17話 どきどきっ♡川崎デート
丸二日。リシュア達が艦内から居なくなってもう二日たった。
ベガに聞いても[定期連絡は受けています。ご心配要りません]しか言わないしさぁ……。寂しいからラナと野菜を収穫しに来ている。
そういえば電脳ネギの解析が終了したそうだ。ベガが色々と難しいことを言っていたが、要はアンドロイドや機械兵器が食べるとパワーアップする不思議食材らしい。
普通の人間でも食べることは可能だが、特に恩恵は無いそう。うちで言うとリシュア達とヴァロちゃんがパワーアップ出来る。ヴァロちゃんに先に食べて貰おうとしたけど、リシュア達を待つと言っていた。心優しい機械恐竜だ。
丁度収穫が終わったタイミングで、リシュア達が帰ってきた。
「おお、おかえりー。
ベガが絡んでるってのは聞いてたけど、どこ行ってたんだ?」
「ご心配をお掛けしました。
実は、主様が経済的に充足した生活が送れるよう、ベガ様と話し合い少々金策をと思いまして……」
そう言うと何やら薄い……通帳?こいつら通帳作ったのか?え?俺の名義?なんで作れてるの?
戸惑いしかないが、渡されてしまったので取り敢えず中を開いて見てみる。
「……………………は???」
◆◆◆
小一時間くらい意識が吹っ飛ぶ金額が入っていた、とだけこちらからは以上ですはい。
ベガを問い詰めても[倫理的、道徳的になにも問題は有りません。日本国の法律にも違反していません]なんて言い出すし。そりゃリシュア達は国民じゃない俺の眷属だから政府のダンジョン厳戒例なんて守らなくて良いかもしれないけどさぁ。
「主様、こちらダンジョンの踏破報酬です。お納めください。」
何やらリシュア達がぶっ潰したらしいダンジョンの成れの果てを渡された。
めっちゃ黄金の林檎だな…神話とかに出てきそう。
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SSSR 太陽の金林檎
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食べられる気はしないな。部屋に飾っとくか、悪趣味だけど。
[マスター、私に適切な運用プランがあるのでこちらの資産の一部を独自に運用してもよろしいでしょうか?]
日本の経済を壊さない範囲でな。正直、俺はこれ以上お金は要らないぞ。
[かしこまりました。結果は追ってご報告します]
「主様、それではまた地上にて主様の御手を煩わす雑務を片付けて参ります。今暫くお待ちを。」
「待て待て待て!
帰ってきたばっかだろ!その雑務ってやつ俺聞いてないし!働きすぎです!」
「そそ、そんな……私達では役不足ということですか?!こんな矮小な機会部品の塊など、主様のお役に立つことすら許してくれないと?!」
「そんなこと言ってねぇよ!!もうちょっと休めって言ってんの!」
その後もすったもんだあったが、結局リシュア達は更にやる気になって地上で何やら作業をしに行ってしまった。
自棄糞になった俺はラナを連れて日本のとあるポイントに降り立った。
お金も入ったしラナの修行も兼ねたラーメンデートだ。
—神奈川県・川崎市
「うわぁ~…人が沢山いますね~」
「これでも東京駅がダンジョン化してるせいで大分少ないんだぞー」
今日のためにユニコロで態々ラナの服を買ってきた。
獣人やエルフへと種族変化を果たした人間が、ここ川崎でもちらほら見えるのが今の日本。
ラナは尻尾や竜耳を隠せる。
とはいえ、ラナの銀髪とモデルみたいな容姿はあまりに目立ちすぎる。せめて無難な服でも着て中和しとけってことだ。
「いいかラナ。今お前が知っているラーメンは、ラーメンの中のほんの一ジャンルにすぎない。今日は羽を伸ばすと同時に思う存分ラーメンの可能性に舌鼓を打てい!!」
「!!はい、マスター!この不肖ラナ、今日という経験を糧によりβ屋を発展させていく所存です!!」
最初からフルスロットル。目立たないために服を買っても言動で目立ってんじゃ世話ねえよバカ。すみません。
えー、ということで、ただ今ここ、川崎の二郎にお邪魔させて頂いております。
「すごい行列ですね~…β屋も負けてられません!!」
変な気合いの入ったラナと待つこと約30分。
麺の量は2人とも「小」を選択。並んで座れるか心配したが、有り難いことに並びの2人席を用意していただいた。
コールは全マシ。俺自身も初めての来店なので先ずは基本型からだ。
着丼!
