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32話 ファン心理

ご覧頂ありがとうございます。


4/13 脱字を修正致しました。

 静雄が帰った事でそのまま解散となったのだが、校門までは一緒と言う事になり今は玄関へ移動中で、今現在途中の廊下では彼方此方から視線が飛んでくる。


 普段からも少しは見られたりはしていたが(大抵俺が騒いでるせいらしい)、今回はほぼ確実に原因は星ノ宮にあると思う、いつもと違い絡みつくような視線が多くしかも男子……だけでは無く、女子からの視線までもがそうなのだ。

 二年の生徒には今回の騒ぎのせいもあっての事だろう。

 他の学年はまだそれほど知られてはいない筈なのに、ここまで見られるなんて人の噂は凄まじいな。

 ……視線が痛いってこういう事を言うのかと、改めて実感する。

 そう思って宇隆さんに何時もこんな風なのか、俺は確認しようと話しかけた。


「なんか、屋上にはそんなに人居なかったから気が付かなかったけど、いつもこんな感じで見られるもんなのか? 星ノ宮が他人の視線に対して気にしてない訳が分かった気がするわ」


「いや、流石に私も気が付いてるぞ。普段は男子の視線が集まっていたりするが、今のこちらを振り返った者の視線は、星ノ宮では無くお前に向いていたと思うぞ? 隠れて見ているつもりだろうが、星ノ宮様や私の顔や胸に視線が行った後、かなりジロジロとお前を見ているからな」


「うへぇ、こんな所で要らん嫉妬かよ。単に星ノ宮と歩くだけでこうも見られると言うか、睨まれるとは流石他校にもファンが着く訳だ」


「他校にファンだと……そうなのか? まあ何時もならこうして、星ノ宮様が行事以外で男子生徒と歩くなんてことは、特定の人間だけしか居なかったからな。普段とは変わった毛色の男が居るので、物珍しく感じるだけだろう」


「いや、変わった毛色って俺は動物園のパンダやコアラ並の見世物かよ……」


 何だかな~と思いながら視線を周りに向けると、先程よりも何やら視線に力がと言うか、刺さると表現できそうな気がするので、落ち着かなく秋山に話があると言って会話を終わらせた。

 星ノ宮と宇隆さんから離れ後ろに下がり、黒川と話していた秋山の横に並ぶ。


「ちょっと良いか? 前と一緒に歩いていると視線が痛くて……野郎の嫉妬は何となく分からないでもないが、女子からも妙に厳しいと言うか睨まれるのが理解できなくて、逃げてきたからこっちに混ぜてくれ」


「ぷっはは、おっかし~い。石田が視線を感じて逃げてくるなんてね。あんたさ星ノ宮さんだけじゃなくて、宇隆さんは女子にも人気があるの知らなかったの? あの中性的な顔立ちとスラリとした背、それに偶に見せる笑みが凛々しくて格好良いって評判なのよ」


「そう、それに女子だけじゃ無く男子にもそう思ってる人が居る。体育の時間でも二人が活躍していると歓声が飛んでいる……たまに館川もそれを見て睨んでいた」


 そう言って黒川は自分の胸を見下ろす、いや別にお前は普通に在ると思うぞ? そんなに気にする事では無いと……あ、いや秋山まで俺を睨むのは止めて。

 宇隆さんが女子にも人気とは、いや、体育の時間男子が歓声を上げていたのは、主にあの二人が揃ってある部分を揺らしていたから間違いない。

 何故分かるかって? その時はきっと俺も静雄も見ていただろうしな。

 しかし、まさか女子からまで嫉妬紛いの視線を貰うとは思わなかった、恐るべし主従だ。


「あ~理由は分かったけど、納得行かねー。単に横に歩いて話しただけなのに要らん妬みなんて買いたくないわ! つかそんなに気になるなら、手前で話しかけてくりゃ良いと思うのは気のせいか?」


「やっぱりあんたは馬鹿ね。皆遠慮したり、あらかじめ無理に話しかけないようにしているんじゃない。皆が皆一斉に群がったら迷惑以外の何者でもないでしょ? それに非公式なファンの間では抜け駆けには“社会的制裁”を食らわせるとか、あんたも大変ね?」


