第12話
跪く眷属たちを眺めながら、どうすべきかと悩む。
服なんて、心当たりが無い。
自分の分すら、確保できたのは偶然だ。
しかし、まずは、服からだろうか?
当然そうだろう。
なんせ、エンシェントエルフ、ダブルエルフ、天使は女性型だ。
鬼とチーター頭、ドワーフは男性型。
エルダーリッチと金獅子はどちらか解らない。
金獅子は鬣があるから、オスかな?
まあ、女性型を、服で早く隠してあげなくては、と思うのが一番だが、男性型も、ブラブラ出されたままでは、話もしづらい。
跪いている女性の眷属にチラチラと目がついつい言ってしまう。
男ならと言うか、当然、と言うか、何と言うか、……。
やはり言い訳だな。
しかし、俺の知るファンタジー世界の、一般的知識では、エルフは胸の小ささを気にすると言うが、眷属のエンシェントエルフは、それほど小さくもない。
形は、お椀型で、大きさもお椀くらい? ……だと思う。
ここからだと良く見えない。
……まあ、これ以上見る気もないが。
紳士のギリギリ最低限のマナーとして。
……ん?
……俺、紳士かな?
紳士じゃなければ見ても……いや! 紳士だ、俺は紳士だ! たぶん!
まあ、眷属全てに言える事だが、胸云々は別にして、当りの眷族だと嬉しい。
皆で生き抜かなくてはならない世界なのだから。
助け合えるなら、その方が良いに決まっている。
それにしても、全裸だから、片膝付いている足の根元がチラチラして、目の毒である。
いや、見えてはいないよ?
と、とにかく、か、顔を見よう。顔を。
うん! 優しげな、澄んだ青い目に、白磁のように白い肌。
耳はやはり尖ってる。
そして、ブロンドの長髪はゆるくウェーブがかかっていて、軽く編みこんでいる。
身長は160センチメートルくらいかな?
ゆるふわ系お姉さんといった雰囲気だ。
眷属たちは、皆、まだ名前がないらしい。
この綺麗で特徴的なブロンドの髪にちなんで、エンシェントエルフの名前は、ロンドにしよう。
一方の、エルフとダークエルフのハーフ、ダブルエルフは、大きな胸をしている。
ロンドよりも、二まわり、いや、三まわりは大きいか?
エルフは事の外、胸の大きさにこだわるとラノベやら何やらで見てきた。
……喧嘩はしないでくれよ? 頼むよ?
眷属といえども、俺が胸の喧嘩に割って入るなんて嫌だよ?
しかし、このダブルエルフ、微妙に股が開いているのは、わざとか?
ギリで、見えてないし。
見ないよ、俺は?
マジで、絶対。
ちょっとだけ?
いやいや、見ないよ。
だって後が怖そうだし。
ダブルエルフは、肌は胸と違い、エルフのほうの特徴が出たのか、シミ一つない綺麗な美白。
エンシェントエルフのロンドの様に、白磁の様な白とまではいかないが、前世の日本だったら、問題なく、「美白ですね」という評価を受けるだろう。
髪の毛はロングストレートの銀髪。つやがありサラサラとしている。
身体はスラリとしていて、引き締まっている。
でも、でる所はでている。
男女両方から嫉妬と羨望を集めそうな、理想系。
切れ長の目に、エメラルドグリーンの瞳が、鋭く光って、獲物を狙う肉食獣のようだ。
背も高くて、170センチメートルくらいはある。
見た目の第一印象は、高飛車系で、仕事が出来そう、性格キツメ年上美人お姉さん。
ホイホイとエロ目線を向けたらどうなる事か。
ダブルエルフも、綺麗なシルバーの髪の色から取って、名前はシルバでいいか。
はやく、服をどうにかしなくては、と思っていたら、天使の少女と目があった。
少女といっても、幼女ではない。少女だ。
見た目年齢、15・6歳くらいか?
頭から足首まである大きな羽で、身体を覆っている。
おおっ賢い。
見えなくて、ほっとする。
……ただ、身体のラインくらいは解るが。
なぜなら、身長はたぶん140センチメートルくらいなのに、胸が大きくて。
大きい。
はみ出しているのは、業界用語で横乳か? ハミ乳か?
更に、業界専門用語で、この子は、ロリ巨乳天使かな?
ロリではないのか?
小さい見た目の巨乳天使。
ともかく、すごいのだ。
のだ。
けっ、けしからんっ!
髪の毛は、ふわふわのきめ細かくて柔らかそうな、肩辺りまであるボブヘアー。
色は、あの時の天使同様、上品で透明感のある栗色の美しい髪。
しかし、少し違うのは、あの天使たちが黒に近い栗色だったが、この天使は、より色素の薄い、光が透き通るような栗色だ。
肌は、白雪の様な白い肌をしている。
小さなピンク色の唇が可愛らしい。
大きな黒い瞳は白い肌と対照的で、不思議な魅力を持っている。
さっきからボーッとしていて、目が合っても何を考えているか解らない。
他の皆があれほど畏まっているのに。
さすが天使は違うな。
名前は、ボブヘアーで、ボーッとしているから、ボボーにしようかとも思ったが、天使のエンジェルを縮めて、エルにしよう。
三人とも、美白美人だ。
男は……裸でもいいのだが、我が眷属だ、いたし方あるまい。
服、服。どうするかな?
ちなみにドワーフは典型的なドワーフだ。
背が低い。天使と同じ140センチメートルくらい。
あご髭がすごい。
声がデカイ。
あと、酒が好きらしい。
まあ、こんなところかな?
名前は、あごの髭を意味する英語ビアード。
ビールも好きそうだし、ビールの、英語の発音ビアにも引っ掛けられるし、ビアードでいいかと思う。
鬼は、鬼だから、名前は鬼丸。
それ以上の意味も、それ以下の意味もない。
しかし、デカイ。3メートルはある。
チーターは陸のスピードキングだから、チーター頭の名前は、スピード。
こちらも鬼丸と比べれば小さいが、大柄だ。
たぶん、2メートルくらいはある。
エルダーリッチは、縮めて、エッチで良いかな?
駄目か。
一応、骨だから、ボーンにするか。
ボーンも身長2メートル以上はありそうだ。
金獅子は、ライオンに由来する名前でレオにしよう。
レオは、大型の象くらいかな? あれよりは、ちょっと小さいか。
後で、皆に教えてやろう。
いや、名付けとかは、褒美としてやったほうが良いのかな?
眷属にとって、名前をもらう価値ってどれくらいなんだ?
それとなく、後で聞いてみるか?
さて、それよりも、服だ。
マジックバッグの中のアイテムでは。……全然足りないな。
そもそも、鬼丸とか、3メートルはある。
合う服が無い。もちろん、鎧も含めて。
そういえば、魂の融合が完了して、ダンジョン内の宝物の間が開放されたはずだ。
あそこに、何か無いだろうか?
城のダンジョンコアルーム以外の部屋は、魂の融合完了までは、防御モードで閉鎖されていた。
あのウツボだって、俺がダンジョンコアルームに入って、扉に向かって閉まれと念じれば、扉が閉まって、あの部屋も防御モードで、入ってこられなかったはずだったのに。
防御モードは魂の融合が完了するまでの、限定機能らしいから、防御モードを続けてお篭りが出来ないのが、微妙に痛い。
しかし、何はともあれ、宝物の間に向かおう。