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第4話 弱い奴の強さ

「終わったぁ!」


授業の終わりを告げる鐘が鳴ると同時に、カイは叫んで席を立った。


「リョウ、タカシ飲みに行こうよ」

教室の中だというのにカイは言った。


「そうだな。明日は休みだし、久しぶりに飲むか〜」

まだ未成年だが、カイ達にとっては当たり前の事だった。


「そうだ。リオも呼ぶか?」

そう言うと、ケータイを取り出しリオも誘った。



一旦帰って着替えして、カイやリョウやタカシ、そして後輩達も混ざり、青龍会が経営している居酒屋に行った。


「よし、みんなグラスは来た?」

カイは、かなり楽しんでいた。


「相変わらず、騒いでるね」

声のする方を向くと、

「久しぶりじゃん。リオ」


カイは真っ先にリオの所に向かった。


リオというのは、カイと大の仲良しな女の子だ。見た目は、ギャルって感じで性格は男っぽい。

だから、普通に女の子一人で飲みに来る事が多かった。


カイとは友達以上恋人未満の関係で、お互いに何でも話せる親友みたいな存在でしかなかった。


居酒屋の方は、盛り上がりを見せ始めた!


「いいなぁ。こんな事。やっぱり今が一番楽しいね」

カイは、かなり楽しんでいた。



3日後…


カイは学校が終わり、駅に行った。


いつものたまり場にいると、数名の学生が歩いて来た。


「また、んな所で遊んでるのか?」


真ん中にいた、男がワタル達に話しかけた。


「うるせー。てめぇらには関係ねぇだろ?」

一気に険悪なムードになったが、カイは無視した。


「ダイスケ!」


後ろから走って来たのはシノブだ。


「またケンカしないでよ」

シノブはダイスケを止めた。


「お前も、こいつらに何かされたら言えよう。いつでも相手してやるよ」


ワタル達とダイスケ達はにらみ合った。

そのまま、すれ違うように離れた。


「もぅごめんな。あいつ、そんな悪い奴じゃないから」

シノブは、ワタル達をなだめた。


ダイスケはシノブと幼なじみで、隣の街に住んでいる。


いつからか、ワタル達とダイスケ達は、対立しあって仲が悪かった。


シノブはお互いとも仲良くて真ん中の立場にいるから、両方を仲良くさせようとしているのだ。

次の日になり、カイ達は普通に学校に行った。


「楽しい事ないかな?」

カイはジュースとお菓子を食べながら、リョウとタカシと話していた。


「カイは、いつも楽しそうだけど…」

タカシは、大量のお菓子の袋を見て言った。


「学校にそんな物持って来るんじゃない!」

突然、怒鳴り声が聞こえた。


廊下に出てみると、女子高生が先生に怒られていた。


「また怒ってるよ。あいつ。」

カイがボソッと言うと、先生が睨んだ。

「文句があるなら、ここに来い鬼澤。」

そう言うと、職員室に入った。

「あいつの態度も、どうかな?って思う」


この先生は、いつも何かとカイ達を嫌ってる生活指導の玖波だ。

生徒の大半からも嫌われている。


「あ〜!マジムカつく。よし、ふけるか?」

学校の近くにあるカラオケ店に行ったカイ達は、玖波の事なんか忘れて楽しんでいた。


「よ〜し、次行こうぜ」

カイが提案してカラオケ店を出ることにした。


ふと隣の部屋を見るとシノブがいた。

一緒にいるのは、ダイスケ達だ。


いつもは、甘えん坊で少しおとなしげなシノブが、はしゃいでいた。


「あいつ、楽しそうだな」

カイは、シノブを見て微笑んだ。


そんな中、た〜け〜達の間では嫌な噂が流れていた。


「マジかよ!あいつら、ここんところおとなしくしてるからってよ」


「調子乗ってんな」

何もわからず、その日は終わった。


一週間後…


シノブは一人街を歩いていた。

「おい!」


突然、覆面した男達に袋叩きにされた。

「何だよ。てめぇら」

体中ボロボロになりながら、聞くと。

一つのチラシを見せた。


『一週間後、駅前の公園で待つべし。ダイスケ』


シノブは目を疑った。

「ダイスケと何の関係があるんだ」


何も答えず男達は去って行った。

体中ボロボロになりながらも、シノブは駅に向かった。


「どうした?誰にやられた?」


た〜け〜達は、傷だらけのシノブを見て驚いた。

シノブは、何があったか話した。でも、ダイスケの事は話さなかった。


「あいつらだな。」

た〜け〜は、何かを思い出した。

「実はこんなものが…」

手に持っていた紙を渡した。


それは、シノブが渡されたチラシと一緒だ。

「あいつら、挑戦状出しやがって!」


シノブは、ダイスケがこんな事するはずないと思い止めた。

しかし、みんなは無視して去って行った。


次の日、ダイスケに聞いてみると、

「何の事だ?あいつらじゃないのか?」

シノブは驚いた。

「ダイスケ達も知らないの?」

そう言うと、ダイスケは一枚の紙を見せた。


それは、た〜け〜達からの挑戦状だった。

「これ…た〜け〜達は送ってないよ。」

しかし、聞く耳はもたなかった。


日に日に、せまって来る挑戦の日。


シノブはお互いに止めるように言ったが、両方とも(売られたケンカは買う)の一方で聞かなかった。


一人街を歩いていると、

「なかなか、うまく行ったな。しかし、あいつらもバカだよな。だまされるなんてよ」

そんな声がした。


シノブは、話してる奴らを見た。

よく見ると、人数も身長も声も、あの覆面の奴らに似てる。

「まさか、お前らが…」

男達に話すと

「あっ、お前か?前はありがとうな。おかげで、うまく話が進んだよ」


シノブは確信した。(こいつらが、ダイスケ達とた〜け〜達を騙して対決させようとしてるんだ)

