第14話
ボーンが鑑定魔法を持っている事を知った俺は、あれもこれも鑑定させたい気持ちが強くなる。
なんせ、その世界に来てから、右も左も解らなかったのだ。
解っているのは、唯一、虹の玉に教えてもらった、主にダンジョンに関する知識だけ。
しかし、今はボーンとの思わぬ会話で時間を取られたが、最優先事項は別にある。
早急に対処し無くてはと、先程から思っている、服を早く用意しなくてはならない。
いまだに皆、全裸だ。手で隠させている場合では無い。
……ところで、最後に確認のつもりで、ボーンに、カルーバはどんな毒を持っているのか聞いてみた。
すると、ボーンは、カルーバには毒性のものは無いと言っている。
粘液にも、血にも、本体にも、麻痺毒どころか、毒性すらない?
どう言う事だろう?
俺は戦いの最中、確かに麻痺していたのだが?
もしや、ボーンの鑑定魔法はポンコツか?
いや、今は、それよりも服だ。
急ぎ、ダンジョンコアルームから繋がる宝物の間、扉前に立つ。
防御モードが解除されて現れた扉だ。
洗練された彫刻のある、優雅で美しい細工の扉。
いまは、ゆっくり観察している暇は無い。
取り敢えず、扉を開く。
と、そこには、10メートルくらいの距離をとって、また扉がある。
これまた、凄い。
なんせ、扉の片側だけで横20メートル、高さ50メートルはありそうだ。
俺の中にあるダンジョンの配置図によれば、この扉を含めて、三つの扉の後に、縦、横、高さ、約2キロメートルの正六面体の部屋のはずだ。
縦、横、高さ、約2キロメートル!
部屋一つの大きさを表すのに、使う単位がキロメートル!
それが、この天空島ダンジョンにある宝物の間だ。
……俺が勇者だったら、討伐に来ちゃうかも。
……魔王でも侵略しに来ちゃうかな?
宝目当てで……。
大丈夫なのか? 攻められる側の、いまの俺?
しかし、橋といい、階段といい、この扉といい、この城の規模の非常識振りには、まだまだ慣れる事が無い。
まあ、島部分と違い、城部分の中身は亜空間化されているから、更に非常識なわけだが。
……。
……宝物の間の、中は……。
更に、更に、非常識だった……。
一言で、宝物の間を表すのであれば、「とても一言では表せない凄さ」としか言いようが無い。
まさに、……なんだろう?
本当に表す言葉が見つからない。
あれが、2,000,000ポイントを要するダンジョンの宝物の間という事なのだろう。
見たことは無いが、王家の宝物の全てを集めても、足元にも及ぶまい。という感じだ。
金銀財宝は言うに及ばず。
宝物の間の、壁の一部を引っぺがすだけで、一財産だろう。
入口から入ると、其処は、アニメや映画の世界さえも凌駕するの様な、天を突くような巨大な棚。
見上げても、棚の端が見えない。
天井には、宝物の間を太陽の様に照らす、光輝を放つ球体が、万を数える。
そして、棚にはびっしりと、ありとあらゆるものが、陳列されている。
棚の大きさは、本当に、巨大で、一段づつが、俺の背丈よりもある。
しかも、部屋の壁すらも、目も眩む様な宝玉が埋め込まれ、精緻な彫刻がなされている。
棚も、一つの芸術品として、通用する美しさだ。
収納されている宝物も、更に、凄い。
金も、宝石も、果ては、宝箱さえも、価値ある物は、幾らでも置いてあるが、それよりも、俺の常識外の宝が大量にある。
そもそも、10メートルもある剣を誰が振るうんだ? 鬼丸でも無理だろう。
更に、50メートルもある弓を誰が引く? 巨人かな?
どれだけデカイ巨人なんだ?
しかも、それだけ大きな弓なのに、細工は一級品だ。流麗で洗練されていて、優美。
そんな宝がゴロゴロしている。
しかし、あの小指の先ほどの大きさの本は誰が読むのだろう?
小人か? もしや、精霊がいるのか?
