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僕の姉様

番外編です。

ディオル視点。

ほぼ独白です。

前半は過去の話、後半は本編のディオル視点です。

ディオルの姉様への愛をお楽しみください。


誤字修正しました。(H29.12.26)

幼すぎてよく覚えていないけど、侯爵(あの人)が押しかけてきて、強引に僕を連れ出した日のことを僕は時々思い出す。

先生と呼んでいたあの人に助けを求めたような気もするけどあの人がどんな顔をして僕を見送ったのかも、そもそもあの人の顔がどんなだったかも、もう思い出せない。

それでも僕は思い出す。

だってあの日は僕の世界が変わった大切な日だから。

右も左も分からない僕に手を差し伸べてくれた優しい姉様との大事な思い出。

薄れてしまったその記憶の中でも、ひときわ鮮明に憶えている光景が1つある。

姉様が涙で濡れた瞳を緩く綻ばせて笑うその瞬間が。

その笑顔を見た瞬間、絶望しかなかった僕の世界に一筋の光がさした。

「姉様」という大切で愛しい光が。

この瞬間に僕は姉様に恋をした。



僕の姉様は可愛い。

世界一可愛い。

淡い金茶の髪に、色素の薄い黄緑の瞳は宝石のペリドットのように美しい。

肌も抜けるように白く、目鼻立も整っている。

特にあの大きな少しタレ目の瞳と薄いピンクの唇から目が離せない。

腰まである髪はふわふわしていてずっと触っていたい。

全体的に色素が薄いからか、目を離すと透けて消えてしまうのではないかと不安になる儚さを持っている。

それが怖くてギュッと姉様に抱きつくと「どうしたのですか、ディオル?」と鈴を転がすような綺麗な声で問いかけて、僕の頭を撫でてくれる。

僕を見つめて微笑んでくれる。

その笑顔がすごく可愛くて大好き。

僕の頭を撫でて甘やかしてくれる綺麗な掌が好き。

僕の名前を呼ぶその綺麗な声が好き。

僕を包み込んでくれるその温もりが好き。

僕を見て愛しくて仕方ないという風に溢れる笑顔が大好き。

好き、大好き。

僕の唯一の宝物。

姉様がいたから僕はこの世界で生きている。

姉様がいたから侯爵夫妻(あの人達)に何を言われても、何もかもを嫌いにならずにすんだ。

嫌なことがあっても姉様が慰めてくれる。甘やかしてくれる。

世界にも優しいものがあるんだって思えた。

もしもこの世界に姉様がいなかったら、僕はきっとこの世界の全てを否定して心を閉ざしていたと思う。

そして侯爵(あの人)の道具として、良いように使われるだけの動くお人形になっていたのだと思う。

好きとか嫌いとかそんなものを感じないお人形に…。

だから姉様の存在は僕の奇跡。

僕に『好き』という尊い感情を教えてくれて、育んでくれる姉様は僕の女神様。

好きで大好きで愛しくて…姉様がいなくなったら僕は生きていけない。

その瞬間が訪れたら僕の人としての命は終わる。

だってそうなったら苦しくて辛くて絶望で心が壊れてしまうから。

だから姉様、僕を捨てないでね。

僕は姉様と一緒にずっと生きていたいから。

優しく笑う姉様の側にずっと…。


姉様は屋敷から出られない。

侯爵(あの人)のせいで。

一度姉様に「姉様は外に出られなくて辛くないの?」と聞いたことがある。

「ディオルがこうして一緒にいてくれるので辛くないですよ。」と言って姉様は笑って僕の頭を撫でてくれたけど、その瞳が少し悲しそうだったのを僕は見逃さなかった。

その時僕は決めたんだ。

僕が侯爵になって侯爵(あの人)を追い出して、姉様に外を歩かせてあげるって。

姉様が侯爵になってでも良いのかもしれないけど、そうすると僕は侯爵夫人(あの人)に捨てられるだろうからそれはダメ。

外の世界を姉様と手を繋いで僕が一緒に歩くんだから。

そのために僕は侯爵になってみせる。

周りの人達に下賤な血や偽りの貴族と罵られようが関係ない。

姉様の隣にいられるなら、僕はどんなことでも僕は耐えられる。

僕が耐えられないのはただ1つ。

姉様に拒絶されることだけ。

姉様の手を繋いで寄り添えなくなるのなら、僕はみっともなく泣いて姉様に縋って許しを乞う。

僕の心を動かすのはいつだって姉様の言葉だけ。


姉様は僕が甘えて擦り寄ると嬉しそうに笑う。

その笑顔が可愛くて、僕は実年齢より幼い仕草をよくする。

そうすると姉様は僕の頭を撫でてくれるし、抱きしめてくれる。

この幸せの為なら僕はどんな自分にだってなれる。

姉様が幼い義弟の僕を望むならいくらでも姉様の望むまま。

僕の世界の中心は姉様だ。

姉様に喜んでもらいたい。

姉様に笑っていてほしい。

姉様と一緒にいたい。

なのに姉様は僕にかけがえのない人が現れるから、姉様と僕は一緒にいちゃいけないと言った。

どうしてそんなひどいこと言うの?

僕にとってのかけがえのない人は、姉様なのに。

僕の世界の全ての姉様で、姉様よりもかけがえのない人なんているはずないのに。

義弟としての僕だといつか離れなければならないなら、僕は『義弟』をやめる。

ずっと姉様と一緒にいられる『男』になろうと思った。

姉様がいけないんだよ?

