第15話
皆のステータスを一通り確認した後、自分のステータスも、やはり気になって、一応確認してみる。
期待半分、期待を裏切られ、ガッカリしない様に、
「どうせ、俺だけ【レベル】1なんだろうなぁ……」
などと、予防線を張るのも半分。
いや、あの時、虹の光の中で移譲された知識が確かなら、相当良いステータスになっていないと、おかしい……筈。
躊躇いつつも、ステータスをオープンする。
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【名前】ルイ・アリス
【年齢】0歳
【種族】亜$種・人$
【称号】ダンジョンマスター・ランクF(ダンジョンランクA【レベル】2000)
【レベル】100
【スキル】モンスター創造・浮遊魔法・念動魔法・限定転移魔法・意思疎通能力・ダンジョン改変
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今回も、突っ込みどころの多いステータスだ。
ダンジョンランクA【レベル】2000、これはいい。
移譲された知識と同じだ。
魂の融合が、完全に終了した為、俺の一部であるダンジョンの、レベルと、ランクも表示されている。
でも、$って何? 読めないよ……?
あと、ダンジョンマスターとダンジョンの、ランクとレベルは、一緒のはずでしょ?
俺の中では、そういう知識になってるけど?
虹色の玉が、俺に知識を移譲した時、間違ったの?
だって、
【ダンジョンレベルは、ダンジョンマスターのレベルと同等である】
【なぜなら、ダンジョンはダンジョンマスターの一部と解されるからである】
って、言ってたよね?
その後だって、ランクや、領域に関する説明を長々と聞いた時、ランクは同じだって聞いたぞ!
聞いたぞ!
俺は、クレーマーでは、決してない!
だって、本当に、聞いたんだ。
しかも、$ってなんだ?
繰り返すが、読めないぞ!
【種族】亜$種・人$って何なんだ?
ふざけてるの?
責任者呼べ!
いや、呼ばなくていい。
ゴメンナサイ。
神様が責任者で、わがままクレーマーには天誅とか、ノーセンキュウで。
しかし、推測の域を出ないが、俺も、眷属同様に新種族なのだろう。
たぶん、基が人間で、ダンジョンマスターになった者の種族かな?
亜神の魂も入っているし$とは、神様語かな?
まあ、害は無いのだろう。
良いや。気にしない。気にしない。
……でも。
ランクと、レベルの方は?
何故、俺とダンジョンの、ランクやレベルが違うのか?
魂の融合は終わっているのに……。
なぜなら、虹色の玉が光の中で【ただいま魂の融合が終了しました。全ての能力、その他一切あらゆるものは、移譲されました。これより、魂と肉体のシンクロを行います】と言っていたから間違いない。
その言葉の後、急に不思議な力が俺の中に流れ込んで来て、その力が、じんわりと俺の中に広がって行ったのだ。
しかし、考えてみれば、僅かばかり、原因に心当たりがある。
ウツボモンスターのカルーバだ。
あのカルーバのせいで、魂と肉体のシンクロを途中で邪魔されたからだ。
あの時、ものすごい衝撃で、突然眠りからか叩き起こされた様な感覚があった。
魂の融合は完全に完了したが、まだ上手く身体に馴染んでいないのだろう。
恐らく、あの痺れた様な、麻痺の感覚は、その為だろう。
途中で、強引にシンクロを止められて、副作用的にあの様な状態になったのだろう。
それならば、カルーバに毒性が無いことも、得心が行く。
ダンジョンのランクとレベルが正常。
魂の融合は完了して、虹色の玉から、その力はすべて移譲を受けている。
この事実から、本来の俺のランクとレベルは、ダンジョンと同じで、まだ引き出されていない力が、身体の中に眠っていると言う事だろうか。
しかし、それが事実だったとして、どうすれば良いと言うんだ?
医者に相談でもするのか?
「あのぉ、俺のステータス、レベルとランクが、ダンジョンのそれとは違うのですが……」
現実的ではない。
頭がおかしいと思われて、笑われて終われば、僥倖。
下手すりゃ、入院、監禁コース。
さすがに、この世界でそれは無いのかな?
いや、逆に有るのか?
……しかし、困ったものだ。
単純に、俺とダンジョンのレベル差を、数字上から見ても、力の二十分の一ほどしか、解放されていないのだろう。
だからと言って、良い解決策もなし。
……。
しかし、考えてみれば、特に不自由している現状では無いし。
……まあ、良いか。
先送り、決定としよう。そうしよう。
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俺が、ステータスを見て、一人悶々としている間に、眷属たちは、服と装備を身に着け終えていた。
俺が皆の所に近づいて行くと、すぐさま跪く。
おお、似合っているではないか、などと声をかけ様と思ったところでボーンが、
「我が至神たる天帝様。発言をよろしいでしょうか」
と発言の許可を求めてきた。
「許す」
俺は鷹揚に応じるが、この場合、許さなかったら、どうなるのだろう?