家系のラーメンしか見たこと無いラナは度肝を抜かれた様だ。
いただきまーす
早速天地返し
ズルズル
ズルズル
…これだよこれ
二郎を二郎足らしめるのがこのぶっとく縮れた麺。川崎の麺は柔から目の「デロ麺」。風味が良くスープに良く絡む。
スープは…非乳化よりの微乳化スープだ。非常にマイルドで旨味が強い。農作業で疲れた身体に染み渡って行くぜ……飲んだ後とかにも食べたくなる味だなあ
隣のラナをちらっと見ると完全にハマったのか、「もっ!もっ!もっ」とか意味の分からない擬音で麺をすすっていた。
良かった艦内に基本2人で。暫くニンニクハラスメントタイムが続いちゃうんだよ。
「もっ!……うまぁ!」
◆◆◆
大満足で店を後にする。
食べ終わったラナがいきなり店主に挑戦状を叩きつけるなど一悶着有ったものの、十分にお腹も心も充たされた。
「いや~お腹いっぱいですね~。ヴァロちゃんにも食べさせたかったな~」
「よし、では次の修行だ!」
「なんと?!もう次の修行ですか?!」
「ああ。次の修行は……戦場で行う!」
「せ、戦場?!」
ラーメンを腹一杯食べた後の修行メニューなど、古より決まっている。もちろんあそこだ。
◆◆◆
「じ、じじ、10、10万……10万…」
「マスター、お気を確かに!ラナが5万円勝ってます!!マイナスは5万円だけです!!」
ぐはぁっ
俺達は次の修行場(駅前のパチンコ店)で、早くもその修行道の過酷さに身を震わしていた。
「……く、くく、くははは!!!
ラナ、お前はまだ修行の入り口にすら立っていないぞ!
この修行はパチンコ台というひたすらに自らの資産を食い付くす暴食の化物に対しどれだけ平常心を保てるか、謂わば心の修練!!軍資金を増やし続けているお前は全然修行出来てない!よって不合格!!」
「えぇー?!ひどいですよ!」
取り敢えずラナから3万円もらって、俺は……過酷な戦場にもう一度、既に傷付きズタボロになった身体とハートを引っ提げ、それでも、暴食の魔物の前に座る。
それでもぉッ!!
◆◆◆
お疲れ20万負け。
今は駅前のコンビニで缶チューハイ片手にラナと反省会中だ。
「パチンコって面白いですね~。ベガさんにも確か、エヴォ?のやつ置いてましたよね~」
「あれはもう垂れ流しのガバガバ状態だから面白くないぞー」
「そうなんですか~?ざんねんです~」
傷ついた心に7%の檸檬チューハイが染みるぜぇ……
「なんかお酒飲んだらお腹空いてきたな」
「あ、分かります~。ラーメン食べたいです」
…ふっ。
至高のラーメンを追いかけてる内に、こいつの魂もどうやらすっかりラーメンの形になってしまったみたいだな。
「ここら辺で良い感じのラーメン屋どこなんだ[規定時間になりました。マスター、ラナ様、失礼いたします]」
——次の瞬間に俺達は見慣れたベガの司令室に戻されていた。
「ろなぁ…ておい!!強制転移はダメって言っただろ!!」
[申し訳ありません。それよりもマスター、本日の残り時間が2分を切りました。至急ガチャを引きましょう]
「え!うそ?!」
マジだ!
ヤバイ今日の分引いてなかったや
俺は急いでガチャを回す。
ガチャガチャ、ガチャ
ピロリピロリピロリロリ~ン!!!
あ!!エヴ○の音!!
コロコロコロコロー
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Result;;
SR 特殊施設:マナ銀行
HR スキルオーブ:錬成 B (Lv.1/10)
C 『バック・ステップ・ザ・フューチャー3』
EX 異世界難民船『ボイジャーVl』(重度損壊状態)
C 元カノの魔力式電動歯ブラシ
C PrayStation5
SSSR スキル:時空間魔導
C 食品Sample:豆腐
R 見てマナブ野球塾-動画教材『失敗しない!盗塁のシカタ』
C さいばーあいどる!!1/300スケールフィギュア-『電脳少女アイ』
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いちゃいちゃ回でした。