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僕はヒーロー  作者: 緋色の石碑
第二章 それぞれの想いが、闘いを新たなステージへと導く
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第八話 解説

校正記録(2018.4.8)

・段落校正

・《》関係校正

・アスタリスク校正

・炎の国の地下研究所→闇の国の地下研究所 (のちの設定と矛盾している)


 《影の封印者》の幹部たちが去った。


 戦場は、痛々しい爪痕を残しながら、静寂に包まれている。


「これからどう――」


お兄ちゃんが口を開いた瞬間、体が光だし、エアと分離した。


「エア、お疲れ様」


声をかけると、エアは力なく笑った。


「ありがとう。咲夜が私を叱ってくれなかったら、お母さんのこと、諦めていたわ」


「いいの。私も、怒りすぎちゃった」


それからエアは、意味ありげにお兄ちゃんに視線を送った。


「どうしたの?」


「い、いや、なんでも‥‥‥」


頬を赤らめるエア。まさか‥‥‥。


 歴史は、繰り返す。


おじいさんにもお兄ちゃんにも恋をするなんて、この浮気者め。


「エア」


お兄ちゃんがエアに声をかけた。


「ひゃ、ひゃいっ!」


「よく頑張ったな。ニュクスの対戦相手は俺だ。必ず俺が取り戻してやる」


お兄ちゃんの決意に満ちた表情。両手から、炎が燃え盛っている。


 《情熱》。


こういう時のお兄ちゃんは決して私達を裏切らないのを、私は知っている。


「そうだね、お兄ちゃん!」


「とにかく、ここを動こう。母さんはどこに行ったんだ?」


そうだ。いつまでも感傷に浸っている場合じゃない。私たちに、次の脅威が迫る。


「おそらく、佐久間の研究所だろう。ラギンと銀太もそこにいるはずだ」


と、ダグラさんが言った。


「親父か‥‥‥避けては通れないな」


「一度、話し合ってみたら? 案外うまく行くかもよ。家族だもの」


「どうだか」


お兄ちゃんは、不服そうに鼻を鳴らした。


そういえば、ヘメラはどこに行ったのだろう。パパと一緒にいるといいけれど。



**


 強い北風が吹いた。私は、エアのことを思い出していた。


 強く、苦しい《絶望》の匂いがする。私は本来、「彼女」と同じ存在だったのだということすら、忘れそうになってしまう。


「何をしに来た」


 「彼女」は言った。目つきは鋭く、私のことを邪険に扱っているのがわかる。


「『いない』、と思われるのもしゃくだもの」


「思ってなどいないさ」


 彼女は笑う。


「へメラのことはずっと覚えている。忘れられるはずがない」


「私が、、あなたの《影》だから?」


「ああ、ずっと一緒だった。私が《悪魔》に憑かれる前から」


「あなたに、挨拶しに来たのよ、大好き、って」


「やめろ」


ニュクスは笑った。でも不思議と嫌な感じはしていないようだ。


「《影の封印者》の目的は、文字通り《影》の封印だ。ヘメラ‥‥‥消されるぞ」


ニュクスの眼には、同情の色も慈愛の色もなかった。


ただ単にそこには、敢然たる事実があった。


「あなたって、敵なのか味方なのかわからないわ」


「私は、ヘメラ‥‥‥。お前より、ネクローを選びたい。もうあいつを、一人にしてやってはダメなんだ。だが結局のところ、私はヘメラ側でもネクロー側でもない。ただの孤独な《悪魔》だ」


「あなたって、悲観的ね」


北風が吹き付ける。体が凍える。


「でもあなたのその弱いとこ、大好きよ」


「お前の心の強さにはかなわないよ よ。だがお前は――弱い」


ニュクスが私の眼前に手をかざした。彼女の右手に、暗黒の渦が渦巻く。


「これを撃つだけでも、お前は死んでしまうひ弱な存在だ。なのになぜ、お前は私に構う?」


ニュクスは昔からこういうところがあるのだ。わかりきった答えの前で、頓挫する。私は不器用な彼女が大好きだった。支えてあげたいと思い続けていた。私の想いは、あの日から変わりはしない。


