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僕はヒーロー  作者: 緋色の石碑
第六章 血縁という名の呪縛
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第五話 雷鳴

「わあ、キレイな羽根! コスプレかわいい~っ!!」


「『こすぷれ』って何ですか?」


「え?」


「え?」


――ある妖精の会話

 1度はここ、ハーノタシア図書館に戻ってきたみんなだけど、また分かれて闘うことになってしまった。咲夜がハーノタシア星を去り、魔王と共に《第三の世界》へ向かった。1人で勝てるのだろうか。私は、立ち上がることなく叫んだ。


「私も行く!」


「エア。エアはエミさんを守ってくれるかな」


 私を優しく制止したのは、なつみだった。声は優しいけれど、眼は笑っていない。


なつみが、ぶっきらぼうに右腕を差し出した。私は困惑して見上げる。


「いくらでも《力》を持っていってくれ」


「でも、なつみは――」


 これから、父親と闘うんでしょう?


 「構わないよ、だって――」


父親を睨みつけるなつみ。闇のオーラが彼女を覆う。


「《絶望》なら、いくらでも湧いてくる」


 何も言わず、ゆっくりとなつみの手を握った。全身に力が入っているのだろう、少しこわばっている気がした。私は、祈りながら成長していく。


 なつみ、あなたの本領は《愛情》だよ。


 どうか、届きますように。


 「こんなに大きなエアは、初めて見るよ」


「前にこの変身をした時、なつみは意識を失っていたからな」


「幹部戦のあと? 懐かしいね」


 そうだ。その頃、私たちは奴らの全貌を何も知らないでいた。


 ニュクスの中にいた私は、魔王の正体を知っている。それを伝えるべきかどうか、迷っていた。


 2人なら、なんと言うだろう?


 ニュクスは、伝えろと言うだろう。


 ヘメラは、やめておけと言うような気がする。


厳しさと優しさをもった2人。元は、1人の人間だった。


 もちろん、私も。


 「《力》を分けてくれて、ありがとう。レベル6――いけそうだ」


「いまいくつ?」


「おっと。レディに年齢は禁句だぞ」


「あはは」


 なつみは八重歯を見せ、笑った。そして真剣な顔つきになり、言った。


「行ってくる」


「ああ。――なつみ、この星の事情になつみを巻き込んだのは私だ。すまない」


 魔王の正体、そして草薙が「どちら側」なのか――それを知っていれば、なつみをこの星に連れてくることはなかっただろう。


「何を今更」


 なつみは手を伸ばして私の頭を撫でると、私を抱き寄せた。


 「死なないでね」


「ああ」


 私たちは、数秒間眼を閉じ抱き合った。永遠より長く、尊い気がした。


 「場所を変えるぞ。闇の国の城なんてどうだ?  俺の祖父――お前の曽祖父が世界を統治した場所だ」


 帝王シーボルスは、ダグラの父親だ。なつみ、君の血は混沌にまみれているのかもしれない。


 「どこでもいい、早くやろう」


「大丈夫なのか、なつみ」


 英雄くんが心配そうに声をかけた。なつみは質問を無視し、


「――勝とう」


と言っただけだった。


 「いい返事だ。さあ来い」


 次元の裂け目が開く。草薙が飛び込んでいき、続いてなつみ、英雄くんが飛び込む。


「え、あ、どこ行くんですかぁ~!?」


地球人――エミさんが言った。私は、この子を守ってみせる。


 「貴様なんか相手にしている暇はない――私はハーティアを……っ!」


 この女を、倒して。



**


 「あの人、めちゃくちゃ怖い顔なんですけど……」


「私から離れるな」


「え?」


「はーっ!」


 ディアナが光の剣を携え斬り込んでくる。どこか、美海さんを思い出す。


「はっ!」


 音もなく風が集結し、バリアが出来あがる。奴の剣撃を防ぐ。


「守ってばかりでは勝てないぞ!」


「そうか、なら」


 バリアが分解し、カッター状に鋭くなってディアナを襲う。顔や腕、胴体に命中し、血がしたたり落ちた。


「きゃあ!」


「見たくないなら目をつぶっておけ!」


「あ、あなたたち、一体何をしているんですかあああぁ~!?」


「ふ、こんな程度――」


 ディアナの肉体が黄色い光に包まれ、傷口がふさがっていく。光の超回復――こんなものでは意味がないか。


「どうした? そんな程度か?」


「いや?」


「ならもっと本気で来い!」


 今度は光の気功波――! 再び風のバリアで守る。


「ぐっ――くううっ……」


「フハハハハ! 分かっているぞ、妖精! お前はその地球の女が邪魔で思ったように闘えんのだろう!」


 さすがに、ばれていたか。


「その女が邪魔なら、石にしてやろうか? そうすれば、お前も本気を出せるだろう」


「ひいっ、や、やめてくださいっ!」


 怯えるエミさん。無理もない。通常の人間なら、こんな場面耐えることはできないだろう。


「そういうわけには、いかないんでね」


「教えてやろう、お前のその笑いは恐怖を隠すためのものだ」


「……」


「お前の《力》は他人に依存することでしか発揮できない。バリアを維持するのにも魔法力がいるのだろう? あまり時間を使うと、どんどん幼児化していくぞ」


「ご忠告、感謝するよ」


 悔しいが奴の言う通りだ。かと言って彼女を放置して流れ弾が当たりでもしたら、彼女は簡単に死んでしまう。どうすればいい、どうすれば――!


 「私も早く勝負をつけたいんだ。ハーティアが待っているのでね!」


 現れたのは無数の小さな結晶、鏡――? 中央からレーザー光線が発射される。


「ぐっ――」


 バリアに亀裂が入った。張りなおすか? いや、こんなことをしていても時間稼ぎにもならない! 勝つには、攻めるしかない!


「ごめんなさい神様仏様その他もろもろの偉い人! ――消えた?」


 瞬間移動で、ディアナの目の前に詰め寄る。


「やっとその気に――ぐあっ」


 竜巻逆巻く拳が、ディアナの顎にヒットした。


 「はぁっ!」


 片手をかざした。暗雲が立ち込め、積乱雲がもくもくと高さを増す。雷鳴が轟き、ハーノタシア図書館に雨が降り始めた。


「せっかくの蔵書が台無しだ」


「ハクシキーノさんにはあとで謝っておくよ。それより自分の心配をしたらどうだ?」


「うええ、部屋の中なのに雷がああ!」


 「一瞬だ。余裕こいてると飛ばされるぞ」


読んでいただきありがとうございました。次回も光と風の激闘が続きます!

次回、第六話、「ララバイ」。お楽しみに!

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