16話 日本の御様子
非野田回です。
・東京、千代田区 首相官邸
「アメリカを始めとした欧米諸国では軍隊の主導の下、ステータスを提出した国民の上位2%を積極的にダンジョンに派遣しています。諜報員が調べたところ、ドイツ、アメリカは既に魔力の運用法の初歩的な概論構築に着手しているらしく、近い将来一部の先進国で魔力が電力、火力に変わる新たなエネルギーとなる可能性は非常に高いそうです。」
「ワールド・アップデート」から僅か数日。
政府関係者、大企業の上層部等各国の特権階級達は、新たに地球に適用されたシステムを用いて権力の地盤を固めることに八方手を尽くしていた。
そんな中、日本国総理大臣である山本伸之はこの数日で瓦解の一途を辿る自らの政党を救う起死回生の手を探しあぐねている。
「……要は我々も腹を括って積極策を取るべきだと?」
「ええ。
確かにこの国の国民性を考えるとダンジョンを部分的にでも解放するとなれば、一時的に激しいバッシングに合うでしょう。しかしリターンを考えた場合、そのリスクを取って一刻でも早くダンジョンや魔力といった未知の対象を研究し欧米諸国よりも先に結果を出すべきかと。」
「…そんな簡単な話ではないのだよ。政治というのは」
総理にダンジョン開放を訴えているのは、内閣情報調査室室長。要は日本の諜報のトップに立つ男だ。
「東京駅ダンジョンの問題も有ります。現在、東京駅が機能しなくなったことで都内経済圏にとんでもない損害が出ています。自衛隊の3度の突入も数分も持たず部隊が壊滅状態。ステータスシステムを基盤にした抗戦体制に移行することを強くお勧めします。」
「……ふん、既に防衛省と腐るほど話し合ったわ。黒井室長、その勧告は越権行為に当たらないかねえ?」
「…失礼しました。
ダンジョン内でレベルアップを果たした人間は急速に成長、人体の物理構想を無視し銃弾すらも弾き返すと聞いています。
レベルアップの上限や幅はまだ不明ですが、そんな化物達が諜報活動や軍事活動を行うようになってしまうといよいよこのままの日本では手の出しようが有りません。賢明なご判断をお願いします。」
言いたいことだけ伝えると、室長はさっさと部屋を後にする。
(あの男は政権が交代した所で痛くも痒くもないのだからな…全く、勝手なことを言ってくれる)
現在の日本は、一般人のダンジョンを始めとする特殊構造物への立ち入りを拒否している。
それについては賛否両論……主に若者や一部の好事家は賛成だが、基本的に否定が強い……なのだが、欧米諸国の動きを見るに魔力やダンジョンの持つ資源価値を見誤るとこれからの国際社会の競争に着いていけなくなる可能性が高い。
日本もアメリカに倣ってステータスの提出義務でも設けるか…しかし、自衛隊は現在ダンジョンの捜索、封鎖、管理に使える人材のほぼ全てを割いている。戦闘行為が発生する場合の監督や責任は誰が負うんだ?そもそもの費用もどこから捻出すると言うのか…
何もしなければ、他国との差を嘆き国民から政党の評価は徐々に下がる。積極案を採用しても過度なバッシングが待ち受けている。現在時点で、無理をしてダンジョン攻略を進める必然性は確かに無い。徒に国民を危険に晒したと詰られるのが関の山だ。
いや、室長の言うようにダンジョンから成果を持ち帰ることが出切れば…しかしそれも確実性は低い…
いくら悩んだ所で答えは出ない。
総理は、こんな時代で日本の舵を切らなければならない自分の運命を呪った。
◆◆◆
○福岡、PeyPeyドームダンジョンで市内中学校男子生徒等が負傷
昨日17:30頃、ダンジョン化現象を起こし封鎖されているPeyPeyドーム内に福岡市の男子中学生等数名が侵入しダンション内のモンスターと交戦、胸や腹部等に重傷を負いました。ダンションを管理していた陸上自衛隊福岡駐屯地の隊員たちは交戦する音で気付いたらしく、現在は再発防止に努めているそうです。政府は依然、ダンジョンの封鎖体制を維持し続けるつもりなのでしょうか。決断に注目が集まります。
○刑務所や図書館、農場など一部の施設が特殊構造物化……一体何が?