……いるだろうな。おそらく。
楽しみだ。優しい、良い精霊と、是非一度、会ってみたいものだ。
取り敢えず、眷属たちが入り口で待っているので、鎧、服、布、剣、メイス、杖、その他目に付くものを片っ端に、マジックバッグに入れて、持って出て来た。
――宝物の間は、後で、用途に分けて、整理しないといけないな。信用できるようなら、鑑定魔法持ちのボーンに任せよう。
などとも、思うが、あの量である。
何年かかるか解らない。何十年かかるかも知れないな。
宝物の間から、様々な物を持ち出したは良いが、マジックアイテムの効用や用途、解らない物も多数だったので
「鑑定魔法があるお前が皆に説明してやれ」
とボーンに命じて、服その他の装備を振り分けた。
取り敢えずは、これで皆この世界での戦闘の準備は出来たわけだ。
カルーバみたいのもいる世界だから、まだ良く解らないことが多いこの世界では、警戒と準備は大切だ。
帯剣していないで、あの事態にあった俺には良く解る。
ついでに、俺の目のやり場も、やっと確保された訳でもある。
やはり、あれは目の毒だ。
落ち着かない。
紳士として。そう、紳士として。
日本で紳士と呼ばれた事は、一度として無いが。
眷属が服を着たり、装備をしている間に、ふと、
――眷属のステータスは、どれくらいなのだろう?
と思っていたら、いきなり眷属のステータスが俺の頭の中に現れた。
っ! 俺が一人で吃驚していると眷属たちが、何事かとこちらを見る。
俺は何でもないと手を横に振り、
「大事無い。己の作業を続けよ」
と、偉そうに指示を出す。
俺のせいなのに……。ゴメンヨ、眷属たち……。
でも、ステータスは念じれば見られるのか。
俺には、鑑定魔法は無いが、他人のステータスが見られるのは、相手が眷属だからかな?
しかし、眷族のステータスを見て驚いた。
全員が【レベル】100だ!
中々強い。いや、かなり強い!
……もしかして、この世界では【レベル】100って普通なのかな?
…………しかしそれでも、【レベル】1の俺よりましだ。良しとしよう!
…………俺のレベル、あの、虹の玉の話では……上がってるはず?
一つ疑問なのは、転生の間における、ポイント的観点からは、金獅子がエルダーリッチ達を超える実力のはずだと思うが、皆レベル100。
おそらく、どの種族だったとしても、レベル100なのだろう。
眷属の卵は、そういうものだったのだろう。
そして種族と言えば、これも驚いた事に、皆の【種族】が思っていたのと違う。
ビアードが、【種族】アリス・ドワーフ。
スピードが、【種族】アリス・人獣。
ロンドが、【種族】アリス・エルフ。
シルバが、【種族】アリス・ダブルエルフ。
ボーンが、【種族】アリス・リッチ。
レオが、【種族】アリス・金獅子。
鬼丸が、【種族】アリス・鬼人。
エルが、【種族】アリス・翼人。
皆、俺の名前アリスと冠した後に、種族的特徴の有るものになっている。
ロンドのエンシェントとか、ボーンやビアードのエルダーが無い。
俺の魂の系譜だから、新種と言うことか? ……たぶんそういうことなんだろう。
しかし、あれだ。
エルが、天使じゃない!
吃驚だ。翼人という種族だったとは。
有翼の人という意味なのだろう。
しかし、種族名は違えど、俺にとって、エルは天使枠だ。
あと、ロンドは、女神様枠。理由はなんとなく、そう言う雰囲気だから。
スピードは獣人でなく、人獣なのか。
まあ、別段、問題があるわけではないが。
鬼丸は、予想を裏切らない、鬼人。
解り易い奴め。
もう良い、お前はそのまま育ってくれ。
それにしても、鬼丸のスキルに、眷属創造というものが有る。
これは、俺のモンスター創造と関係あるのかな?
それとも、鬼人の固有スキルか?
他の皆はまだ【名前】の欄は空白なのに、鬼丸だけは、【名前】鬼丸、と出ている。
もしかして、名付けをすると、他の皆も、俺から新たな力を得るのか?
後で、名前を教える際に確認しよう。




