第13話 二つ目
「でか……」
見上げる。
「…………」
首が痛い。
もう一度。
少し離れて見る。
「でっか……」
王立図書館。
受付の人から聞いて。
来てみた。
「図書館だよな……?」
俺が知ってる図書館とは。
だいぶ違う。
石造りの巨大な建物。
太い柱。
大きな扉。
何階あるのか。
外から見てもよく分からない。
出入りしている人も多い。
「…………」
王立。
って付くだけある。
ちょっと入りづらい。
「いや」
ここまで来た。
「入ろう」
扉をくぐる。
◇
「うわ……」
中。
広い。
そして。
本。
本。
本。
「…………」
本しかない。
当たり前か。
図書館だし。
でも。
量が。
おかしい。
高い棚。
長い棚。
奥まで続いている。
「これ全部本?」
どうやって探すんだ。
「…………」
受付。
ある。
「すみません」
「はい」
「魔法について調べたいんですけど」
「どのような内容でしょう?」
「…………」
どのような。
「初心者向け?」
「基礎魔法ですね」
「たぶんそれです」
「魔法を学び始めたばかりですか?」
「昨日からです」
「では、基礎理論から読まれた方がよろしいかと」
「お願いします」
場所を教えてもらう。
「…………」
広い。
曲がる。
進む。
また曲がる。
「……迷いそう」
帰れるかな。
ちょっと不安。
◇
「あった」
魔法。
魔力。
属性。
術式。
「…………」
すごい。
知らない言葉。
いっぱいある。
「どれだ……?」
一冊。
取る。
難しい。
戻す。
別の本。
もっと難しい。
戻す。
「初心者向けどこだよ……」
さらに探す。
「…………」
これ。
薄い。
内容を見る。
「お」
読めそう。
席へ持っていく。
座る。
「…………」
勉強。
異世界に来てまで。
「学校みたいだな」
少し笑う。
でも。
学校の勉強より。
今は。
こっちの方が。
圧倒的に興味ある。
◇
魔力。
すべての魔法の基礎。
「…………」
昨日聞いた。
身体の内側にあるもの。
それを感じる。
動かす。
集める。
そして。
属性へ変換する。
「…………」
変換。
昨日。
俺が一番引っかかったところ。
ページをめくる。
七大基本属性。
「闇、火、水、木、風、土、光」
昨日と同じ。
「…………」
火。
俺。
その部分を読む。
火属性。
熱。
燃焼。
魔力を火属性へ変換。
基礎。
《イグニス》。
「…………」
読む。
もう一回。
「なるほど……」
昨日。
感覚でやった。
言われた通り。
見よう見まね。
でも。
文字で読むと。
少し分かる。
「魔力を出してるんじゃなくて……」
魔力。
それ自体。
火じゃない。
属性へ変える。
そして。
術式。
「…………」
術式。
これも。
まだよく分からない。
次。
読む。
「…………」
難しい。
戻る。
「…………」
やっぱ分からん」
もう一回。
「…………」
あ」
ちょっと分かった。
「…………」
たぶん。
◇
気づいたら。
結構時間が経っていた。
「…………」
腹減った。
でも。
もう少し。
ページをめくる。
「属性適性……」
止まる。
「…………」
そういえば。
俺。
火属性。
昨日。
そう言われた。
読む。
一般的に。
魔法使いが扱える属性は限られている。
「…………」
一属性。
それが。
最も一般的。
「へえ……」
知らなかった。
さらに読む。
二属性を扱える者。
優秀。
「二つで?」
そんなに違うんだ。
三属性。
「…………」
極めて稀。
通常。
それ以上は。
想定されない。
「…………」
ページを見る。
もう一回。
「一個が普通……」
俺。
火。
「…………」
普通じゃん。
ちょっと安心。
何となく。
魔法が使えるってだけで。
自分がすごくなったような気がしてた。
「そりゃそうか」
みんな使ってるんだから。
俺だけ特別なわけない。
「…………」
火。
俺は。
火属性。
昨日。
ちゃんと成功した。
「なら」
まず。
