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若干腰が浮きかかったが、目にも止まらぬ速さでマルコラさんが引きはがしたので、わたしは立ち上がろうとしたことを気が付かれないように、何食わぬ顔でそのまま再度座った。
「リリちゃん、酔っているんだから、あまり迷惑かけないようにね」
そういうマルコラさんは、目がちょっぴり笑っていない。他の男にくっつくな、ということだろう。恋愛脳の彼はこういうとこ、結構目ざといからな……と思ったところで、自分も似たようなこと考えたな、と、マルコラさんから少し目を逸らした。
「――そうだ! じゃあ、あたしたちでその人見つけようよ!」
名案! と言わんばかりに、リリリュビさんが顔を明るくして胸のあたりで手を合わせた。
やばい、非常にやばい流れになっている。
「最近、パーティーランクが昇格できたのもマグラルドくんのおかげだし。少しくらい、彼に協力したっておかしくないよね」
しかも絶対に断れないやつだ、これ。わたしたちのパーティーが接近戦に長けた人を探していたのはずっと前のこと。パーティー入りするのを断れなかったように、この流れに反論するのはあまりにも不自然。
「ね、それならまだこのパーティーにいてくれるでしょ?」
「――……そう、だな」
マグラルド様の返事は、妙に歯切れが悪かった。わたしを――かつての、ジュダネラル王国王城聖女を見つけたいというのは、そこまで本気ではなかったのだろうか。それとも、見つけた後は、パーティーを抜けるつもりだったのだろうか?
どちらにしろ、リリリュビさんが本気で人探しをするとなると、すぐにバレる可能性が高い。戦闘力は低いけれど、索敵能力とか情報収集能力とか、異常に高いんだもん、この人……。性別隠してパーティーに入っていたとか知られたら、追い出されるかな。いや、でも、事情を知ってもらえれば……?
とはいえ、騙していたのは事実、マグラルド様がこれだけ探してるのにどうして名乗らないの、とか言われちゃったら、公開告白まで待ったなしなのでは? 未練たらたらで、二年も隣国に留まってました! とか、どんな顔で言えばいいの。
その前に逃げるのも手だけれど、でもマグラルド様がいるのにいなくなるのも、なんだかもったいな――いや、その考えが駄目なんだって。一人で生き抜くと決めたなら、今ここから立ち去るべきでは?
でも……、でも……。
ぐるぐると、いろんな感情が頭をめぐる中で、わたしは自分のカップに口をつける。
「――あ、おい、それオレの酒」
「……あれぇ?」
ザフィールに言われて気が付いたが、遅い。口の中にはすでに酒の苦みが広がっていて、勢いのまま飲み込んでしまった。




