第5話 家族の絆
ポカポカな朝の光
静かに流れる風
人間にとっては、眠たくなる季節だ。
ここにも、この季節のせいで眠たくなってる奴がいる。
「ったく、急に屋上に行こうって言ったら眠るためなのかよ」
横で背伸びをしてるカイを見てタカシは言った。
「だって、授業出ても楽しくないしさ、いいじゃんたまにはさ〜」
そう言って、空を見た。
「平和だね〜!ずっと続けばいいのにな…」
カイは少し遠い目をした。
「あれ、リオだ」
カイ達の学校の屋上からは隣の学校が見える。
リオも隣の女子校にいる。
カイは体を起こし見た。
「何やってんだ?あいつ…」
リオを見ると、一人で寂しそうに窓から何かを見ていた。
カイはリオと同じ方向に目をやった。
家族連れが楽しく歩いてる。
「ん?」
もう一度リオを見ると、姿はなかった。
何日か過ぎた。
「つ〜か、何でここにいるんだよ」
た〜け〜は、タバコを吸いながら木に腰掛けた。
「まじ!眠いんだけど。」
ワタルもふてくされていた。
今日は、カイやリョウやタカシと後輩達はキャンプに来ていた。
もちろん、カイの気まぐれだ。
「いいじゃん。たまにはさ、はねをのばしてさ」
そう言いながら、夕食の準備をするカイ。
「カイ、またお菓子だけ、いっぱい買って来たでしょ?」
リオは、お菓子の袋をカイに見せた。
「今、何歳だからお菓子なんだよ?
しかも、キャンプってさ」
リョウもカイの気まぐれに呆れていた。
しかし、なんだかんだ言って、みんな楽しく過ごしていた。
川の近くにカイとリオは腰掛けた。
涼しい風と小鳥の鳴き声で平和を感じていた。
「で?何があったの?」
カイは、リオが元気ない事を知っていた。
「ん?やっぱりカイだね。何でもわかるんだ」
リオは、そう言いながら下を向いた。
「実はね、うちの親たち離婚するんだ。前からさ、立ち退き業者が来て、うちら家を追い出されるみたい。それが原因でね」
リオは笑いながら言った。
「お前はいいのか?」
「しかたないよ。家も家族も失って、また新しく頑張らなきゃいけないからさ。」
リオは前向きに考えていた。
「うちの親さ、前は仲良かったの。こんな話が出てくる前はね。でもさ、だんだん話さなくなって、今じゃもう、家に帰っては部屋に入って出て来ないんだ。
昔は、台所の小さなテーブルで三人でご飯食べてたのにな」
カイはリオの顔を見ると、リオの目に涙が溜まってることに気づいた。
「そっかぁ、まっリオがいいならいいんじゃないか。
でもよ、一人じゃねぇんだぜ。お前はよ」
そう言って、肩に手を置いた。
「わかってるよ。これでいいんだってさ。
でも…少し寂しいね」
リオは涙が落ちないように必死で笑った。
「よし、何もかも忘れて今日は飲もうぜ。」
リオを連れてまたみんなの前に行き、その日は飲み明かした。
キャンプが終わり、リオは家に帰って来た。
いつものように、台所に行くと誰もいなくて静かだった。
テーブルの上に一枚の紙が置いてあった。
リオは手にすると、悲しい顔をした。
それは離婚届だった
わかってたつもりが、実際に見ると胸が苦しかった。
ドアが開いた。
後ろを振り向くと、母親が立っていた。
「いたの?」
母親はスーツを脱ぎながら聞いた。
リオが持ってる離婚届を取ると、
「リオは、どっちでもいいからね」
そう言って、また自分の部屋に行った。
次の日、リオは学校に行く途中でも考えていた。
すると、スーツを来た男達が目の前に現れた。
「こんにちはリオちゃん」
不適な笑みを浮かべながら近づいてきた。
「また、あんた達か…言っておくけど、渡さないからね。」
リオは強気で言った。
「このガキ!!」
男がリオに近づくと、
「待ちな」
リーダーである男が止めた。
「リオちゃん、俺たちも、あまり傷つけたくないんだよ。だからさ、早く両親に言って出てくれないか?」
優しく言った。
「イヤだね」
絶対に引かないリオだ。
「じゃあ仕方ないね。そろそろ最終的手段でいくよ」
