第16話 王都郵政監査会への帰還
王都へ戻る馬車の中で、私は証拠箱を膝に抱き続けた。
中には未着私信、廃印一覧、料金所跡小屋から出た郵袋札、受取票、脅迫状、そして燃え残った急使便確認票の切れ端。全部、途中で止められたものの痕跡だ。
王都郵便監査局の裏口で待っていたグレーテは、箱を見るなり鼻を鳴らした。
「よくここまで揃えたわね」
「止められていたぶん、残っていたので」
「皮肉ね」
監査会の場には、局長、郵政省次官、印章係、軍務連絡官、そしてユリウスとセリーヌまで揃っていた。私を見る目に、以前の見下しはない。代わりに警戒がある。
私は最初に未着一覧を広げた。
「北辺から王都へ届かなかった公文三十二通、年金関連十七件、私信二十一通。すべて料金所跡小屋または隠し箱から回収しました」
続けて、配達整理記号と廃印一覧を並べる。
「差替え指示の略号、旧型印章、受取票の偽造印。この三点は、ユリウス・フェルデン係の管理下でしか扱えないものです」
ユリウスが立ち上がった。
「証拠にならない。係内では共有されていた」
「では、こちらはどうですか」
私は私信の箱から一通を出した。三年前の手紙。差出人は亡父の従者。封筒の開封跡の脇に、ユリウス特有の筆圧で日付メモが残っている。私に渡す前に、内容確認のため自分で開けた証拠だ。
「婚約者の私信まで係内共有で開けていたんですか」
場がざわめく。局長の顔色が変わった。
私はさらに燃え残りの切れ端を置く。
「婚礼前夜に焼かれた急使便確認票です。これと同筆跡の追記が発送簿控えに残っていました」
記録は揃った。あとは相手がどこまで崩れるかだけだ。