火。
ちゃんと使えるようになろう。
ページを戻す。
◇
しばらく。
火属性について読む。
基礎。
魔力の流し方。
変換。
術式。
「…………」
なるほど。
分からない。
「…………」
どっちだよ」
自分で突っ込む。
いや。
分かる部分はある。
分からない部分もある。
もう一冊。
持ってくる。
同じところ。
違う説明。
「…………」
こっちの方が分かりやすいな。
読み比べる。
「…………」
火に変える時」
昨日。
俺がやった感覚。
本に書いてある説明。
「…………」
似てる。
完全に。
同じじゃない。
でも。
何となく。
繋がる。
「…………」
面白い。
これ。
結構。
好きかもしれない。
◇
ページをめくる。
火。
次。
「水……」
水属性。
《アクア》。
F級。
生活。
訓練用。
「…………」
火と同じ。
基礎。
魔力を。
水属性へ変換。
「…………」
どう違うんだ?」
火。
水。
当然。
結果は違う。
でも。
その前。
魔力を集めるところ。
「同じ……?」
読む。
「…………」
魔力。
集める。
属性変換。
術式。
「…………」
途中まで。
一緒。
なら。
「…………」
いや。
俺。
火属性だし。
水は使えない。
昨日。
そう言われた。
「…………」
でも。
どうなるんだ?
適性がない属性。
使おうとしたら。
「…………」
失敗?
何も起きない?
それとも。
危ない?
ページをめくる。
「…………」
書いてない。
別の本。
「…………」
これも違う。
「…………」
気になる。
◇
その日は。
普通に依頼を受けた。
採取。
王都の外。
とはいっても。
危険な場所じゃない。
指定された植物。
「…………」
これ。
昨日覚えた。
「たぶん」
取る。
「…………」
たぶんって怖いな。
依頼票と見比べる。
「合ってる」
袋へ。
もう一つ。
「…………」
あった。
採る。
少しずつ。
覚えてきた。
王都。
仕事。
魔法。
この世界。
「…………」
でも。
頭の隅。
ずっと。
水。
「…………」
気になる。
◇
夜。
宿。
「…………」
机。
椅子。
水差し。
ベッド。
「…………」
右手。
出す。
「《イグニス》」
ぼっ。
火。
「…………」
安定してきた。
昨日より。
明らかに。
「消す」
火が消える。
「…………」
もう一回。
「《イグニス》」
ぼっ。
「…………」
できる。
火。
俺の適性。
「…………」
そして。
水。
「…………」
いや。
やめとくか。
一人で無茶するな。
言われた。
「…………」
でも。
別に。
大きい魔法じゃない。
《アクア》。
F級。
生活魔法。
「…………」
水。
だよな。
火よりは。
安全そう。
「…………」
たぶん。
いや。
「……やめよう」
手を下ろす。
ベッドへ。
「…………」
気になる。
「…………」
寝よう。
目を閉じる。
「…………」
水。
「…………」
寝ろ。
「…………」
魔力を集める。
属性変換。
「…………」
「……ああもう」
起きる。
「一回だけ」
誰に言ってるんだ。
俺。
◇
右手。
「…………」
魔力。
感じる。
集める。
ここまでは。
火と同じ。
「…………」
そして。
水。
図書館。
本。
説明。
「…………」
火とは違う。
魔力の変換。
「…………」
水。
流れる。
形を変える。
「…………」
違う。
イメージだけじゃない。
昨日。
火で。
やった。
「…………」
魔力そのもの。
変える。
「…………」
こう?
何も起きない。
「…………」
やっぱり。
無理。
俺は。
火属性。
「…………」
もう一回。
「一回だけって言っただろ」
自分で突っ込む。
「…………」
でも。
今。
少し。
何か。
「…………」
条件。
何が違う?
火。
《イグニス》。
水。
《アクア》。
「…………」
魔力を集める量?」
違う。
「流し方?」
分からない。
「…………」
火の時。
俺は。
何をした?
