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俺の小学生生活は何か間違っているだろうか?


よく考えると俺はラノベやら小説っぽいものやらを読んでいて主人公が小学生の頃というのをあまり見たことがない、何故かと考えてみればそれは単純な理由であった。


「わははー!」

「うんこー!うんこー!」


それは描写が難しいとかそれ以前に対外の場合知能レベルの下がりそうな会話しかない上に、特にこれといった見所を作るのが難しいからだった。


「…人生は難しいなパトラッシュ。」

「ワン!」


…うさ耳飛び跳ねクラゲに発声機能を付けたのは失敗だったかもしれない。



今日の授業は魔法生物の生成によって終わってしまった。正確には魔法生物は作って終わりではない、むしろ作ってからが本番なのだ。


「グワー!俺の使い魔がー!」

「ギャオオオ!」


俺のいた教室から窓ガラスが割れる音と共に爆発音めいた咆哮が聞こえた。クラゲを模した奇妙な魔法生物であるパトラッシュの表面が震えるがしれは空気の振動によって起こったもので彼自身が震えているわけではない、こんななりだが一応高性能に作ってある。伊達に長時間無駄な思考をしていたわけではない、少ない魔力でも少しずつ流し込めば魔力は蓄積していく。魔法陣は基礎的な能力を被創造物に付与するが魔力はそれの実現率を上げてくれる。つまりこいつはかなりの水準で基礎的なことのできる魔法生物なのだ。その基礎には歩行や移動に加えさまざまな動作も入っている。あとは俺の想像するこいつの動きを魔力を通してこいつに伝えられれば作り自体はしっかりしているので問題ない…筈だ。


まあ、俺のクラゲのことはいいとして、魔法生物というのは魔力と任意のもので生み出された術者の写し身であり分身である。だがそれと同時に魔法によってできた仮初めではあるものの別の生き物である。と言うのは常識だ。

つまり生み出すだけではそれはただの一時的な擬似生命の精製である。魔法生物とは術者の意思に従ってこそのものであり、術者はそこまで面倒を見れてようやく基礎的な魔法生物の扱いを学べたと言えるのだ。

何が言いたいのかと言えばどんなに立派なものを作っても制御できなかったらお話にならないという当たり前のことであり、それ故に難しい魔法の基礎だ。

初等部とはいえ魔法という技術の危険性やその可能性を知らずに使うというのは危険である。

何より古代の文明のように魔法によって興りそして魔法によって衰退しては意味がない、この世界の住人は過去を繰り返さないようにとまずは全員がある程度共通の認識を持ち、危機感を持つという事を優先した。

その結果が学校であり、基礎的な知識と同時に危険性や失敗を知る為の場である。


「やはり君はすごいな。」


そう声をかけてきたのは同じ班のメガネ君だった。


「そうか?俺としては皆の方がすごいと思うけど?」


俺たちの班はすでに魔法生物の生成を完了し担任の指示で残りの皆が終わるまでの休み時間を享受している。そして今は俺一人で楽しそうに遊ぶ一年生を見ながらランドセルに入れていた『属性変化とその傾向』という本を読んでいた。著者はうちの担任である。

メガネ君は最初図書室に行き粉砕系女子は魔力操作を訓練するために耐魔力素材でできた個人用の訓練場の予約に、無駄に暑苦しいのは弁当を忘れたらしく許可を取る前に一度帰宅しようとして今はおそらく職員室だろう。


ついでに言えば入れも含めてこの学校にいるボッチの皆さんは知能レベルが高め…というかぼっちになった経緯やその特殊体質などからおおよそ小学生とは思えないほどに成熟している。いや成熟せざる得ない状況に追い込まれた結果大人らしさを身につけている。

ちなみにメガネ君の魔法生物は鳥のような見た目の鳥だ。限りなく鳥だ。ただその材質が紙であるために水に弱そうだ。


「違う。魔力量で劣っているとかそういう話じゃないんだ。」

「そう?」


魔力操作も、この頭に入った知識も元を正せばあの精霊の所為だし、それに最初の最初から意識があったというだけで使える時間の差は膨大だ。それにそういう意味では普通に生まれてきて普通に今まで努力してきて初等魔法の全過程を修めているメガネ君の方が優れている。


だが名も知らぬメガネ君はどこか上の方を見つめて言う。


「君は誰も傷つけてないだろ?」


そこに居たのは天才だった。紛れもなく誰にも理解されず優秀であるが故に周りから排斥された知性の成れの果てとなるであろう小さな彼が居た。

生憎俺は天才でもなければいるだけで相手に劣等感を与えるような存在感のあるやつじゃない、俺は彼が優秀であると言う事を肯定的に見ているが彼にとってはそれこそがボッチの根源なのであった。


「いや、変な事を言った。忘れてくれ。」

「そうだね、気にしないでおくよ。」


そしてそんな彼を救えるのは俺ではないのであった。



この日の魔法生物の生成実験はクラスの半分が成功した。我らが担任は宿題として成功していなかった人には原因はなんだと思うかを紙にまとめるように指示し成功した半分には今日生み出した魔法生物の維持を指示した。


「此処は基礎知識を積む場所だが全員が全員魔法使いに向いているわけじゃない、だから此処では魔法以外のことも教えているんだ。」


そう言って締めくくった帰りの会はいつもより少し空気が重かった。

なにせ俺たち小学三年生は小学生にして科目選択を迫られそれは自分で選ぶのでは無く授業や実験の出来で選別されていく。

特化していくと言うにはまだ緩やかだが先生が言った通り全員が魔法をきちんと修められる訳では無い、向き不向きというのはある程度あるのだ。

今日の実験も実験というの予行演習だ。俺たちはこの冬魔法科へ進むか普通科へ進むかの二択を決定する為のテストを受ける。其処には三年生までで習ってきた様々な魔法技能の試験が行われその一つが魔法生物である使い魔の生成と維持である。

他にも色々あるが三年生の最初から最後までやるのがこの魔法生物の作成だ。これには高度な…というには些か微妙だが基礎的な魔力操作と何より『自分のできる範囲』というものを分かる為のものだ。

攻撃や回復なども自分が扱える範囲を越えれば自分を焼き尽くす。その点で言えば魔法生物の作成は余程のヘマをしなければ使い魔が多少暴れた後に魔力切れで消えるので安全といえば安全なのだ。

窓ガラスが粉砕された教室もあの凶暴そうな竜の型を取った何かは消え去りいつの間にやら静寂に満ちた魔法使いの瞑想が行われていた。


だが、俺にとっては関係ない、そう思っていた時期もありました。


「ううー、アビス〜」


俺の目の前で目に涙を湛えるのは我らが幼馴染にして精霊たちの愛し子マリア、そしてその手元には爆散したゴツゴツとしたゴーレム…本に曰くうさぎらしいが…お世辞にもそう見えない、というか有り体に言えばそれはいわゆる岩である。


「…うーん、これは…」

『…ちょっと想定外ね…』


そう、魔法使いとして最高の能力値を持っている筈の彼女が何故か知らないが魔法生物を作るどころかその手前の使い魔を生み出すところから失敗してしまっていたのだった。

これには精霊さんも苦笑い…


『いいえ、実際笑い事じゃないわ。なにせ彼女はこの先幾多もの精霊を使い魔として使役する精霊使いとなり行く行くはこの世界のに訪れる厄災を退ける勇者の一人になるのよ?それが使い魔も作れませんとか…有り体に言って未来が壊れかねないわ。』

「(うわぁ、ヘヴィですなぁ…)」


どうやら俺はついに契約に従って彼女の手助けをしなければならなくなったようだ。

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