第18話 愛人が隠した婚礼通知
セリーヌは最後まで、涙で片づけようとした。
「わたくしはただ、困っている人のお手紙を集めていただけですの。運び方まで管理していたわけでは……」
「では、この婚礼通知も偶然ですか」
私は彼女が同封してきた写しではなく、文通会倉庫から押収された原本を机へ置いた。差出人はユリウス、宛先は郵政省上層部数名。内容は『エルマ・シュタールとの婚礼は急使便不祥事により中止、新たにセリーヌ・アルヴェとの婚礼を進める』。
日付は、私への婚約解消届より前。
「つまりあなたたちは、私へ正式通知を出す前から婚礼差替えを進めていた」
次に示したのは、慈善文通会の仕分け帳だ。そこには『要隔離』の印と共に、私宛て私信、北辺年金申請、そして私の婚礼関係書類まで同列に並んでいた。
「便種が違うものを同じ基準で止めています。あなたは“読まれて困るもの”を拾っていた」
セリーヌの唇が震える。
「だって、ユリウス様はわたくしを選んだのに、あなたの周りにはいつも仕事の人がいたでしょう! 手紙まであなたの味方をするなんて、ずるいじゃない!」
あまりに身勝手な本音だった。
「手紙は味方なんてしません」
私は静かに返す。
「差し出された先へ届くだけです。途中で選別していたのは、あなたたち」
聖女ぶった女の仮面が、そこでようやく崩れた。監査会長は慈善文通会の即時業務停止を言い渡し、セリーヌへも不正関与の調査命令を下す。
拍子抜けするほど、終わりはあっけなかった。長く苦しめられた嘘ほど、証拠の前では案外弱い。