「えっ? それって俺も関係してくるの? 星ノ宮のファンに何てなった覚え無いんだけど? しかも社会的制裁ってなにそれコワイ!?」


「私も詳しくは知らないけど、あれじゃない? ペンは剣よりも強しって感じかな、力は無いけど知恵は回るって奴?」


「あ~、お前と違って手は出さないけど口はって、危ねーよ! そうやって直ぐ拳が出るから言うんじゃねーか! ちょっとは黒川をみな……いや、お前に絞め技まで覚えられたら俺が死ぬ」


 今の拳は反応できたから良かったが、秋山は相変わらず良いパンチを持っているな、これに絞め技まで会得されれば王座は奴の物って、違うか。

 最も俺にそれを向けなければもっと良いんだが、こいつは頭で考えるよりも先に体が反応している、所謂条件反射に違いないから言っても無理だろうな。

 そう考えながら校門が見えてくると、昨日喫茶店で見た車が門の前に止まっていた。


「お、どうやらお迎えも来ているみたいだし、星ノ宮達はここでお別れか。またな~」


「少し宜しくて? 貴方は何で微妙に嬉しそうなの? そんなに私達と居るのが嫌なのかしら? どう思う宇隆?」


「はっ。星ノ宮様、きっと石田の奴はあなた様と居るのが照れくさいのでしょう。男子と言うのは憧れの女性と居ると、落ち着かなくソワソワするそうですから」


「ふ~ん? そうなんだ、じゃあ今日は部活も中止になって予定も特にないし、迎は待たせておいて少し歩こうかしら。その方が宇隆の言う普通の殿方は喜ぶはずよね。どうかしら石田君?」


 星ノ宮はニヤニヤ嫌らしい笑顔でそう言って、宇隆さんに振り聞きながら後ろを歩いていた俺達に視線を送る。

 何故最後に俺に振るんだよ、横に居た秋山と黒川までこっちを見るし、折角家の人(?)が迎えに来てるんだから大人しく帰ればいいのに……なんて言ったら周りから凄い殺気が飛んできそうだ。

 そうして星ノ宮に対して返答に困っていると、更に後ろから声が掛かる。


「あら、正門前で何か騒がしいと思ったら……星ノ宮さんではないかしら? 貴女が居ると他の生徒の下校や運動部の邪魔になってよ。直ぐに脇に避けるなり帰るなりされたらどう?」


「怜奈そう言うな、星ノ宮さんを責める前に先ずはそこの宇隆に言うべきだろう? 仕える者は、周りにも気を配り主に恥を掻かせるべきでは無い筈だ。それに噂で父にも聞いたが、何か部活動で色々あったそうじゃないか。随分と災難でしたね」


 突然そう言って現れたのは、同じ学年を示す色のリボンを付けた小柄な女生徒と、上級生である三年の色のネクタイをした男子生徒で、星ノ宮に向かって輝くような笑みを向けている。

 二人揃って俺らの後ろに立っていたが、相手は俺達を見ていなく前を歩いていた星ノ宮達のみを見ている。

 対して星ノ宮は笑みのままそれを無視し、宇隆さんは顔を顰めて嫌そうな素振りをしていた。


「それで石田君、貴方はどう思うのかしら? まだ答えを聞いていないのだけど。それともやっぱり恥ずかしくてソワソワしちゃう? ちょっと虫が寄って来る季節だけど、それは無視して良いから移動して話しましょ」


「あ、ああ。虫ねぇ……随分とでっかい虫のようだけど俺虫って苦手なんだわ、何て言う虫なんだ? ゴキブリとか勘弁な?」


 袖を引っ張られ意識をそちらに向けると、黒川が口パクで“あ・ん・あ・い”と言う。

 アンアイ? おさーるさーんだよー? ……お猿か? 俺も口パクで“あんあい”と首を傾げると頷くので間違いないだろう、しかし変わった名前もあるもんだ道理で知らんわけだ。

 俺が口パクで黒川とコンタクトしている間に、宇隆さんが迎えに来ていた車の運転席まで移動して何やら話している。


「……随分と失礼な下級生だな。おい、貴様こっちを向け! 何がゴキブリなんだ? 言って貰おうじゃないか」


「お兄様落ち着いて、この男確か二年C組の安永さんの腰巾着ですわ。今日は一緒じゃないようだけど、いつも二人揃って行動しているから私でも知ってます」


「ほう、どうやら彼の背中に隠れる虎の威を借りる狐と言う訳か。それで星ノ宮さんに近づいて如何するつもりなのか、聞きたいところだな」


 何かごちゃごちゃと煩いな、お兄様って兄妹かこの二人……あんまり似てないけど、初対面で失礼な奴らだ。


つづく

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