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17話 所有権って大事だね

ご覧頂ありがとうございます。

 俺は秋山の話にでた、『館川のカメラ』と『別の誰かの物』と言う台詞で閃き、隠しカメラの『所有者名』を確認してみると、結果は大当たりで『学校』と表記されていた。

 そう、更衣室に隠されていたカメラは、所有者名が『変更』されていたのだ。

 俺は部屋の履歴の確認に注視し、隠しカメラを探し出す事に焦るあまり、この事をすっかり流して見落としていた。


 何故このカメラの所有者名が館川から『変更』されたのか、それはこの更衣室やロッカーは当然学校の所有物だが、そこに『組み込まれた』せいでカメラも学校の一部になっていたのだ。

 本来なら所有者は館川になる筈だが、ここに矛盾が生じる。


 ロッカーは元々学校の所有物で、カメラを元の所有者から離し、そこに『固定』してしまった所から、理屈で言えば正式な『譲渡』では無い筈。

 だが、“そのせいで”に学校の所有物に“変わり”このカメラは、特定の所有者の居ない(厳密には違うが)学校の物『公共物』成ってしまったのだ。

 ……まあ、こんな区分を誰かに説明しても、窓を可視化できないと証明も、ましてやそのトレードの能力が分からないと、正直言って無理な訳だが。


 どちらにせよ、そこに通う児童生徒が使う分には全く問題ない為、俺は“盗むわけでも壊す訳でも無い”ので、中に入っているmicroSDカードをトレード枠に入れて、それを一時的に“借りる”事にした。 

 俺は手の平に乗る三つの小さなそれを、確りポケットに収めるとニンマリとして、秋山を呼びこう叫んだ。


「よし、誰か来る前にここから出るぞ。俺達の任務は無事完了した!」


「ええ? ちょっとカメラは? まだ見つかってないじゃない! 一人で勝手に納得しないで私にも分かるよ……ちょっと話聞きなさいよ! 私を置いて行くなー!」


 困惑気味の秋山と俺の二人は、こうして五限の終了の合図を待たずに任務を遂行し、更衣室を後に教室へ急いだ――





 今教室に残っているのは、端に寄って数人で話している奴や、帰り支度の最中だったり、その人口密度は授業中と違い、当然だがスッカスカだ。

 皆放課後も忙しく部活動や塾に習い事、それに遊びと恋愛か? 普通の生徒は普通にその生活を謳歌している。

 そんな中俺と静雄に秋山の三人は、静か(?)に頭を寄せ合って話をしていた。


「ふむ、それで秋山は地図を放置して明人の手伝いをしていた。そう言う訳だな」


「うん、そうなんだけど。石田があの時間に廊下を走っていたから妙だと思って、遅れるなら堂々と歩くような男が走ってるのよ? 絶対怪しいでしょ。それにちょっとだけアレは悪い事したかもって考えたら、手伝おうと、ね」


 そう言って秋山は俺の方をちょんと指さし、笑いを堪えている。

 静雄も「うむ」とか言ってないで、その小悪魔にもっと言ってやりなさい!

 まあ、その理由は簡単、俺の顔は今盛大に青痣と赤く腫れた頬が斑になり、パッと見でも異常な色模様になっていた。……通りで涙が出る位痛かったわけだ。

 この借りは何時か払ってもらうぜ、こんちくしょう!


 それはさて置き教室に戻ってみると、まだ授業がギリギリ終わって無く、地図の無い先生は態々黒板に簡易的な地図を書いて説明、足りないものを補って生徒に教えを説いていたらしい。

 正に教師の鏡のようだが、荷物運びでは抜け目ない老獪なお人だ。

 頑張って重い機械を運んだ佐々木君には、後で謝っておくんだぞ~秋山。

 

「フフ、その顔を見れば先生も折れるしかあるまい。『地図を運ぶ事も大切だが、それよりも同じクラスメイトを案じ、助けになろうとした秋山君は偉いな』と、言われていた時の明人の顔は見ものだったぞ」


「俺はあの時、『怪我の原因はコイツです!』と叫ばなかった自制心を褒めて貰いたかったよ。本当いまは鈍痛で済んでるけど、あの地図の程よい硬さと重さは、恐ろしい凶器だったぜ」


「単にぶつかっただけで、そんなになる訳無いじゃない。あんたは自分の走る加速度を加味されての事を、都合よく忘れないでよね。全部私が悪いように言うのは止めて欲しいわ」


