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マグラルド様の表情はあまり変化がない――ように見えて、少しだけ、落ち込んでいるように見えた。でも、誰も言及しなかったので、わたしの気のせいかもしれない。
「一応、合間を見ては、聞き込みをしているのだが……。あいにく、ほとんど情報が手に入らなくてな」
「そうなのか? この辺りなら、女の仕事は大体冒険者か娼婦だと思うけど」
ザフィールの言葉に間違いはない。
それに、ライノートル公国はジュダネラル王国と違い、国土すべてが神与地なので、聖女の需要が異常なまでに低い。万が一のために、城に一人か二人いれば十分なのだ。
だから、今更わたしが聖女として働くのは無理な話。最も、隣国で聖女として働くなんて、マグラルド様への当てつけみたいで嫌だから選択肢としては元々ナシなんだけど。
「無論、そのような店にも行った」
へぇ……行ったんだ……。マグラルド様の言葉に、わたしはちょっとむっとする。立場からして、そういう教育係はいただろうし、女と無縁、ということは無理というのは分かっていても、彼自らがそういうところに行った、という話を聞きたくなかった。
ザフィールは、マグラルド様がそこまで行っているとは思わなかったのか、ちょっと驚いている様子だった。まあ、堅物そうだもんね。
「それで? その聖女の姿絵とかはないのか?」
ザフィールの言葉に、わたしは内心で焦る。マグラルド様が姿絵を描かせているとしたら、それは宮廷画家だとか、そういう本物の腕を持っている人間に依頼したはずだ。もしかしたら、わたしの変装程度ではバレてしまうような素晴らしい絵を描いているのかも……。
マグラルド様は、わたしのそんな焦りも知らず、上着の内ポケットから小さな紙を取り出して、机の上に広げて見せた。
四つ折りになっていた紙をのぞき込むのは、ザフィールだけではない。酒を楽しそうに飲んでいたリリリュビさんと、マルコラさんも一緒に。
なんなら、わたしものぞき込む。
そこには、昔のわたしの顔が描かれていた。非常にそっくりに描かれているが、色が付けられていないので、鮮明ではない。
表情は浮かない顔、というか、いかにも気弱そうに見える。……昔のわたしって、こんな、他人から舐められそうな顔をしてたっけ、と思ってしまい、自分が冒険者的な考えに随分染まっていることに気が付かされた。
「これ――」
「その人! ここにいるって、情報は確かなの?」
ザフィールが口を開くよりも先に、言葉をかぶせるようにわたしは言った。
ディアンに似てね? とか言われたら困るのである。