思い出す。
昨日。
手本。
火。
見た。
真似た。
「…………」
水は。
見てない。
「…………」
あ。
「そういうこと?」
術式の説明。
本。
文字だけ。
手本がない。
「…………」
だから。
分からない。
「…………」
なら。
書いてあったものを。
一個ずつ。
試す。
「…………」
魔力。
右手。
変換。
「…………」
失敗。
もう一回。
「…………」
失敗。
「…………」
違う。
もう一回。
「…………」
少し。
感覚を変える。
「…………」
失敗。
「…………」
また。
変える。
「…………」
何やってんだろ。
俺。
夜中に。
一人で。
水出そうとしてる。
「…………」
でも。
あと一回。
「《アクア》」
ぽた。
「…………」
音。
床。
「…………」
見る。
一滴。
水。
「…………」
「え?」
右手。
見る。
「…………」
今。
出た?
「…………」
水?
「…………」
いや。
汗。
「…………」
違う。
手。
濡れてない。
「…………」
もう一回。
心臓。
少し。
速い。
「…………」
落ち着け。
魔力。
集める。
さっき。
成功した時。
「…………」
何変えた?
流し方。
いや。
変換。
「…………」
これ。
「《アクア》」
ぽた。
「…………」
また。
一滴。
「…………」
出た。
「…………」
いや。
まだ。
偶然。
「《アクア》」
何も。
「…………」
「《アクア》」
ぽた。
「…………」
「《アクア》」
何も。
「…………」
できる。
失敗する。
でも。
「…………」
火と。
同じだ。
昨日の。
《イグニス》。
最初。
こんな感じだった。
「…………」
もう一度。
魔力。
集める。
水へ。
変える。
「《アクア》」
ぽた。
ぽた。
「…………」
今度は。
一滴じゃない。
少しだけ。
右手から。
水。
「…………」
床に落ちる。
「…………」
俺。
しゃがむ。
触る。
「…………」
水。
普通の。
「…………」
いや。
「待て」
立つ。
机。
図書館で覚えたこと。
一属性。
一般的。
二属性。
優秀。
三属性。
極めて稀。
「…………」
俺。
火。
「…………」
右手。
見る。
「…………」
水。
「…………」
もう一回。
「《アクア》」
ぽた。
「…………」
出た。
「…………」
間違いない。
「俺……」
火。
そして。
水。
「…………」
二つ?
優秀。
らしい。
「…………」
俺が?
「いやいや」
ない。
だって。
俺。
昨日。
魔法覚えたばっか。
「…………」
何か。
間違ってる?
本の読み方。
術式。
適性。
「…………」
でも。
出てる。
水。
「…………」
しばらく。
床を見る。
「…………」
どうしよう。
誰かに。
言う?
「…………」
受付の人。
聞けば。
分かるかも。
「…………」
でも。
何て言う。
『火属性って言われたんですけど、図書館で水魔法読んで試したら出ました』
「…………」
そのままでいいか。
「…………」
いや。
でも。
二属性。
優秀。
珍しい。
「…………」
俺。
まだ。
この世界のこと。
全然知らない。
「…………」
もう少し。
調べてからでも。
遅くない。
「…………」
そうだ。
明日。
図書館。
もう一回。
「…………」
水だけ。
なのか。
「…………」
いや。
待て。
七属性。
火。
水。
木。
風。
土。
光。
闇。
「…………」
頭に。
一つ。
嫌な。
いや。
妙な考えが浮かぶ。
「…………」
まさか。
「いやいやいや」
ない。
さすがに。
「…………」
でも。
火。
使えた。
水。
使えた。
「…………」
だったら。
他は?
机の上。
冒険者カード。
スマホ。
財布。
その横で。
俺は。
右手を見つめる。
「…………」
明日。
調べよう。
もっと。
ちゃんと。
魔法のことを。
そして。
他の属性のことを。
俺はまだ。
自分が二つ目の属性を使えたという意味を。
理解していなかった。