当局の調査によりますと、現在日本国内の一部建造物が「職業変更」を伴う「従業員登録」が必要な特殊施設と変化しているらしく、現場にいた『鑑定士』の職員によると「従業員登録」を行い職業が変更されると一部のステータスが上昇、または低下、新たなスキルの獲得等が起こるそうです。国内で発見されたダンジョンとの関係性は確認されていないとのことで、一刻も早い原因の究明が望まれます。
○アメリカ政府が個人ステータスの提出を義務化……日本国内でも検討
アメリカ政府が、大統領発案の下個人のステータスの提出を義務化しました。会見においてアメリカのハロルド大統領は「アメリカはダンジョン先進国として、既存の先進国の枠組みから一歩リードする必要がある。アメリカ全体で国際社会を引っ張っていこう」と力強く宣言。アメリカ国内でも賛否は分かれており、次期大統領選にも影響が出るものと考えられています。
日本の国会においても「個人ステータスの提出義務化」は度々論点になっており、賛否を巻き起こしています。東京大学の川瀬教授によると、「今回のアメリカの動きを受け元外務大臣の山本首相なら、アメリカに倣いステータスの義務化を推し進める可能性が有る」とのことです。
◆◆◆
『ワールド1492の皆様にお知らせいたします。只今より緊急アップデートVer.3.95を実施。現行のWorld Operating System を廃止。Shift:Nexasに移行します。』
【七沢李奈様。種族、職業、パラメータ各種が確定いたしました。ステータスの確認をお願いします】
【おめでとうございます!厳正なる抽選の結果、七沢李奈様には初期アイテム:ダンジョンコアが与えられました!!】
最初はただの幻聴だと思っていた。学校にも行かず、一日中部屋に引きこもっていることの罰でも当たったのだろうと。しかし、程なくしてそれは罰でもなんでもない、私にとっての福音であったことに気付く。
幼い頃に両親をなくした。失くしたのか、亡くしたのか今も分からないし知らなくていいと思っている。親戚中をたらい回しにされ、回りの大人は迷惑そうにするか同情するかのどちらか。子供ながらに人の機嫌を伺う能力だけ高くなっていた。少しでも認めて、受け入れて欲しかったから勉強を頑張った。実の子よりも高い点数を私に取られ、あからさまに機嫌を損ねる叔父と叔母。学校ではいけ好かないと言う理由だけでイジメられていた。周りの大人も同級生も誰も信用できない。歯を食い縛って耐えた。高校生になれば、奨学金も貰えるし両親の残したお金とアルバイトで一人暮らしだって出来る。ここからは遠い高校に通って関係もリセットして、普通の子みたいに友達も出来るかもしれない。
無理だった。高校でも、入学早々同級生の女子から目を付けられイジメが始まった。暴力に暴言。嫐られて、ボロ雑巾みたいな扱い。途中でイジメを止めようとしてくれた男の子もいたけど…気付いたらイジメの主犯格の女と付き合っていた。教師にはお前の心が弱いのが悪いと罵倒された。学校のトイレで吐いているときに全部どうでも良くなった。だから、次の日から学校に行くのを止めた。家で一人でいるだけ。何か食べるのも億劫だった。自殺する度胸もないから、このままふわーて消えれば良いなって毎日思うだけ。
そんな日々は、私に与えられたこの新たな力……ステータスとダンジョンコアによって、終わりを告げる。
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Name:七沢李奈
Type:黒森人種
Job:邪精魔導士
Lv.1
HP:800/800
SP:200/200
MP:1600/1600
AGI:234
STR:228
END:361
DEX:809
LUC:11
《Skill》
・邪精融合 (Unique )SS(0/5)
・暗黒精霊魔法 A (Lv.1/10)
・精霊鑑定 A (Lv.1/10)
・魔力強化 B
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・邪精融合 SS
生物を対象にして、邪精霊と強制的に融合させ眷属化する。現在5名まで強制眷属化が可能。
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久しぶりに登校した私は、放課後ニヤニヤしながら私を囲む5人にスキルを発動した。
彼女達の自我は消え去り、目の前にいるのは私に忠実な傀儡だけ。
学校に、いや、社会に復讐する計画を立てた私は魔力と精霊の集まりやすい緑地を見つけ、そこにダンジョンコアを設置して私のダンジョンを作成した。政府や自衛隊、警察は私の様なダンジョンマスターの存在に気付いているのか分からないけど、もうすぐで目標の魔力とDPが貯まる。
この力をくれた存在には感謝してもしきれない。復讐が叶う日は、もうそこまで遠くないだろう。人生でこんなに……こんなに、楽しみなことは初めて。神様、本当にありがとう。
次はラナと野田のいちゃいちゃデート回です