「何の恨みでやったんだ」

シノブは、一人の男に殴りかかったが、すぐに袋叩きにされた。


「恨みはねぇが、こっちにも色々あってな。悪いが止めても無駄だぜ」

そう言って、去って行った。


シノブは、悔しくて泣いた。

何も止められない自分に…


呆然として、気づけば駅に着いた。


一人で何かを考えて、決心した。


そして、決戦の日。

シノブはあの男達の所に一人で行った。

「またお前かよ!もう用は終わったんだよ。さっさと、帰りやがれ!」

「嫌だ!みんなに説明してくれるまで帰らない。」


シノブは、一人で話しに来ていたのだ。

「ったく、おとなしく見ておけばいいものをよ」

男の一人が殴ってきた。

右頬にパンチを喰らいシノブは倒れた。

「絶対に、帰らない。何でこんな事をしたんだ」

シノブは、男達を睨みつけた。


「ひま潰しだよ!偶然、てめぇらを見かけてな。ケンカするんじゃないかってな。逆に感謝されたいよ。どっちが強いか決められるからな」

そう言って、男達は高笑いした。


「ひま潰しだけで、僕の大切な人達を巻き込むんじゃね〜」

シノブは、体当たりしたが難なくよけられた。


「調子乗ってんなよ。」

男達は、一斉にシノブを囲んだ。


「てめぇらの方こそ、図にのんなよ」

突然、声がして後ろを向くとカイが立っていた。


「カイ兄。何でここに?」

シノブはカイを見た。

「お前が偶然見えてな。何がどうなってるんだ?」

シノブはカイに今までの事を説明した。

「そうか…じゃあする事は一つだな。

シノブ、俺もこいつらを許せねー!悪いが、俺と変わってくれないか?」

カイは、シノブじゃ勝てないと思い聞いた。

「でも…」

シノブは少し考えると頷いた。

「よし、じゃあ俺はこいつらをぶっ飛ばす!シノブお前はどうする?」


「俺はみんなを止める」

そう言った。

「よし、それでこそシノブだ!まかせたぞ」

カイが言うとシノブは走った。


「てめぇ一人で何が出来るんだよ。」

カイは、何も言わず男達と対立した。




一方、シノブは息を切らしながらもみんなの前に行った。


しかし、もうすでに始まっていた。


「みんなぁ、止めてよ!」

大きな声で叫んだが聞こえなかった。


シノブは、必死で叫び続けた。



カイは、一気にかたをつけ、男達に聞いた。

「てめぇら、俺の後輩を傷つけたら、許せねー!」


男達は恐怖に怯えた。

「待ってくれ!俺たちは頼まれただけなんだ。」

カイは、男達を見た。

「誰にだ?」

「わかんねえよ!ネットで書かれていただけだ。

あいつらを対立させたら、十万あげるって」

カイはわけがわからなかった。


その頃、まだケンカは終わらないた〜け〜達にまだシノブは叫び続けた。


「お願いだから話を聞いてよ。」

声がかすれ、ここまで来てるのに何も止められない自分が悔しかった。

みるみるうちに、大切な友達が傷ついていくのが耐えられなかった。


「シノブ!」

カイがシノブの所に着いた。


