を返す。


「ではでは」


 小さな背中。


 大きな鞄。


 細い尻尾を揺らしながら。


「ご案内しましょうかね」


 人混みの中へ歩き出す。


「旦那方、こっちですわ!」


「……行く?」


 俺は二人を見る。


「宿」


 セレーネ。


「酒」


 シウン。


「お前ら目的違わない?」


 二人はもう歩き始めていた。


「待てって」


 俺も追いかける。


 夕暮れから夜へ変わり始めた王都カグラ。


 頭上では。


 祭りを待つ無数の提灯に、次々と灯りが入っていく。


 その下を。


 今日名前がついたばかりの三人組と。


 胡散臭い、小さな案内人が歩いていた。

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