姉様の望む『可愛い義弟のディオル』じゃ僕を捨てようとするから。

だから姉様が望んでいない『貴方を愛する1人の男』にならないといけないんだから。

姉様が僕を異性として見ないようにしてるのは分かってたし、姉様がそれを望むならそのまま2人きりの姉弟でずっと一緒でも良かったのに。

これだけは姉様が悪いんだよ。

本当は貴方だって僕の事が好きなんだから。

だからごめんね、姉様。

僕は貴方にひどいことをする。

貴方の隠したい気持ちを強引に引き出すね。


姉様と距離をとるとすぐに姉様に会いたくなった。

すぐに駆け寄ってその体を抱きしめてしまいたい。

その気持ちを強引に押し込めて、僕は社交界に頻繁に出入りした。

侯爵(あの人)の掃除を手伝ってくれる人の根回しと情報収集のため。

姉弟としての僕達を捨てる為には侯爵夫妻(あの人達)は邪魔でしかない。

もともと侯爵(あの人)は最近、姉様を自分の有益になる貴族へ嫁がせようと考えていたから丁度いい頃合いだった。

でも僕が社交界に出向く度、湧いたように現れる女の人達がウザったくて仕方ない。

香水くさく、みんな同じような顔の彼女達がどうして姉様よりかけがえのない人になるのだろうか。

僕の心に残るのは姉様だけ。

他の人なんて違いが全然分からない。

…あぁ、姉様に逢いたいよ。

侯爵夫妻(あの人達)の掃除がようやく片付いて、もう我慢できなくて姉様に逢いに行った時、姉様が僕を想って泣いてくれていた事が嬉しくて堪らなかった。

姉様の泣き顔を見ると僕も胸がギュッとなって辛くて嫌だったけど、僕と逢えなくて辛くて苦しいと涙を流す姉様は僕の事だけを考えてくれていて可愛くて仕方なかった。

そんな風に泣くのはもう義姉としてじゃないって気づいてよ。

それでも自分の気持ちを認めない姉様に僕は追い討ちをかける。

だんだん赤くなるその顔が可愛くて可愛くて。

最後の仕上げだよ、姉様。

大好きな『姉様』に別れを告げるね。

そしてこれからは『エミュレット』、貴方をずっと愛していくから。

もう貴方の大好きな『義弟(ディオル)』はここにはいない。

貴方を恋い慕う1人の『(ディオル)』を目に焼き付けて。

そうして細い手首にキスをする。

僕を好きだって認めてよ。


僕はエミュレットをエルと呼ぶ。

姉様に代わる特別な愛称で呼びたかったのもあるし、エルは僕にとってその名の通り『エル』だから。

エルは古い言葉で神や光という意味がある。

エルは僕の世界の女神であり、僕の世界に光を灯してくれた。

エルが僕を生かしてくれている。

そんな僕の女神様が「一緒に幸せになって」なんて可愛いことを言ってくるから笑みが溢れる。

好き。

大好き。

…愛してる。

この愛しい気持ちが全部エルに伝われば良いのに。

その想いを込めてエルに愛を囁く。

言葉以上の僕の想いがエルに届くよう願いを込めて。


エル…愛してるよ(ねぇさまだぁいすき)

『ねぇさま』でも『姉様』でも『エル』でも僕には些細な事で。

いつでも僕の世界は貴方なしでは、成立しない。

大好きだよ、僕の姉様(エル)

ディオルのエミュレットへの愛が盲信っぽくなってしまいました…。

文才欲しいです。



蛇足になりますが、ちょっとディオルの設定を書きます。

興味ない方、自分の感じたディオルのイメージをそのままにしたい方はスルーして下さいね。








彼にとっての世界はエミュレットとその他で切り離されています。

なので義父や義母である2人のことはずっと『あの人達』と呼んでいて家族とは思っていません。

彼の家族は姉様であるエミュレットだけです。

エミュレットさえいればいいので、そばに居られれば本当は姉弟だろうが恋人だろうがぶっちゃけディオルは気にしていません。

エミュレットの特別である事が大事なのであって関係性の名称は彼にとっては瑣末なことです。

でもエミュレットがそれでは離れていくと感じたので、彼女の隣にずっといられる権利のある結婚というわかりやすい手段に出たわけです。


文面にも書きましたが姉様だろうがエルだろうがそれがエミュレットを指す言葉であればディオルは何でもいいんです。

ただ最初にエミュレットが『姉様』と言ったのでずっとその呼称で呼んでいただけなので、これがお姉さんでもネネでもディオルはずっとその呼称で呼んでいたことでしょう。(ここ、本当に蛇足だわ)

大事なのはエミュレットに対してずっと好きと言い続けていたディオルはずっとエミュレットを『女の子』として見ていたということです。

どんなに可愛く「ねぇさまだぁいすき」と言っていても家族の好きじゃないです。

もしエミュレットがディオルの魔の手(?)から本気で逃れたかったのなら、この時点でディオルの好意を正しく見抜いて適切に処理していれば何とかなったかもしれません。

幼い初恋をうまく昇華してあげていれば…

でもエミュレット自体もディオルに依存していたので、そんな運命は永遠に来ないのでしょう。

なので、エミュレットがディオルから逃げられることはありません。

逃げたいとも思ってないかな?


簡単ですがディオルはこんな感じで書いてました。

私は一途に初恋を追う青年の溺愛が書きたかったのですが、出来上がったのがヤンデレ予備軍みたいで辛いです…。

でもディオル個人的に気に入ってるので、皆さんも気に入っていただけたら嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] モブじゃない。実は結構ハイスペックじゃないの? 溺愛されて青と黄色の瞳の子ども達が3人ぐらい居るって想像できる未来。イイ。
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