もちろん、ボーンが黙って、ハイッ終了。だろうな。
眷属が発言の許可を求める時、意味の無い事など、無いのだろうと思う。
特にこのボーンはそんな感じがする。
であれば、理由も無く発言を止めさせるのは、愚か者のすることだ。
そして俺は、愚か者ではない! ……たぶん。
ボーンは、俺から下賜された物が、いかに価値ある物か。
そして、その様な価値ある物を下賜された、感謝の気持ち。
更に、その価値ある物が、いかに優れているかを、俺に、報告したかった様だ。
その為か、事細かに効用、付属する装飾まで、俺に説明して来る。
最初は俺も興味があったから、「なるほど」「そうか」「ほうっ」などと相槌を打っていたが、あまりにも細かい説明で、だんだんと面倒になってきた。
思わず。
「説明は、適当でよい」
と言いそうになる。
しかしここで、ふと日本で経験した思い出が、頭をよぎって思い止まった。
嫌な思い出だ。
そう、嫌な思いで代表、あのブラック企業。
ある日、重要なプロジェクトだったので仕事に万全を期そうと、俺が、上司に懸案部分の処理方法について最終確認に行くと、
面倒くさそうに、
「それぐらい適当にやれよ! 解るだろ、それくらい!」
「見て解るだろうが! いま忙しいんだよ!」
そう言って俺を追い返した。
忙しい理由は、キャバクラのお姉ちゃんに電話をかける為。
そして、俺に適当にやれと言っておいて、その後、問題が発生すると、
「なに勝手な事やってんだよ! 解んなきゃ相談しろ! クズがっ!」
と言っていた上司を思い出した。
もっともその時も、問題となった部分は、上司の受け持ち部分のミスだったのだが。
報告は、きちんと最後まで聞いてやるべきだろう。
相手に誠実さを求めるのであれば、当然のことだ。
そう思い直して、俺は、ボーンの報告を真面目に聞く事とした。
何が変わる事もなかったが、姿勢の問題なのだろう。
誰かと関わる時の、姿勢の問題。
立場が違えばこうも違うものか。
あの時、ああいう経験をして良かったのかもしれない。
だからこそ、いまの俺があるのだから。
まあ、あの上司に感謝などしないが!
取り敢えず、眷属たるボーンの誠実な姿勢と、その忠誠心を大切にしようと思う。
それは、当然、他の眷属たちに対しても、言えることでは有る。
それにしても、様々なマジックアイテムを装着して、仕立ての良い大きなローブを羽織り、自信の背丈よりも長い杖を持つボーンは、前にも増して、迫力がある。
禍々しい空気が十割り増しだ。
ちなみに、他の皆の装備は、
エルフのロンドは、肩が出ていて、首元で服の前部分を合わせるデザインの、下に行くほどゆったりした白い服。
胸から腰まではピッタリとして、身体のラインが良く解る。
腰の付け根までスリットが入っていて、太ももや白い下着がチラチラ見える。
見てないよ? たまたま、視界に入っただけ……。
ちなみに背中は開いている。
そして、胸の前では、青い宝玉が浮いていて、その宝玉から、胸、二の腕、背中をグルリと一周する、帯状の青白い光が三本浮いている。
その他にも、指輪などのアイテムが多数。
芸術品としても通用する、翡翠色の弓を装備している。
ダブルエルフのシルバが、黒い首輪のような襟と一体型の、ネックビキニで、首元から胸まで編み目になっている。
二の腕と手首には、金の腕輪をつけている。足首にも大きな金の輪がある。
Tバックに近いデザインの、ビキニパンツと透けるほど薄い生地の前垂れ。
前垂れと同じ生地で、前が開いた、大きめの腰巻スカート。
乳房下部とパンツ部分は、華麗な細工の金属で補強がなされている。
太ももまでの黒い網タイツを穿いており、網には魔力を通すと、高い効果があるらしい。
そして、ヒール部分が高い、黒と金のヒールブーツ。
剣身の中心が赤い、自らの身長よりも大きい黒剣を背中に装備している。
まるで、ビキニアーマーの様だな……。
シルバの場合は、エロくない……俺にとっては、ちょっと怖い。
翼人のエルが、白と金の、ファンタジーに出て来るような、大きな神官風帽子と、ゆったりした神官風の服。
服は、たしか、アルバとカズラと言うのだったかな?
先端に大きな宝玉の浮いたスタイリッシュな杖を装備している。
チーター人獣のスピードが、前を開けた臍までのベストに、肘から指先までの手甲。
黒い膝下までブカブカの忍者風ズボンに、不思議な光を放つ金属を張り重ねた、ブーツを履いている。
背中には二本の太刀をクロスさせて装備している。
スピードは何気にカッコイイ枠か?
ドワーフのビアードが、蒼く輝くアックスに、白銀の騎士風、全身甲冑と盾の装備。
一番盾役っぽい。
……一度不採用にした案だけど、どうしようか?
鬼人の鬼丸が、赤と黒の武士風甲冑。
そして、鬼丸の背丈より、長く、先端のヘッド部分が巨大なメイスの装備。
メイスが、昔話に出て来る、鬼の棍棒にかぶるな。
金属製のメイスだから、鬼に金棒が近いかな?
鬼丸は、期待を裏切らないな。
金獅子のレオが、……特に無し。
ちょっと、しょんぼりして見えるのは気のせいか?
いや、気のせいでは無いだろう。
レオと繋がっている意識から、明らかに、しょんぼりが、伝わってくる。
しかし、獅子の装備など、思いつかない。
……可哀想だが、保留にしておこう。
こんな感じだろうか?
細かくはもっと色々あるのだが、見ても良く解らない。
聞いても覚え切れない。
そして、記憶力の限界的に把握しきれない。
……まあ、いいか。