006 犬ではなく狼
「へえ、それじゃあトウヤは魔物退治に来たんだ」
ここに来た経緯を話すとギンカはそう言って、感心するように僕を繁々と眺める。
「まあ、実際は魔物じゃなくて私だったって訳だけどね。
それにしても、一人で魔物退治しに行こうだなんてトウヤは強いんだね」
「いや、そうでもないよ」
「うん? じゃあなんで来たのさ?」
ギンカは首を捻って尋ねてくる。
さすがに自殺願望とは言えない。
「金に目が眩んだんだよ」
「そうなの? あんまりそういうタイプには見えないけど」
「人は見かけによらないっていうだろ?」
「確かに、トウヤは見かけによらず変態だったな」
ニヤニヤとしながらギンカは言う。
どうだと言わんばかりの表情である。
・・・それでからかっているつもりなのだろうか?
「なんてったって前金5000ガルに成功報酬10000ガルだぞ? そりゃあ飛びつくさ」
「あ、あれ?」
「? どうしたんだ」
「えっ!? な、なんでもないよ・・・って10000ガル!? すごい大金じゃないか」
「ああ、でもそれは成功報酬だ。つまりギンカを退治したら貰える訳だ」
スッと目を細めてギンカを見る。
「え・・・・じょ、冗談だよね?」
引き攣った顔でギンカは僕の様子を窺う。
それを僕は無言でじっと眺める。
「う、ううっ・・・」
ギンカは身を小さくして呻く。
さらに無言。
「キューン キューン」
涙目になって悲しげに鳴き始めた。
僕はスッと右手を差し出す。
「・・・・?」
その手を見てギンカは訝しげに僕の顔を見る。
「お手」
「え?」
「いや、だからお手」
「う、うん?」
流されるように、ギンカは僕の右手に左手を乗せた。
それを確認し「よしよし!」っと僕はギンカの頭をワシャワシャと撫でる。
全く、愛い奴め!
「私は犬か!!」
「え? 違うの?」
「違う! 私は狼だ!! 白狼獣人だ!」
うがぁーと両手を挙げて怒るギンカ。
「可愛いなお前」
「何が可愛いだ!! 馬鹿にしやがって」
「どうどう、落ち着け」
「馬鹿にしてんだろ!?」
ギンカは顔を真っ赤にしてポコポコと・・・いや、ちょっと待て。
「いて! やめろ、待て、悪かった。ごめん、痛いって!?」
「ぐるるう!!」
この後、僕はギンカの気が済むまで殴られた。
それは、手加減したような攻撃だったにも関わらず深刻なほど僕にダメージを与えた。