「決まっているじゃない。あなたは、私だからよ」


私達の間を取り持つように、一瞬だけ、優しい風が吹いた。


**


 闇の国から出るために、私たちは残りの力を振り絞ってDTした。


「よっ!」


 みんなで手をつなぎ輪になったまま移動したから、着地は下手くそだった。


「ごめん、私がうまく握れなかったから‥‥‥」


 新垣先輩が申し訳なさそうに言った。


「ううん、そんなことないよ!」


 今回の戦闘で最も傷ついたのは新垣先輩だ。1人で歩くことはできず、ダグラさんにおぶさっている。


「はやく、休息させてあげないと」


 正直、新垣先輩の身を案じている余裕もあまりなかった。私たちはみんな、自分自身の肉体や精神の傷をかばうのに必死だった。


 もちろん、お兄ちゃんも。


私たちが本部としている闇の国の地下研究所で最初に出会ったのは、ヘメラだった。


「やっぱりこっちに来てたのね、ヘメラ」


「うん、ニュクスが攻めて来た時、私は逃げていたの。ごめんなさい、力になれなくて‥‥‥」


「いいよ、気にしないで」


私の後ろをついて歩いていたお兄ちゃんが、静かに言った。


「ニュクスに、会いに行ったのか?」


数秒、沈黙が流れた。


「どうして?」


へメラの優しい口調に、お兄ちゃんも優しく答える。


「無理しないでいい」


「あなたって、優しいのね。おじいさんそっくりだわ」


お兄ちゃんは答えなかった。


研究所の奥に進むと、そこにはパパとママ、ラギンと銀太がいた。


「‥‥‥」


 白縁のメガネをかけ、眉間にシワを寄せる男。この無愛想な男が、私たちのパパ、神寺宮佐久間だ。


 パパはいつも難しい顔をしていて、笑っているところを見たことがない。ママはパパのどこを好きになったのだろうか。どちらにせよ、冷徹がよく似合う氷の能力者だ。


「‥‥‥ただいま」


 お兄ちゃんとパパは、3年ぶりの顔合わせになるはずだ。そもそもお兄ちゃんがこっちに来たのは、家族の消息を知るためだったから、当初の目的は達成したことになる。


 でも、パパの言葉はあまりに辛辣だった。


「エアと合体しておきながら、ニュクスの洗脳も解けず、倒したわけでもない。まったく、お前は何のためにここに来たんだ?」


「あの‥‥‥!」


新垣先輩が何かを言おうとした。でも、お兄ちゃんが制する。


「いいんだ、なつみ。事実だ」


「やあやあ、お疲れさん! まあ死人が出てないだけマシさ、佐久間」


パパのテンションとは打って変わって、ママは陽気な様子で言った。


「今、ラギンと銀太に融合についてレクチャーしてたとこさ。あんたらも理解してないだろ? 解説してあげるよ」


「融合‥‥‥エアとのあれはどんな仕組みなんだ」


お兄ちゃんが尋ねると、パパが厳かに口を開いた。


「融合は、高位の能力者2人が溶け合わさることによって爆発的な能力を発揮するものだ」


「その方法は単純で、一方の能力者がもう一方の能力者にほとんどすべての力を与えることによってなされる。融合後の姿は、力を与えられたほうがベースになることが多い」


「今の佐久間の説明だと、融合というより吸収に近いけれど、能力的には2者のものや、それを融合させた技が使えるよ」


「俺とエアのヴォルカニック・テンペストみたいにか」


「融合には大きく分けて3種類がある。一つは『同属融合』。同じ属性の能力者が融合するものだ。融合による付加属性がないため、そこまで爆発的には強くはならないが、融合が解けるまでの時間が長い」


「二つ目は『異属融合』。これは異なる属性の者同士が融合するものだ。爆発的に強くなり、技のバリエーションも増えるが、かなりの感情の高ぶりが必要だ」


「感情の高ぶりってどういうこと?」


「この世界の魔法力は《感情》だ。異属融合による急激な能力変化についていくためには、魔法力、つまり《感情》を高める必要がある」


なんだか、エアがもじもじしている。


「最後は、『時空融合』だ。異なる時間や空間にいるものと融合する。しかし、そもそも異なる時空から能力者を連れてくること自体、現段階では不可能だ。」


「じゃあ、時空融合はできないんですか?」


新垣先輩が訊いた。


「ああ、だがその《力》は計測不能なほどという予測が付いている」 


計測不能なわりに予測はつくんだ‥‥‥。私、パパのことがよくわからないわ。


「‥‥‥とにかく、明日からは幹部戦だ。今日一日ゆっくりと体を休めて、明日に備えろ。特に咲夜」


「はいっ!」


明日はアイス・プリンセスとの対決。一番手だし、負けられない!


「おいちょっと待て。なんで父さんが幹部戦のことを知ってるんだ」


「DTを応用して、ここから全て見ていた」


「ええーっ!?」


突然、エアが叫びだした。


「ど、どうしたの?」


「い、いやなんでも‥‥‥」


変なの。見られてまずいことなんて、ないだろうに。


「人数分の回復装置を用意した。この装置の中でみな、眠るといい」


 そうだ。変なことを気にしている場合じゃない。明日から、負けられない闘いが、続く。

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