「カイ兄。俺…何も出来なかった…何も止められない!みんなには俺の声が聞こえなかった。」

カイの姿をみても、涙は止まらなかった。

「大丈夫だ!俺には聞こえているよ」

カイは、シノブを抱きしめた。


「まだ間に合う。叫べ」

カイの合図とともに、シノブは最後の声を振り絞って叫んだ!

「みんな、やめて!」

今まで吹いていた風が止まり、両方ともシノブとカイを見付けた。


「カイ兄、シノブ…」

「みんな…やめてよ!こんなのは意味ないよ。」


泣きながら、説明した。


「そうだったのか…」

ダイスケは、下を向いた。

「だから、意味ないんだよ。ケンカしなくてもいいんだよ」

シノブは、ダイスケの前に行った


しかし、ダイスケはシノブとすれ違い、

「しかし、もう止めらんねーよ!」

そう言うと、た〜け〜達も

「ああ、ケンカはまだ終わらねー」


またもや、両方とも始めようとした。


「やめねぇか!」

カイは、た〜け〜達の間に来た。


「てめぇらまだわかんねえのかよ!シノブが、どんな思いだったのかよ!

こいつは、てめぇら両方とも大切な仲間だと思ってんだぞ?だから、ケンカなんか望んでない。

シノブはな、この中で一番泣き虫で、おとなしいけど、一人で戦っていたんだぞ!

こいつの気持ちも考えやがれ!

まだ、頭が冷えてねぇ奴は、俺が相手してやる」


そう言って、た〜け〜達とダイスケ達を見た。


両方とも黙り動かなかった!

「みんな…お願いだから、止めてよ!ダイスケもた〜け〜達もみんな仲間じゃん。僕の大切な仲間だろう?」


シノブの涙を見て、ダイスケ達とた〜け〜達は、戦意を失った。


「ゴメンシノブ。」

た〜け〜は、泣きじゃくるシノブの肩に手を置いた。

「シノブ、もうケンカしないからよ。だから泣くなよ」

ダイスケも肩に手を置いた。


「約束だよ?」

シノブは、そう言うと、笑った。



それから…


「てめぇら、誰にガンつけてんだよ」

「それはこっちのセリフだ」


相変わらず、会うとケンカするダイスケ達とた〜け〜達だった。


「もう、約束忘れたの?罰ゲームだよ」

シノブは間に入った。

「まっ今日のところは許してやる」

「俺たちも大人だしな」

ダイスケとた〜け〜は、離れた。

シノブが考えた罰ゲームというのは、ケンカしたら、仲良くなるまで両方とも手錠をかけるというものだった。


だから常にシノブのカバンには手錠が入ってる。

嫌いな奴らと一緒にいるのが嫌だから、言うことは聞いていた。


「けど、なんだかんだ言って、毎日一緒にいるよな。あいつら」



シノブを中心に楽しく笑ってるダイスケ達やた〜け〜達を見てカイは笑った。


シノブも、泣き虫は直らなくても今は、一番笑っている人になっていた。


「みんな。俺の大切な大好きな仲間だ」

そう言って、とびっきりの笑顔をみせた。

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