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第9話 雪道郵便路の再点検

未着の理由を帳簿だけで決めつけるのは、監査官として怠慢だ。だから私は配達路そのものを見に行くことにした。


 案内役は配達隊長ハインツ。三十五歳、日に焼けた顔に傷の残る男で、道の話になると急に饒舌になる。


「北西谷道は冬の終わりに二度崩れた。だが王都向け袋が消えた日だけ、妙に迂回指示が多かったんだ」


 私たちは雪解けのぬかるみを踏み、東の林道へ向かった。すると途中、古い料金所跡の小屋が見えてくる。戸は半開き、鍵は新しい。


「こんな場所、今は使ってないでしょう」


「少なくとも正式にはな」


 中を開けると、湿った郵袋が六つ積まれていた。差出地は北辺各村、宛先は王都監査局、軍属年金課、橋梁整備課。未着ばかりだ。


 袋の留め札には、配達不能の印ではなく「経路変更待ち」の赤字。指示者欄の略号は、またユリウスの係を示していた。


「途中倉庫か」


 私が呟くと、ハインツが舌打ちした。


「誰かがここで選り分けてたんだな」


 袋の底から、まだ封の切られていない軍報が一通出てきた。北辺駐屯地から王都軍務局宛。三週間前の日付だ。


「これも止める必要があった?」


 レオンハルトが封印を見つめる。


「必要ではなく、都合が悪かったんでしょう」


 軍需の不足、橋の損傷、年金未払い。全部つながれば、北辺へ回す予算を王都が抜いているとわかる。


 私は小屋の中で即席の一覧を作り、袋番号と宛先を書き付けた。


「証拠を先に運びます。この小屋は封鎖」


「侯様自ら?」


 ハインツが目を瞬くと、レオンハルトは短く頷いた。


「俺の領内だ」


 王都では、責任を持つ男ほど紙の陰へ隠れた。けれど北辺侯は、自分の足で封をしに行く。その差が、私は少し好きになっていた。


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