そう言って、去っていった。
意味がわからず、リオは学校に行った。
帰宅して、家の中を見たリオは愕然とした。
部屋の中はめちゃくちゃで、ガラスも割れたりしていた。
「帰ったのか。」
父親が部屋から出てきて、すぐに母親も出てきた。
「何?何があったの?」
リオは両親に聞くと
「もうダメだ。このままなら耐えきれない。」
「そうだな。うんざりだ」
そう言って、離婚届を出した。
リオは、間に入り
「ちょっと待ってよ。」
止めたが、両親達は聞かなかった。
次の日に父親が出て行く事になった。
「どうして、こんな事になるの」
荷物をまとめる父親の姿を見て、リオは泣きそうだった。
突然、チャイムがなった。
「はい」
母親が出ると
「おじゃましま〜す」
カイが入ってきた。
「カイ…」
「よっ!元気か?」
そい言って、家の中を見渡した。
「カイ、ゴメン今は…」
リオがカイに話しかけると
「ここが、台所か?」
そう笑いながら聞くと、突然、台所以外の部屋をめちゃくちゃにした。
「ちょっとカイ、何をしてるの?」
何も言わずに、大暴れしていた。
「君、何なんだね一体…」
父親も母親も止めた。
「リオ、なくていいんだろ?」
カイはリオに叫んだ。「こんな暗い家なんか無い方がいいよな?父親も母親も、さっさと離婚して、一人になりたいよな?」
そう言いながら、家中をめちゃくちゃにした。
「私は…私はそんな事思ってない。この家で、お父さんとお母さんと三人で暮らしたいの」
リオは泣きながら答えた。
ふと動きを止めカイは笑った。
「言えんじゃねぇかよ。」
リオは気づいた。
カイはリオの本音を聞くためにワザとしたんだと。
「警察に電話しなきゃ…」
母親は電話を取ると、同時にリオが止めた。
「お願い…また三人でここで頑張ろうよ。…一人にしないでよ」
リオは母親に話した。
両親は黙ったままだった。
「そうだな。また1からやり直すか。」
父親は、リオと母親の肩に手を置き抱きしめた。
三人は、幸せそうな顔で見つめあった。
「ここの修理代は出すよ。あとは家族水入らずで過ごしな。」
そう言って、カイはリオを見た。
「ありがとうカイ…。でも、ここはもう…」
リオ達の家は立ち退き業者に取られてしまう。
「大丈夫だ。まかせなさい。…と思ったら、さっそく来たか。」
カイが窓を見るので、リオ達も見た。
あの立ち退き業者が来たのだ。
車の中で、
「今日は何があっても、出て行かせ。拒むようなら殺せ」
後ろの席に乗っていた男が命令した。
突然、車は急ブレーキをかけた。
「何やってやがる」
男は怒鳴ると
「ボス…」ボスである男が前を見た。
そこには、青龍会のメンバーが立っていた。
「あ…な…なぜここに…」
男達は驚いた。
カイが後ろから出てきて男達に近づいた。
「どうも、ここに用があるんですか?なら、オレを通してもらいましょうか?」
笑顔のカイだが、男達は震えていた。
声も出なかった。
「あの親子に手を出したら、沈めるぞ。」
カイは急に真顔になり睨み付けた。
男達は逃げるように、車を走らせた。
「よし、じゃあ帰るか。」
青龍会の車に乗ろうとして、ふとリオの家の窓を見た。
そこには、笑顔で手をふるリオがいた。
次の日、学校に行く途中でカイとリオは会った。
「カイ、本当にありがとうね。あのあとさ、立ち退き業者から電話かかってきて、この話はなかった事にしてくれって逆に頼まれたよ。
その夜、久しぶりに台所で三人でご飯食べたんだ。
お父さんたちさ、少し照れていた。」
リオは嬉しそうに話した。
「そっかぁ。」
カイはリオの肩に手を置きながら、笑った。
「そこのお二人さん。朝から、仲よろしいね。」
突然声がして、振り向くと後輩達がいた。
「べつに…」
リオは照れると、下を向いた。
「カイも何か言ってよ」
ふとカイを見ると、
「これスッゲー」
おもちゃ屋のまえにいた。
「はぁ〜。少しは見てくれないかな。」
リオは小声で言うと、カイを見て笑った。