「フフ、そのおかげで軽いお小言で済んだわけだ、秋山『怪我の功名』とはこの場合に使うのに問題はないか?」


「好結果とは微妙だけど、その怪我も偶然だし良いと思うわ。けど安永君、この程度で功名とは言い難いかしらね? 石田の場合もっと軽くで良いのよ『結果オ~ライ♪』って風にね」


「ふむ、秋山には拘りが在るのだな。明人良かったな、結果オーライだそうだぞ」


「いや、お前らもう良い……それよりも俺は昼休みに話した通り、銀行かATMに寄って買い物行くけど、お前らはどうする?」


「え? カメラはどうするの? まだ取ってきて無いでしょ? さっきのあんたの様子だと、もうカメラは見つけていたみたいだし。……もしかしてもう壊した?」


「いや、壊したらちょっと不味いんだわ。まあ聞け……」


 俺は更衣室でカメラを見つけ、中からmicroSDカードを取り出し、今自分が確保していると答え、ポケットからそれを出して見せながら説明する。

 俺達が先にカメラを見付けて取り出してしまえば、証拠としての信憑性が薄れるし不十分と判断されかねない、あくまでもカメラを見つけるのは、館川の証言か星ノ宮達の話を聞いて『警察』が、カメラを押収する事に意味がある訳だ。

 だからカードだけを取り出し、『問題のない中身』とすり替えておく必要があると、目の前で指折り話す。


「ええ!? それじゃ早くやりなさいよ! 今日警察の人が着ちゃったら、空っぽのカメラだけだと絶対怪しいじゃない!」


「まて、そうなるともう一度更衣室に潜るのか? それにもう部活動が始まっているのだ、そんな余裕はないだろう。お前が落ち着いている所を見るに、明人よ勝算はあるのだな?」


 秋山は俺の話を聞くなり立ち上がるが、静雄は腕を組みどっしりと構えている。

 流石は静雄、名は体を表すを地で行く漢! まあ秋山が焦り過ぎな訳なんだが……、俺は静雄の質問に頷きながら、自分の考えを二人に話していく。


「ああ、たぶんだが館川は全てを正直に話すとは思えない。逆恨みでしかないが、あいつはクラスの女子を始め、黒川を裏切り者と思い込むくらいキレてる」


「なるほど、確かに話すとは思えんな。だが警察や先生方はどうだ? 被害を受けた女子生徒の話があれば調べないか?」


「そこで家宅捜査まで行くものなのか俺にも分からないが、取りあえず奴の身の回りの持ち物は調べられる筈。だが、隠しカメラに関しては、星ノ宮たち三人や女生徒の証言だけで、見つかった証拠は丁度持っていたカメラのみ。さらっと更衣室を見る事は先生方がしても、警察はまず確実な物から行って、次にそこから捜査の手が伸びると思うから、数日は時間が開く筈だ。その間に俺達は行動する事ができる」


「ふ~ん、そんなもんなのかしらね? 私なら怪しいと思ったらバーッと行っちゃうわ。それで逃げられたらお終いじゃない」


「そこはそれ、静雄みたいに勘で行動したり、秋山みたいな鉄砲玉のような人も居るかもしれないが、警察なら確りと裏をとったり確かな物から調べて、証拠をそろえて行くのが常套だと俺は思う。まあ初動が遅いが、確実性を重視していると言う事だな」


 秋山は俺の言う鉄砲玉の(くだり)から、口を尖らし不満そうな顔をして、その説明に『私は不服です』的態度だが、後半に関しては納得はしているようで、口を挟んだりはしなかった。

 確かに絶対は無いが、俺にはトレードを使えば多少離れていても、対象の位置も分かっているし、microSDカードを“渡す事”で“返す事”も出来る余裕があるからだ。

 静雄にしても俺を正面から見つめ、腕を組んだまま頷き以外微動だにしない。

 俺としてはこれ以上は考えはしても、対処の仕様が無い事なので、焦っても時間の無駄になると判断した。

 

「まどろっこしいわね、けど『急いては事をし損ずる』って事かしら。カメラを先に見付けたのはあんただし、まあさっきの案が泥船でない事を祈るわ」


「そこまで考えているなら、後は行動あるのみだな。俺も明人に最後まで付き合おう」


 三人はこうして、昨日に続いて再び商店街へと繰り出した。


つづく





5行超短編オマケ


明人「見てくれよ、こんな話数使っているけど、まだ三日も経っていないんだぜ」

秋山「石田……あんたは話がくどいのよ! 安永君を見習いなさい?」

静雄「フッ」

明人「フッしか言ってねーし、分かるかー!」

秋山&静雄「「フッ」」

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